消費者がとる行動には一つひとつ要因があり、これを理解できれば、戦略的にアプローチをかけられます。そこで覚えておきたいのが、ビジネスと密接に関係している心理学の法則です。
よく目にするCMやWeb広告は、心理学的な原則に基づいて構成されています。心理学に基づき適切なアプローチをかけられれば、顧客との良好な関係構築や購買意欲の向上を目指せるでしょう。
そこで本記事では、マーケティング活動をベースにビジネスシーンでも使える心理学をご紹介します。広告やホームページからの問い合わせが少ない、商品がよいのに消費者に魅力が伝わらないなど、悩みを抱えるマーケティング担当者は必見の内容です。
心理学の法則が企業のマーケティングで重要な理由とは
マーケティングとは、顧客に合う商品やサービスの価値を適切なターゲットに向け発信し、売れる仕組みを作る一連の流れです。「買ってください!」とプッシュをかけるセールスとは、分類が異なります。
マーケティングの際には心理学テクニックを役立てると、より確実に顧客を獲得できます。これは相手のニーズや行動の背景を汲み取るには、心理学が効果的だからです。
心理学の法則を活用する重要な理由は3つあります。
- 消費者へ効果的にアプローチできる
- 売上や利益の向上を狙える
- 消費者に会社の価値を提供できる
心理学をマーケティングで活用し、業績アップを目指していきましょう。
心理学の法則①|マーケティングで使える手法編
マーケティングにおける心理学では、消費者が商品やサービスを選択する際に関わる要素を分析するのが大切です。
マーケティングで使える心理学の法則は、主に4つあります。
- カリギュラ効果
- バーナム効果
- スノップ効果
- バンドワゴン効果
各効果をこれから解説するので、心理学マーケティングを学びたい方は必見です。
カリギュラ効果
禁止されているものに対してかえって欲求が高まることを、カリギュラ効果と呼びます。鶴の恩返しは、カリギュラ効果のわかりやすい一例です。「見るな」と禁止されたがために気になって扉を開けてしまうストーリーは、カリギュラ効果による心理変動と言えるでしょう。
マーケティングにカリギュラ効果をうまく活用できるシチュエーションは、以下の2つです。
広告のキャッチコピー | 〇〇な人は見ないでください(禁止)と銘打ち、ダイエット商材などに誘導する |
会員限定のサービス | 一部のみ公開し「続きが読みたい人は会員登録」などの文面で誘導する |
「~したくないなら見ないでください」などの逆張りや、続きを見たいならここへといった誘導が、マーケティングでは効果を発揮します。
バーナム効果
誰にでも当てはまるような内容を自分のことだと思ってしまうのは、バーナム効果によるものです。占いなどで誰にでもある悩みを提示されたとき、あたかも自分の悩みをピンポイントで言い当てられたかのように感じ、相手に親近感や好感をもつことなどが、バーナム効果の一例として挙げられます。
バーナム効果をマーケティングで活用すると消費者から信頼を得られ、納得した上での購入・成約につながります。
また、キャッチフレーズを作るときの主語は「皆さま」などの複数人数を指す言葉を避け、「あなた」にすることがポイントです。加えて、発信者に権威性があれば、効果はさらに増します。
スノップ効果
希少性が高いものや限定ものが欲しくなる欲求を、スノップ効果と呼びます。ほかの人と自分を差別化したい、特別な存在になりたいという心理をマーケティングで活用した例には以下のものがあります。
- 地域や期間などの限定商品やサービスを作る
- 個数を1日限定◯個などに限定し販売する
- ご当地キーホルダーやボールペンなどを作りコレクション性を持たせる
- 通常版と違う特別モデルを販売する
なお、実態とかけ離れた誇張する表現は、景品表示法違反の対象になるため注意しましょう。
バンドワゴン効果
多くの人に使われているものに、より多くの支持が集まる心理学法則のことを、バンドワゴン効果と呼びます。バンドワゴン効果のマーケティング活用の事例が、インフルエンサーによる宣伝です。
多くの人が支持しているインフルエンサーが紹介する商品は、きっとよいものに違いないと購買意欲がかき立てられます。
ほかにも具体的な申し込み人数や権威が認めている事実を、広告やLPに記載することでもバンドワゴン効果は得られます。「すでに〇万名が申し込み済み!」「医師推薦の商品です!」などのキャッチコピーがその一例です。
なお、広告やLPで数字を表現するときは、エビデンスや監修者を必ず準備してください。
心理学の法則②|営業でも使える関係構築の手法編
ここでは相手との関係構築で使える心理学の概要や、活用手法を紹介します。
紹介する心理学の法則は、以下の5つです。
- ミラーリング効果
- 類似性の法則
- 単純接触効果
- ウィンザー効果
- 開放性の法則
各法則をこれから詳しく解説します。
ミラーリング効果
人間には同じ仕草や行動をとる人を、仲間と思い好感をもつ習性があります。このミラーリングと呼ばれる習性を利用し相手の行動を意図的に真似すれば、好感度を高めることが可能です。
例えば、営業では、以下のミラーリングが顧客獲得に効果を発揮します。
- 身振り
- 目線
- 表情
- 話すトーン
- 文面のクセ
ミラーリングは対面だけでなく、オンライン会議や顧客に送るメール・LINEでも有効です。相手の表情や声のトーン、口癖や文章の書き方を真似して取り入れてください。
ただし、あからさまなミラーリングは相手を不快にさせてしまいます。例えば、相手が疑いをもちにくいとされる喜びの感情を抱くタイミングで取り入れたり、相槌を打つときなどの限定的なタイミングで用いたりしましょう。
類似性の法則
共通点が多い人に親近感をもちやすい原理を活用したのが、類似性の法則です。共通点には下記のようなものがあります。
- 価値観
- 思考
- 性格的
- 外見
- 学歴
- 出身地
- 誕生日
このような内面的・外見的問わず相手との共通点をさりげなく探し、親しみを感じてもらいましょう。
営業ではクライアントの事前リサーチを交えつつ、自己開示をして相手との共通点を探しながら類似性の法則を活用します。
また、マーケティングでは「仮想の敵」を共通の存在として据え置き、不都合な事象は自分のせいではなく仮想の敵によって起こるとするのがセオリーです。「ビジネスが成功しなかったのは、学んだ実践内容が今の市場に適していなかったから」などのような、共感をもたせられる仮想敵を作成します。
このように仮想敵に不満を抱かせたあとに「わたし達は味方です」という内容の発信を行うことで、マーケティングの成功率がアップします。
単純接触効果
繰り返し接触することで好感度や評価が高まる心理学の法則が、単純接触効果です。テレビCMでよく目にする商品に好感をもち、店舗で見つけると買ってしまうのもこの効果を活用しています。
営業では積極的に相手とコンタクトをとる機会を増やしたり、何度も連絡したりして接触回数を増やすのがセオリーです。
マーケティングでは自社サイトを訪問したユーザーを追跡し、広告を繰り返し配信するリターゲティング広告が高い効果を得られます。SNSでの発信回数を増やし、自社コンテンツがユーザーの目に入る回数を増やすのもよいでしょう。
ウィンザー効果
第三者が褒めることで、その商品の信頼性が高まることをウィンザー効果と呼びます。この効果で大切なのは、何を言うかより誰が言うかです。例えば、商品のメリットを自社がアピールするのと、第三者であるユーザーがアピールするのとでは、説得力に差があります。
また、口コミの活用や利用者からのアンケートレビュー、SNSで拡散されるようなキャンペーンの展開なども高い効果を発揮します。
ウィンザー効果を活用するときは、会社と利害関係がない第三者からの情報を提示し、買い手に不信感を抱かせないよう最新の注意を払ってください。
開放性の法則
開放性の法則は、プライベートな部分を自己開示し親近感を抱かせる手法です。相手を知るためにまず自分から情報を提示し、顧客と営業という心の隔たりを消していきます。このとき、一気にすべての情報を開示するのではなく、相手にもっと知りたいと思わせることがポイントです。
営業であれば家族やプライベートの写真を開示する、マーケティングであればSNSに社内の様子をアップするのもよいでしょう。
ネガティブな情報はマイナスな印象を与えるため避け、ポジティブな情報のみを発信するように心がけてください。
心理学の法則③|交渉・提案でも使える手法編
提案や交渉で使える心理学を5つ紹介します。
- 返報性の法則
- 社会的証明の心理
- ドア・イン・ザ・フェイス
- メラビアンの法則
- 両面提示
これらの手法をうまく駆使すれば、セールスを苦手と感じている方もスムーズに交渉できるようになります。
返報性の法則
人から何かプレゼントをもらったら、お返ししないと申し訳ない気持ちになることはありませんか。これが返報性の心理であり、営業やマーケティングにおいても効果的です。
営業 | 相手の好きな手土産を持参する訪問頻度を重ね相手に有益な情報を提供する |
マーケティング | 初回特典としてサンプルや割引などをつける継続購入者に対し特典を適用する |
いずれの場合も、お返しの強要はトラブルへと発展する可能性があるため、相手が負担にならないような仕組みを考えておくとよいでしょう。また、気持ちを無視したプレゼントは相手が嫌悪感を抱く可能性もあるため、ある程度親しくなってから実施してください。
社会的証明の心理
自分の判断よりも周囲の判断を信じて、その通りに行動してしまうことを社会的証明の心理と呼びます。
営業・マーケティングへの使用例は、それぞれ以下の通りです。
営業 | 顧客の成功事例をクライアントに提示するほかの顧客からの口コミや推薦を活用する有名企業との提携をアピールする |
マーケティング | 商品レビューやお客さまの声、セールスの実績を見せる受賞歴や認定をアピールするSNSのフォロワー数を増やし信憑性を高める |
なお、このテクニックを使うためには必ずエビデンスを示す資料が必要になります。
口コミやレビュー、成功事例などを集めておいて提示すれば、マーケティングの成功確率は高まるでしょう。
ドア・イン・ザ・フェイス
まずは大きなものを要求して断られたあとに、本命に関する小さな要求をすることで承諾してもらいやすくなる交渉術が、ドア・イン・ザ・フェイスです。営業では初めに見積額を大きく提示し、顧客に譲歩する形で値引きしていくテクニックをよく用います。
納期交渉で確実な期日より少し遅めの納期を提示し、断られたら期間を短く提示するのもよくある手法でしょう。
マーケティングでは複数のプランを準備し、高額なプランから順に提案していく手法が効果を発揮します。このようにドア・イン・ザ・フェイスは、徐々に相手に譲歩する仕草を見せることで、本命の承諾を得やすくなるテクニックです。
このテクニックでは、最初の要求が無理難題すぎないことや、同じ相手に何度も活用しないことが重要です。さじ加減によっては相手の信用を失いやすいため、ある程度顧客の信用度が高くなってから行う方がよい手法と言えます。
メラビアンの法則
「言語情報が7%」「聴覚情報38%」「視覚情報55%」の割合で判断に影響を与えるとする法則を、メラビアンの法則と呼びます。言語よりも視覚や聴覚に頼って人間は決定をすることを示した心理学の法則です。
メラビアンの法則を生かした、営業やマーケティングの手法は以下の通りです。
営業 | 身振り・手振り・表情・声のトーンをプレゼン内容に合わせて変化させ注目度を高める |
マーケティング | カラーコントラスト・デザイン・キャラクター・人物画像の表情などを好印象になるよう工夫する |
好印象をもたせたり、マーケティング対象である広告などによいイメージをもたせたり、メラビアンの法則で誘導します。
両面提示
セールスポイントと同時に価格の高さや使い勝手の悪いポイントなど、あえてマイナス要素を伝えて信憑性を高める手法を画面提示と呼びます。営業でデメリットを先に伝えたあとにメリットを提示したり、コンテンツマーケティングでメリットとデメリットの両方に触れたりする手法が有名です。
イメージダウンさせないためにも最後にメリットを伝え、商品やサービスに対し好印象を与えたまま締めくくるよう心がけましょう。
まとめ
広告やマーケティングは、心理学的な原則に基づいて構成されています。ユーザーのとる行動には何かしらの働きかけがあると心得て、心理学に基づき適切なアプローチをかけましょう。顧客との良好な関係構築や、顧客の購買意欲の向上を目指せます。
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