マーケティングや宣伝について勉強していると「カリギュラ効果」という言葉を目にする機会があるかもしれません。カリギュラ効果とは心理学関係の用語ですが、多くのマーケティング戦略で活用されています。
本記事では、カリギュラ効果の概要やマーケティング・広告への活用方法、注意点などを紹介します。うまく利用すれば集客効果の高い広告ができるため、広告作りに迷っている方は参考にしてください。
カリギュラ効果とは?
はじめに、カリギュラ効果とはどのようなものか、概要やよく似た「心理的リアクタンス」との違いを解説します。
カリギュラ効果の概要
カリギュラ効果とは、「人は何かを禁止されたり制限されたりすると、禁止や制限されたことをやりたがる」心理を表す用語です。「カリギュラ」の名前は1980年に公開された映画『カリギュラ』に由来します。この映画は大変刺激的な内容だったため、公開当時は上映禁止となる映画館が多発しました。しかし、上映禁止の拡大がニュースになるとかえって映画を見たいと思う人が増えて、結果的に映画は大ヒットしました。
「つるの恩返し」の鶴に化けた娘が「決してのぞいてはいけませんよ」といって機織り(はたおり)場に入っていき、老夫婦が耐えきれずに部屋をのぞく行為もカリギュラ効果といえます。
心理的リアクタンスとカリギュラ効果の違い
カリギュラ効果によく似た心の動きに「心理的リアクタンス」があります。こちらは、「何かを強制されると、その何かから逃げようとする心理」を指します。例えば、「勉強しなさい」と親から強制されると、反発心を抱きやる気がなくなる現象です。
心理的リアクタンスは「強制されるとやりたくなくなる心理」、カリギュラ効果は「禁止されるとやりたくなる心理」を表します。起こす行動は正反対ですが、どちらも「言われたこととは真逆なことをやりたくなる」という点では共通しています。
カリギュラ効果はマーケティングに活用できる
カリギュラ効果は、教育だけでなくマーケティングにも盛んに活用されています。ここでは、カリギュラ効果を利用したマーケティングの実例や効果を紹介します。
カリギュラ効果を利用して「見たくなる」広告を作れる
カリギュラ効果を利用したマーケティングの代表例は、「禁止」を盛り込んだキャッチコピーや見出しを作る手法です。「××の人は見ないでください」「××の人は必要のない情報です」といったキャッチコピーを見たことがある方も多いでしょう。
「見ないでください」「必要のないことです」といわれると、かえって「どんなものだろう」と興味がわいて広告を見たり、クリックしたりしてしまいます。
このほか、映画や本といった料金を支払って内容を確認するタイプの販促にも、カリギュラ効果を活用しているものが多い傾向です。1977年に公開された伝説の傑作ホラー映画『サスペリア』でも、「決してひとりでは見ないでください」とのキャッチコピーがあります。
制限をかける集客方法もカリギュラ広告を利用している
「期間限定先着何名様まで」「今から×時間だけ受け付けています」といった広告もカリギュラ効果を利用しています。今しか見られない、今を逃したらもう利用できなくなるかも、といった危機感が購入意欲に結びつくためです。このような広告は通販サイトや、セミナーなどでも利用されています。
一例を挙げると、ひとしきり宣伝をした後で「今から24時間だけお得に購入できます」と伝えれば、購入に迷っている人も踏み切りやすくなるでしょう。このようなマーケティング手法は、インターネット広告だけでなく、テレビやラジオCMなどにも有効です。
カリギュラ効果を活用したマーケティングが効果的な事例
ここでは、実際にカリギュラ効果を活用したマーケティングの手法や効果的な分野を紹介します。見込み顧客にアクションを起こさせるには、どこでどのような広告の作り方をすればいいか知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
「禁止する」を活用した広告
「××は見ないで」「××はやらないで」といった「禁止」を活用した広告は、転職・美容・映画などの宣伝に効果的です。ターゲットは「少し興味はあるものの、行動するには至らない」見込み顧客です。
例えば、美肌を目的とし新しい化粧品を購入するか迷っている人が、「肌に自信のある人には必要ありません」といった広告を見れば、カリギュラ効果で「効果があるかも」と行動を起こさせるきっかけになります。
また、転職に関する広告に「今の職場の給与に満足している人は見ないでください」「今の職場に不満のない人には必要ありません」といった文句が多いのも、「転職に興味はあるけれど、一歩を踏み出せない」と悩む人が多い可能性があるためです。
「禁止する」を活用した広告は、チラシからTVCM、Web広告まで幅広く使えるのがメリットです。
「制限」を利用した販売・集客
制限を利用した広告は、主に通販サイトや会員制サロンの広告などに利用されています。
特に、テレビやラジオの通販は後から見返すのが難しいため、「今から20分の間に注文した人のみ3割引」といった宣伝をすれば、見た人の購買意欲を一層高められるでしょう。また、「会員登録をさせる」ハードルを越えさせるために、「今から3日間会員登録が無料」といった制限を設けることもよくあります。「4日目以降は有料になる」との制限が顧客の行動を後押しするのです。
制限を利用した広告は、即効性の高さがメリットです。「今すぐ売りたい」「できるだけ早く人を集めたい」といった広告に適しています。その一方で、何回も繰り返すと効果が薄れてしまうデメリットもあるため注意が必要です。
カリギュラ効果を用いたマーケティングを成功させる方法
カリギュラ効果を利用した広告は効果が上がりやすいメリットがある一方、必ずしも成功するとは限りません。また、失敗した場合は顧客からの信頼を失うなど大きなデメリットもあります。ここでは、カリギュラ効果を用いたマーケティングを成功させる方法を紹介します。
顧客との信頼関係を築いた上で行う
禁止や制限は見た人の好奇心を高めると同時に、ストレスを与えます。
例えば、知名度が高い企業や、常に利用しているメーカーが禁止や制限を行えば、好奇心のほうが勝るでしょう。しかし、立ち上げたばかりの企業が「使わないでください」といえば、そのままストレートな意味に取られてしまう可能性があります。
また、禁止や制限に関する言葉は見る人に強い印象を与えるため、使う場所を間違えるとマイナスイメージを与えてしまうリスクもあるでしょう。カリギュラ効果を利用した広告を利用する場合は、一定の知名度や顧客の信頼を得てから行なってください。
禁止の度合いを調整する
カリギュラ効果をマーケティングに利用する場合、禁止の度合いの調整が重要です。
例えば、「絶対に見ないでください」と表書きにあっても、すぐにページをめくれたりクリックできたりする広告なら高い効果が期待できます。期待感を上げようと、「利用を希望するなら、来店してアンケートに記入してください」といった手順を踏ませようとすると、好奇心よりも煩わしさが上回ります。
すでに「禁止」というハードルを設けている以上、それ以後は必要になるアクションは極力少なくして顧客が目的を素早く達成できるようにしましょう。そうすれば、好奇心に動かされて商品を購入したりサービスを利用したりする人が増える可能性が高まります。
制限をかける理由を説明する
単に「見ないでください」「やってはいけません」と言われただけでは、なかなか腰が上がらない人もいるでしょう。アクションを起こしてもらうには、「なぜ制限をかけるのか」理由を説明することも重要です。
例えば、「生産に手間がかかるため、肌に自信のある人にはお売りできません」といった文句で広告を作れば、付加価値も与えられます。「ご用意できる数に限りがあります」や「席に限りがあります」といった文句も制限をかけるときの定番です。
一見すると使い古された手順のように思えるかもしれませんが、効果があるからこそよく使われます。「カリギュラ効果を利用した広告を作ったがうまくいかなかった」といった場合も、制限をかける理由を追加すれば成功する可能性があります。
不当表示に気をつける
広告には一定のルールがあります。カリギュラ効果を利用した広告を作る場合は、不当景品類及び不当表示防止法を理解しておきましょう。
例えば、「期間限定で××円」と制限を利用した広告を打った場合、延長するなら「ご好評につき延長」「皆様の声に応えて×月まで延長」といった理由を説明しなければなりません。「期間限定」といっておきながらいつまでも同じ価格で販売していると、有利誤認表示に該当し法律違反と判断される恐れがあります。
また、実際にはその価格で販売しない商品を「期間限定××円」として広告を打ち、申し込んだ人に「たった今売り切れてしまいました、その代わりにこの商品はどうですか」といった販売はおとり広告とみなされるため行ってはいけません。
やみくもに行わない
カリギュラ効果を利用した広告は「ここぞ」のときに行うのが効果的です。
広告を打つ度に「見ないでください」「やらないでください」といった禁止事項を入れれば顧客は興味を失い、「またか」と思われてしまいます。普段は一般的な広告を打っている企業が「見ないでください」「必要ありません」といった広告を打つからこそ、見た人は好奇心をそそられます。
何年もかけて開発した商品を発売するとき、新しい分野の仕事を始めるときなど、多くの人から注目を集めたい場合にカリギュラ効果を活用しましょう。
カリギュラ効果を利用したマーケティングを実施するタイミング
最後に紹介するのは、カリギュラ効果を利用した広告を打ったりマーケティングを行ったりするタイミングです。「初めてカリギュラ効果を利用した広告を打つ」ことを検討している会社も参考になるでしょう。
一定の顧客がついており知名度が上がったとき
カリギュラ効果を利用したマーケティングを行うのは、商品やサービスの知名度が上がり、一定の顧客がついたときに行うのが効果的です。
例えば、「××の商品は美容効果が期待できる」という認知が広がったときに「容姿に自信のある人には必要のない商品です」といった広告を打つと、顧客は興味をそそられるでしょう。さらに、「自社の力でも××しか生産できなかったため、今回はすでに自社商品を利用して効果を実感している人はご遠慮ください」といった広告を追加すれば、さらに期待感は上がります。
美容以外にも、転職サイトや学習塾などにも同じような手法で広告を打てば、一定の効果が期待できるでしょう。
力を入れた商品を販売したいとき
会社にとって目玉商品となるものを販売したいときや、人気がある商品の後発品を販売したい場合も、カリギュラ効果を利用したマーケティングを実施するベストタイミングです。
例えば、人気ゲームの続編やリメイク作品を販売する際に「今回の××は新規の人はやらないでください」といった広告を打つと、顧客の期待がかきたてられます。ただし、語句の選び方によっては、直接的な意味に捉えられてしまいます。
そのため、「あまりに面白すぎて寝不足になる恐れがあります」など、期待を肯定するような文句を追加するのも効果的です。
より顧客を集めたいとき
新規顧客獲得の新しい方法として、カリギュラ効果を使った広告を打つのも効果的です。特に、いつも常識的で無難な広告を打つ会社がカリギュラ効果を狙った広告を打てば、注目を集めやすいでしょう。
また、通販を初めて行う場合にも効果的です。「初めて通販を行うため、注文が殺到すると発送作業が間に合いません」といった広告を打てば、制限の理由が説明できると同時に、期待を高められます。
どうすれば顧客の興味や好奇心をより高められるか、いろいろとアイデアを練ってみましょう。うまくいけば新しい分野での事業も成功するかもしれません。このほか、代替わりをした場合なども、「まだ不慣れなため厳しい常連様にはお叱りを受けるかもしれません」とお詫びを述べてから「でも、自信はあります。新規顧客の人だけでも」と文句を続ければ、顧客の期待を高められるでしょう。
まとめ
カリギュラ効果は「禁止されると余計好奇心がわく」心理効果のことで、広告でよく使われています。一度は「しないでください」「やらないでください」といった広告を見たことがある方も多いでしょう。
カリギュラ効果をうまく使えば、高い集客効果が期待できます。タイミングを見計らってぜひ実践してください。なお、実施する前に広告表現のルールをしっかりと把握しておくことが大切です。
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