リターゲティング広告は、サイトを離脱したユーザーに対し、別のサイトで広告を表示するマーケティング手法です。ユーザーが興味のある広告を再度表示させることで、商品の購買意欲を高める効果が期待できます。
この記事では、リターゲティング広告の基本情報や配信までの流れ、将来性について解説します。マーケティング活動にリターゲティング広告を活用したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
リターゲティング広告とは
リターゲティング広告とは、サイトにアクセスしたユーザーが離脱したあと、別のアクセス先で広告を表示する手法です。過去に接点のあるユーザーを対象として、広告配信するマーケティング法のため、効率の良い顧客獲得につながります。
リターゲティング広告は、ECサイト商品の購入を検討している方に向けてよく利用されているマーケティング法の1つです。ECサイトにおいては、訪問者の9割は商品を1度見たら離脱するといったデータがあります。しかし購買意図を持ちながらも、比較検討やタイミングの問題で購入まで至らなかったユーザーも少なくありません。
こうしたユーザーに対して、後日別のサイトを閲覧中に広告を表示することで、再訪や購買の検討を促す機会を創出できる点がリターゲティング広告の強みだといえるでしょう。
ターゲティング広告との相違点
ターゲティング広告とリターゲティング広告の違いは、ユーザーが1度もサイトにアクセスしていない人に対してもアプローチできる点です。
ターゲティング広告は、例えばペット情報が集まるサイトに、おもちゃやエサの広告を出すように、サービスに興味を持ちそうなユーザーに向けた広告を配信する手法です。ユーザーは、自分が興味のある広告を目にする機会が増え、興味のない広告は目に触れにくくなります。
リマーケティング広告とは同義
リターゲティング広告とリマーケティング広告は、同じ意味で使われていることがほとんどです。一般的には「リターゲティング広告」と呼ばれており、リマーケティング広告はGoogle広告で表記されています。
媒体や相手に合わせて名称を使い分けることが多くどちらを使用しても意味は通じますが、迷う場合はより一般的な「リターゲティング広告」を使用したほうが無難です。
リターゲティング広告の配信までの4つの流れ
リターゲティング広告はユーザーのサイト訪問履歴に基づいて、適した広告を配信する仕組みです。この仕組みには、サイトへの訪問日時や回数などの履歴がわかる技術「Cookie」を用いています。
Cookieを活用するには、あらかじめサイトにタグを埋め込まなければなりません。ここでは、Cookieやタグの説明を用いながら、広告配信までの流れを4つのステップに分けて解説します。
1.広告プラットフォームを選ぶ
リターゲティング広告を利用する際は、あらかじめどこで広告を配信するかを選びましょう。広告媒体にはさまざまなプラットフォームがあり、特徴やユーザー層も異なります。
代表的な広告配信事業者は、以下の通りです。
- Google Ads
- Yahoo!広告
- Meta広告(Facebook広告)
例えば、Googleの利用者層は、20代〜30代の男性が50%台、女性ユーザーは年代を問わず30%台だと判明しています。一方で、Yahoo!は、経営者や主婦のユーザーが多い傾向にあります。MetaのFacebookは、30代〜40代の割合が多いのが特徴です。
広告は闇雲に出すのではなく、ターゲットに適したプラットフォームを選択することが重要です。自社商品やサービスの強みが効果的に響く広告展開を目指しましょう。
2.タグをサイトに埋め込む
広告配信するプラットフォームを決めたら、次はGoogleやYahoo!など広告配信事業者が発行する「リターゲティング広告専用のタグ」をサイトに設置します。タグとは、サイトに埋め込む小さなコードスニペットを指します。埋め込んだタグは、ユーザーがサイトへアクセスしたときに自動で作動する仕組みです。
3.訪問者をリスト化する
タグを埋め込んだあとは、サイトへのアクセスが蓄積されるまで待ちましょう。アクセス数が一定数集まったら、訪問したユーザーをグループ分け(セグメント)していきます。具体的には、「特定のページを見た人」「カートに商品を入れたまま離脱した人」などです。こうしてユーザーの属性や行動履歴でセグメントした情報をもとに、顧客リストを作成します。
4.作成したリストから広告を配信する
作成したリストは、ユーザーの閲覧履歴やアクセス期間などの条件ごとに分類し、より効果的な広告配信に活用しましょう。例えば、特定の商品ページを閲覧したユーザーを集めたリストには、その商品の広告や関連商品の広告を配信します。
また、数日閲覧していないユーザーを集めたリストには、特別なキャンペーン情報などを配信して、サイトへの再訪を促します。このように、ユーザーの行動パターンや、ニーズに合わせた広告内容にすると、CV(コンバージョン)アップにつなげることが可能です。
リターゲティング広告を活用する2つのメリット
リターゲティング広告の活用にはメリットがあります。ここでは代表的なメリット2つを説明します。
1.再訪者の購入率が高い
サイトに1度訪れた経験のあるユーザーは、商品やサービスに興味を持ち比較検討している可能性が高いといえます。そのため、再訪問した場合のCVR(コンバージョン率=サイト訪問者を購入・登録につなげる割合)は高くなる傾向があります。
再訪問者やリピーターはすでに商品情報に触れている状態です。新規ユーザーよりも商品理解度が高く、購入を決断しやすいでしょう。また、ECサイトの場合、新規顧客は会員登録など手間のかかるプロセスが必要になります。しかし、リピーターはこれらの面倒を省略できるため、CVまでのプロセスが少ないのも特徴です。
2.コストパフォーマンスが高い
リターゲティング広告は、興味のあるユーザーに絞って配信するため、費用対効果が高いといえます。不特定多数の人に向けて高額の費用を投入するよりも、広告の成果が表れやすいためです。
ある程度見込みのあるユーザーに広告を配信する結果、CVRの向上も見込めます。一般的なサイトのCVRは、およそ1〜2%といわれていますが、リターゲティング広告を活用すれば、さらなる売上アップも目指せるでしょう。
リターゲティング広告活用時に気をつけたい2つの注意点
リターゲティング広告は、適切に活用しないとかえって逆効果になる可能性があります。効率よくユーザーに広告を届けるためにも、2つの注意点を押さえた上でリターゲティング広告を利用しましょう。
1.過剰に露出するリスク
リターゲティング広告は、1人のユーザーに対して同じ広告が何度も配信されるため、さまざまなサイトで同じ広告を頻繁に目にする可能性があります。広告配信の頻度や期間によってはユーザーにしつこい印象を与えてしまい、商品や企業のイメージダウンにもつながりかねません。
このように過剰な露出を抑えるためには、商品やサービスに適した配信頻度の設定が重要です。例えばファッションサイトの場合、ユーザーが商品を購入するまでの検討期間が短いため、広告の配信期間や頻度も短く設定します。
一方、不動産の場合は検討する期間も長くなるため、広告の配信期間を長く設定し定期的に露出することで、ユーザーの記憶に留める工夫が必要です。
2.新規開拓に不向き
リターゲティング広告は、1度サイトを訪れたユーザーに絞ってアプローチするため、訪問歴のないユーザーへのアプローチは難しい点がデメリットです。そのため、新規ユーザーや潜在顧客への認知度向上には、ディスプレイ広告やリスティング広告など、ほかのアプローチ方法を検討しましょう。
新規開拓も同時に進めたい場合は、リターゲティング広告だけではなく、ほかの広告手法と組み合わせることが大切です。複数の手法で同時にアプローチすることで、新規顧客とリピーターどちらも効率的に集客できるでしょう。
リターゲティング広告の効果を高める2つのポイント
リターゲティング広告の効果を高めるには、ユーザーのニーズに応える必要があります。リターゲティング広告の効果を高める2つのポイントを解説します。
1.検討期間が長いユーザーをリストから除外する
リターゲティング広告の効果を高めるためには、検討している期間が長すぎるユーザーをリストから外し、より見込みの高いユーザーに絞り込むことが大切です。
サイトにアクセスするユーザーは、ページ内の商品やサービスへの購買意欲が湧かないケースもあります。各ユーザーの滞在時間を分析し、短期間でサイトから離脱した場合はタグを動作させない設定にし、配信を控えるなどしましょう。
取り扱っている商品によってユーザーの検討期間は異なります。しかし、一般的に商品の購入を検討する期間が長ければ長いほど購入率が下がる傾向にあります。サイトの訪問から30日以上経過しても購買行動が見えないユーザーは、購入が期待できないため、広告配信を停止したほうがよいでしょう。
このように、見込みの少ないユーザーをリストから除外していくことで、より見込みの高いユーザーへアプローチできます。費用対効果の面からも、見込みの高いユーザーに絞った広告配信を心がけましょう。
2.離脱のタイミングが遅いユーザーに配信する
商品に対するユーザーの購買意欲は、サイト内のどのポイントで離脱したかどうかで判断できます。例えば、サイトのトップページで離脱するユーザーは、意欲がそれほど高くないと考えられるでしょう。
反対に、1度カートに商品を入れたけれど離脱するなど、サイトでの滞在時間が長いユーザーは、購入に対する意欲が高いと考えられます。サイトをいつ離脱するかを分析し、タイミングが遅いユーザーに絞って広告を配信すると、より効果が期待できるでしょう。
また、広告を配信するタイミングも重要です。サイトを離脱した直後に広告を目にすると、ユーザーが煩わしさを感じる可能性があります。しかしサイトを離脱してから数日後、他社商品との比較や検討したタイミングであれば、購買意欲が高まっているかもしれません。
リターゲティング広告の将来性と3つの代替手法
リターゲティング広告は、ユーザーの興味関心に基づいた効率的な広告配信を実現する手法として多くの企業で活用されています。ただ、近年プライバシー保護の観点から、Cookie利用に規制や廃止が検討されています。
現状では規制の延期が繰り返されている状況ですが、将来的にCookieが利用できなくなる可能性は拭えません。そこで、リターゲティング広告の代替手法として有効だと考える広告3つを紹介します。
代替手法1.LP広告
LP広告とは、ランディングページ(特定の目的のために作成したWebページ)を活用した広告手法です。ユーザーのニーズに合わせたLP広告を適切な媒体で配信することにより、商品やサービスの魅力を効果的に伝え、購入や問い合わせなど具体的な行動を促進できます。
適切なLPと広告媒体の組み合わせにより、新規顧客とリピーターどちらにも効果が期待できます。ただし、ユーザーを惹きつけるページ設計と、適切な広告媒体の選定、運用面での最適化が必要です。これらの条件を満たせば、リターゲティング広告の代替として有効であるといえるでしょう。
代替手法2.SMS配信
SMS(ショートメッセージ)を活用した広告配信は、リターゲティング広告の代用になります。ユーザーの携帯電話番号が自社のデータベースにある場合、SMSを使用して広告を配信するのもおすすめです。
LINEやメールではほかのメッセージで埋もれてしまい、ユーザーの目に届かない可能性があります。しかし、SMSならこれらと比較して、メッセージの開封率が高い傾向にあります。受信時はスマートフォンの画面上にポップアップが出るなど配信に気づいてもらいやすいため、広告媒体として効果を期待できるでしょう。
代替手法3.GoogleのP-MAXキャンペーン
P-MAXキャンペーンは、Googleが2021年11月から提供している新しい広告配信法です。1つの広告を作成するだけで複数の媒体に広告配信できるほか、細かい設定をせずとも、機械学習により自動で最適な配信を行ってくれるのが特徴です。
P-MAXキャンペーンは目標設定さえしてしまえば、システムが自動で広告配信を改善してくれるため、手動で広告配信するより効果的です。ただし、詳細な設定が難しい点や配信の結果がわかりにくいといった課題もあります。cookieに依存しないターゲティング手法としては有効ですが、運用ノウハウが必要な点に留意しましょう。
まとめ
リターゲティング広告は、1度サイトを離脱したユーザーに再び広告を配信する手法です。自社商品やサービスに興味のある方に絞ってアプローチできるため、CV獲得につながりやすい点が特徴です。
ただし、リターゲティング広告を活用する際は、注意点に気をつけながら配信する必要があります。ほかにも効果的なWeb広告は多くあるため、自社のWeb戦略に適した広告配信方法を検討しましょう。
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