環境破壊の影響などにより、消費者だけでなく企業のエシカル消費(エシカルマーケティング)の実施が重要視されています。商品の開発や食品の販売では廃棄物の排出を免れず、処理をする際に二酸化炭素などの有害な物質を発生させることもあります。
このほか、原材料の取引きが不公平であったり児童労働があったりと、世界的に多くの問題を抱えているため、企業のエシカルな取り組みが注目を集めています。
他企業との共同開発やエシカルデザインの開発などを検討している方へ向けて本記事では、エシカル消費をテーマに解説します。また、エシカルマーケティングを実施するにあたって、消費者からのニーズがあるか不安な方には、ニーズの有無も紹介しますので、自社で何ができるかを考えてみましょう。
エシカル消費の意味とは?
エシカル消費とは「人や地域、環境に配慮された商品やサービスを選ぶ」といった意味があります。具体的には、人権や労働の問題、環境の問題、地域の過疎化の問題に目を向け、これらの課題を解決する取り組みを指します。
取り組み方にはさまざまあり、消費者目線でいえば、環境や雇用問題の課題解決につながる商品の購入がエシカル消費です。企業目線では、環境や雇用問題の課題解決につながる商品やサービスの開発を製造時に意識的に取り組むとエシカル消費につながります。
次項では、企業が実践できるエシカルにつながる行動をお伝えします。
エシカル消費における「人・社会への配慮」
私たちが普段着ている衣服や食べている食材は、手元に届くまで多くの人が関わっています。原材料のなかには発展途上国で生産されているものもあります。低賃金で過酷な労働を強いられていたり、働いているため学校に通えない子どもがいたりしているのが現状です。
エシカルな取り組みでは、誰もが平等に幸せな環境で働けるよう支援します。具体的に企業ができる行動の例として、以下があります。
- フェアトレードを行う
- オーガニック素材を使った商品を作る
それぞれの取り組みを詳しく解説します。
企業ができる取り組み事例①フェアトレードを行う
フェアトレードとは「公正な取引」を意味する言葉です。具体的には、原材料を安価に仕入れず、正当な価格で取引することを指します。安価で仕入れられれば、商品の販売価格を抑えたり、会社の利益を増やしたりすることが可能です。そのため、発展途上国との取引では、不当な価格での買い付けが行われている状態です。
また、児童労働によって作られた原材料の購入もフェアトレードとはいえません。子どもには本来、学校で学ぶ権利が保証されていますが、発展途上国では多くの子どもが労働に従事しています。児童労働にかかわる生産者をなくすことは、子どもの人権を守るために必要です。
児童労働にかかわる企業との取引を控える企業を増やしていくことが、エシカルにつながります。
企業ができる取り組み事例②オーガニック素材を使った商品を作る
企業ができる行動の1つが、オーガニック素材を扱った商品開発です。オーガニックとは、化学肥料の使用を避けたり、環境への負荷を減らした方法を用いたりして栽培されたものです。
この取り組みがエシカルになる理由に「生産者の化学肥料による人体への影響を抑えられる」「土壌汚染や水質汚染を抑えられる」ことが挙げられます。化学肥料を散布することで、生産者が健康被害を受ける場合があります。また、化学肥料の成分は土壌に存在する微生物による分解ができません。
その結果、雨で化学肥料が川や海に排出され、さらなる環境汚染を誘発してしまいます。衣服の制作や食品、飲食店などで食材や素材を買い付ける際は、オーガニックの生産者を選択することがエシカルになります。
エシカル消費における「地域への配慮」
地域の活性化につながる取り組みもエシカルになります。インターネットの普及により、通販サイトで遠い地方の食品や工芸品などを購入できるようになりました。そのため、Web上で買い物を済ませる方も存在しており、地域のお店を利用する機会が減ると懸念されています。
加えて、地震や台風の被害、火山の噴火など、日本はさまざまな災害が起きやすい国です。現在でも被災地の復興が進まず、自宅に戻れない方、地元に戻れない方もおり、活気を失ったエリアが存在します。
このような地域の活性化を促すために企業ができる行動は、以下が挙げられます。
- 地産地消できる企画や商品の開発をする
- 伝統工芸や特産品を使った商品を作る
どのようにしてエシカルにつながるかを具体的に解説します。
企業ができる取り組み事例①地産地消できる企画や商品の開発をする
地産地消を促す営業スタイルの1つに「道の駅」があります。地元で採れた食材、地元で採れた原材料を使った商品が販売されているため、この特徴をヒントに企画の考案が可能です。
例えば、地産地消ができる通販サイトを立ち上げたり、商品開発をして販売したりする方法があります。飲食店であれば、地元の漁師や農家、酪農家と契約して買い付けすれば、地元生産者を応援できます。
地産地消を行うメリットは、地元の活性化だけではありません。移動距離が少なく済むため、輸送で発生する排気ガス量も軽減でき、環境保全の取り組みにも貢献できます。
企業ができる取り組み事例②伝統工芸や特産品を使った商品を作る
地元の工芸や特産品を使った商品を作ることもエシカルにつながります。例えば「伝統工芸や特産品を使った商品を作る」「工芸品や特産品を仕入れて販売する」などが挙げられます。直接購入できなかったとしても、通販サイトでの販売や店舗で「地元応援フェア」を開催することで支援が可能です。
地元を支援することは、企業のイメージアップになります。イメージアップすれば、もともと販売している商品やサービスの購入につながる可能性もあるでしょう。地域の人々と企業の両者にメリットがある取り組みといえます。
エシカル消費における「環境への配慮」
現在、地球温暖化の進行や森林の減少、大量のプラスチックゴミなど多くの環境問題を抱えています。本来すべての人が環境への課題に取り組むべきですが、積極的ではない方や企業も存在しているのが現状です。
企業ができる環境に配慮した取り組みに以下が挙げられます。
- 再生可能エネルギーを導入する
- 繰り返し使える商品を作る
どのようにエシカルにつながるかを具体的に解説します。
企業ができる取り組み事例①再生可能エネルギーを導入する
再生可能エネルギーとは、風力発電やバイオマス、太陽光発電などを指し、会社内で使用するエネルギーに利用することでエシカルの取り組みに貢献できます。風力や太陽光などは、原子力と異なり安全性が高い上に資源を枯渇させません。
加えて、一酸化炭素や二酸化炭素といった環境破壊につながる物質の発生を抑制でき、脱炭素に取り組めます。企業にとってまた別のメリットもあります。電気料金の高騰が続く時期が来たとしても、自家発電ができれば電気料金を抑えられます。
企業ができる取り組み事例②繰り返し使える商品を作る
繰り返し使える商品を開発すれば廃棄物を減らせるため、環境保全につながります。例えば、シリコンのストローやラップ、エコバッグなどが該当します。燃えない資源で作られた使い捨ての商品は、廃棄物が増える一方です。そのため、洗って何度も使用できる商品が注目されています。
商品を開発する際に意識するとよいのが「アップサイクル」です。本来廃棄される製品に新たな価値をつけて再生させることを表します。新しく商品を開発する際、新たにプラスチックなどを用意すると相対的にプラスチック量が増えてしまいます。アップサイクルに取り組むことにより、プラスチックの廃棄量を減らすことが可能です。
消費者のニーズとエシカルマーケティングの意義
エシカルマーケティングを行っても、消費者にニーズがなければ意味がないと思う方もいるでしょう。社内や他社との共同開発を行っても、消費者からのニーズがなければコストだけがかかり、収益が上がらず損をしてしまいます。以下の頁では、エシカルに対する消費者の認知度やニーズの実態を解説します。
引用:消費者庁「「倫理的消費(エシカル消費)」に関する消費者意識調査報告書」
認知度は高くはないが今後身近になると予測される
消費庁が2020年に実施した消費者の意識調査によると、消費者のエシカルに関する言葉の認知度はそれほど高くありません。調査結果では、「エコ」の認知度は72.6%と高い傾向にありますが、「エシカル」の認知度は8.8%で、「エシカル消費」は12.2%でした。
2016年に実施された調査結果では、「エシカル」は4.4%、「エシカル消費」は6.0%だったため、認知度は上昇しています。エシカル・エシカル消費という言葉の認知度は上昇傾向にあるため、今後より身近な言葉になると考えられます。
消費者の興味・関心は高い傾向
エシカル消費は認知度がそれほど高くないのが現状です。しかし、消費者庁の調査から全体の59.1%が「興味がある」と回答し、エシカル消費への関心が高まりつつあると考えられます。なお、この数字は「非常に興味がある」「ある程度興味がある」の2つの項目を合計した数です。
性別や年代による分析も行われており、興味があると答えた方が多かったのは、50代と60代の女性でした。エシカルマーケティングを行うのであれば、50代や60代から共感が得られる企画や商品を考案するとよいでしょう。
消費者が実践しているエシカルな行動
消費者庁が行なった意識調査では、行動の実践状況も報告されています。報告によると、エシカルに関連する言葉を認知しており、実際に行動に移している方は36.1%です。なお、この数字は「よく実践している」「時々実践している」の2つの項目を合計した数です。
行動内容で多かったものはマイバック・マイ箸・マイカップの使用で、86.8%と高い割合になっています。このほかに、以下の項目が実践されています。
- 電気をこまめに消す等の省エネ
- 食品ロス削減
- リサイクル活動・購入
これらの項目を実践していると回答した割合は、いずれも60%を超えています。
エシカルな取り組みへの課題と対策
エシカルへの取り組みは世界的な課題にもなっています。しかし、エシカルの取り組みそのものに課題があり、対策や工夫が不可欠です。3つの課題とその対策を紹介します。
【課題1】コストがかかるため費用の工面・工夫が必要
エシカルな取り組みには生産・管理のコストが生じるため、費用の工面や工夫を考える必要があります。環境に配慮した商品は大量生産が難しく、一般的な商品に比べて一つひとつに管理コストがかかる傾向にあります。
また、人件費のかかりやすさも、高コストになる理由の1つです。生産者にこだわり、輸入コストがかかるケースもあります。生産者や製造にかかわる人に正当な人件費を渡すためには、高価格に設定しなければなりません。製造の背景から商品の価値を訴求し、消費者の購買につなげる必要があります。
【課題2】PR方法の検討が不可欠
消費者や企業のエシカルに対する認知度が低いため、PR方法をどのようにするか検討しなければなりません。一般的な商品とは異なりコストがかかることから、エシカルマーケティングを行う企業はまだ多くありません。
知名度が低いと無難な選択として取り組みに参加しない、商品を購入しないといったことにつながる可能性があります。他社に営業を行う場合、エシカルの重要性を中心に伝え、企業にもたらすメリットやベネフィットを伝える必要があるでしょう。
【課題3】認証マーク取得への障壁が高い
エシカル商品を開発し、第三者機関に認定してもらえれば認証マークを取得できます。認証マークを取得できれば、一目でエシカル商品だとわかります。
しかし、審査が厳しくハードルが高いため、マークをつけずに販売する企業も多い傾向です。エシカル商品だとアピールしたい場合、認定マークを取得するための対策や認証にかかるコストへの対策が必要です。
実践した企業の成功事例
エシカルな取り組みをしている企業の成功事例を紹介します。自社で取り組む内容を検討する際の参考にしてください。
マクドナルド
アメリカ発祥のハンバーガーショップの「マクドナルド」では、以下のような取り組みを行なっています。
<原材料の環境を確認してから契約>
・契約過剰漁獲の抑制
・生産者の人権保護
・児童労働の禁止
・アニマルウェルフェア
<プラスチック削減>
ハッピーセットのおもちゃをトレーにリサイクル
ほかにも、紙袋はFSCⓇ認証の紙を使用し、フィレオフィッシュはMSC認証のスケソウダラを使用するなど幅広い取り組みをしています。
Lush
コスメやスキンケアアイテム、石鹸やバスボムなどの商品を開発・販売している、イギリス発祥の「Lush(ラッシュ)」は、以下のような取り組みを行なっています。
- 原材料の環境を確認してから契約(動物実験・児童労働の有無など)
- 動物由来の材料不使用
- 自然由来の保存料を使用
- リサイクル資材の使用
- 募金ができる商品の開発
Lushは商品を作り販売するだけでなく、人・動物・環境の犠牲を生み出さないエシカルな取り組みを信念としています。
まとめ
エシカル消費とは、人や社会、地域や環境が良い状態になるための取り組みがされている商品を選ぶことです。消費者がエシカル商品を購入することはもちろんですが、企業が仕入れ段階でエシカルにつながる原材料を購入するのもエシカル消費です。また、企業はエシカル消費につながる商品の開発、企画を考えて取り組めます。
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