OMOはオンラインとオフラインの区別をなくし、顧客体験の向上を目的としたマーケティング手法です。IT技術の発展やオンライン市場の拡大により、多くの企業がOMOの導入を検討しています。
本記事では、OMOの基本から、オムニチャネルやO2Oとの違い、導入手順などを解説します。また、OMOの一般的活用例やOMOの成功事例も掲載していますので、ぜひご覧ください。
OMOとは顧客体験向上を目指すマーケティング戦略
OMOとは「オンラインとオフラインの区別をなくし、両者を融合して顧客の購買意欲や満足度を高める」マーケティング手法です。従来の商品販売やサービスでは、オンラインショップはオンラインショップ、実店舗は実店舗、といった具合に別々の存在として扱われるのが一般的でした。
OMOは両者の垣根を取り払い、シームレスな顧客体験を可能にしたものです。OMOは、インターネットが浸透している現代社会において主要なマーケティング手法といえます。
OMOがマーケティングで重要視される理由と背景
OMOがマーケティングで重要視され始めた理由は、大きく次の2点があげられます。
- IT技術の発展によるオンライン市場の拡大
- 顧客の購買活動や需要に変化
IT技術が大きく発展したのは、1990年代後半から2000年代前半の頃です。IT技術の発展にともない、ECサイトをはじめとするオンライン市場も同様に活発化しています。
オンライン市場の拡大にともない、顧客の活動もインターネット上に広がりをみせていきました。そのため、実社会における購買活動との垣根は曖昧になりました。
顧客は顧客体験をオンラインとオフラインの双方に求めるようになり、企業側は顧客の需要に応える必要があります。顧客のニーズに応え、売上拡大・企業価値の向上を図るためには、オンラインとオフラインを区別しないOMOが不可欠です。
OMOとオムニチャネル・O2Oそれぞれの違い
OMO・オムニチャネル・O2Oの違いは、大きく分けて次の通りです。
オンラインとオフライン | 顧客との関係性 | |
OMO | 同一視する | 全体を通した顧客体験 |
オムニチャネル | 連携させる | チャネルを顧客との接点に活かす |
O2O | それぞれ別のものと考える | オンラインは顧客をオフラインへ送る手段 |
この項では、OMOとそのほか2つの施策との違いを比較しながら説明します。
オムニチャネルとの違い
オムニチャネルとは、店舗と顧客の接点になりうるすべての場を活用して商品やサービスに結びつけるマーケティング施策です。オムニチャネルとOMOは、どちらもオンラインとオフラインをシームレスに考える点は同じですが目的に違いがあります。
オムニチャネルは、すべての接点を活用して顧客を自社の商品販売・サービス利用に結びつける目的で行われます。それに対し、OMOはすべての接点を活用して顧客体験を向上させるのが目的です。
- オムニチャネル・・・「販売・サービス」を目的にしたマーケティング手法
- OMO・・・「顧客体験」を目的にしたマーケティング手法
一見どちらもよく似た施策にみえますが、「何を目的にしているか」に大きな違いがあります。
O2Oとの違い
O2O(Online to Offline)とは、オンラインの情報を通じて実店舗の商品購入・サービスにつなげるマーケティング手法です。「オンラインでクーポンを配布して実店舗で利用する」これはO2Oの代表的な例です。
O2Oはオンラインとオフラインを切り分けて考えていますが、OMOは両者をシームレスに考えている点に違いがあります。
OMOの活用例2選
OMOのイメージをより具体的にするため、ここではOMOの活用例を2つ紹介します。
- モバイルオーダー
- デジタルサイネージ
どちらの例も、既に皆さんの生活に浸透している身近な事例です。以下を参考に、OMOのイメージを具体的なものにしてください。
OMO活用例①モバイルオーダー
モバイルオーダーとは、顧客がスマートフォンやタブレットなどインターネットにつながる端末から注文を行い、商品は実店舗で受け取る手法です。現在、飲食店やファストフード店を中心に導入が進んでいます。イートインとテイクアウトどちらのタイプもあり、店舗の事業形態に合わせて選ばれています。
顧客にとって、店舗における待ち時間が短くなるのは大きなメリットです。モバイルオーダーは、待ち時間の短縮によって顧客満足度の向上に貢献しています。
OMO活用例②デジタルサイネージ
デジタルサイネージとは、デジタル技術で映像や音が流せる液晶型掲示板のことです。デジタルサイネージの活用例は、次のようなものがあげられます。
- 店舗が商品のQRコードを掲示板に表示させ、QRコードを読み取った顧客がオンラインの店舗で該当の商品を購入
- ディスプレイの前に顧客が立つと、顧客の情報を読み取ってコーディネートを提案
デジタルサイネージの誕生により、顧客は掲示板を「オンラインとオフラインの融合した媒体」として利用できるようになりました。
OMOの導入手順
この項では、OMOをマーケティングに導入する際の手順を紹介します。OMOの導入は次の手順で行うのが一般的です。
- 現状把握と課題認識する
- OMOの観点を取り入れながら顧客体験の改善を図る
- ツールの必要性を検討する
各手順で気をつけるポイントを、1つずつ説明していきます。
1.現状の把握と課題を認識する
OMOの導入で初めにするべき行動は、自社の現状把握と課題の認識です。まず、購買意思決定プロセスのステップごとに、自社が市場に向けてどのようなマーケティングを行っているのか整理をしましょう。
自社のマーケティング戦略を整理したら、各ステップにおける顧客の行動を確認し、問題点や課題を洗い出します。企業ごとに問題はさまざまですが、よくある問題は次のような事例です。
- 自社のECサイトで離脱の多いページがある
- 購入品のキャンセルが多い
- リピーターが少ない
課題はなるべく具体的に認識した方が、今後に役立つより良い結果が得られます。アンケート調査を行って顧客から生の声を聞いたり同業他社との比較をしたりするのも、課題の洗い出しによいでしょう。
2.OMOの観点を取り入れながら顧客体験の改善を図る
現状の問題点や課題を認識したら、次は顧客体験の改善を図ります。オンラインとオフラインをどのように取り入れていくか、OMOの観点で考えるのが大切です。
顧客体験の改善を図るためには、個別の問題に目を向けるだけではなく全体を俯瞰して眺め、顧客がスムーズに動ける流れを作る必要もあります。顧客体験の改善は、コスト面も含めた総合的な判断が重要です。
3.ツールの必要性を検討する
顧客体験改善の次は、ツールの必要性を検討しましょう。「ツール」と一口にいっても、アプリの使用やQRコードの活用、データベースの設計などさまざまです。
どのようなツールがあれば顧客体験向上につながるのか、既に開発されているデジタルツールを使うのか、それとも開発から行うのか、このように考えられる要素をすべてあげていきます。
OMOの観点から考えると、オンラインとオフラインの情報一元化ができるシステムの導入は不可欠です。自社の予算と照らし合わせながら準備をしましょう。
OMOを導入するメリット
OMOの導入には、主に3つのメリットがあります。
- 顧客満足度が向上する
- 販売機会の損失を防げる
- LTV(顧客生涯価値)が最大化できる
OMOを従来のマーケティングに組み合わせると、このように大きなメリットが得られます。ここからは各メリットの説明を、具体的に行っていきましょう。
顧客満足度が向上する
オンラインとオフラインの統合は、より自由で便利な体験を顧客にもたらします。その結果、顧客一人ひとりに合った体験の提供が可能です。
顧客満足度は向上し、リピーターだけでなく、新規顧客の獲得につながります。顧客の嗜好が多様化した現代では、多様な選択肢を用意して顧客の好みで選べる形を提供することが大切です。
販売機会の損失を防げる
オンラインとオフラインの連携を行うと、行動パターンの分析によって顧客の購買意欲の高まりも察知できるようになります。
企業は顧客の購買意欲が上昇したタイミングでキャンペーンの提供やクーポン配布といった施策の活用が可能です。このほか、実店舗の利用で貯めたポイントをECサイトで利用できるといった施策もOMOに該当します。
LTV(顧客生涯価値)が最大化できる
OMOの導入によりLTVの最大化を図れます。LTVは「Life Time Value」の略称で、顧客が商品やサービスを利用してから終了するまでの期間、自社にとってどれだけの利益をもたらすかを示す数値です。
OMOはさまざまな販売チャネルの情報を一元化できるため、適切なタイミングで顧客が求めている施策を打つことができます。顧客体験の向上につながり、リピート率や顧客単価も次第に上昇していくでしょう。その結果、自社ブランドのイメージアップだけでなく、LTVの最大化が期待できます。
成功事例から学ぶOMOマーケティング
成功事例からは、多くの学びが得られます。ここでは、OMOをマーケティングに活用して成功した3社の事例を紹介します。
- セブン&アイ
- ニトリ
- Zoff
ここで紹介している3社は業種の違いこそあるものの、顧客の特徴と行動をよく理解してニーズに応じた施策を展開しています。OMOをマーケティングに取り入れたいと考えている方は、各社の事例を参考にしてください。
セブン&アイ
株式会社セブン&アイ・ホールディングス(以下、セブン&アイHD)では、グループ全体でOMOマーケティングを取り入れています。
セブン&アイHDが行うOMOの基本は、自社運営店舗を利用すると貯まる「ポイントプログラム」です。このプログラムで顧客の属性や購買データを把握し、顧客一人ひとりに適した情報やサービスが案内できるようになっています。
そのほかにも、インターネットでクラウド上のネットコンビニに注文すると近隣の実店舗から最短20分で商品が届く「7NOW」、インターネット注文の「店頭受取りサービス」など数多くのOMO施策を行い、顧客満足度の向上やLTVの最大化を図っています。
ニトリ
インテリア業界の最大手、株式会社ニトリホールディングス(以下、ニトリ)もOMOを積極的に活用している企業です。
ニトリのOMO戦略の中心的存在に、ECサイト「ニトリアプリ」があげられます。ニトリアプリの特徴は、実在の店舗と連携ができる点です。顧客がほしい商品の近隣店舗における在庫状況や売場の場所が描かれたマップをニトリアプリで確認できます。ニトリアプリには会員証機能もあり、ECサイトと実店舗を合わせた購入履歴やポイントが情報として保存されています。
また、ビデオ通話を利用したリフォームのアドバイスを行うサービスも提供しています。リフォーム相談はショールームに来店して行うのが一般的です。しかし、相談したいタイミングでスタッフが必ず対応できるわけではありません。OMOの導入により、ショールームに来店しなくてもビデオ通話でリフォーム相談ができる環境を整えました。また、スタッフが不在であれば別のショールームにいるスタッフへの相談も可能にし、顧客体験の向上につなげました。
Zoff
機能的かつファッショナブルなメガネで人気のZoff(株式会社インターメスティック運営)は、「誰もがメガネを気軽に楽しめる社会」を実現するため、OMOをはじめとするさまざまなマーケティングを行っています。
メガネを購入する際は、顧客が店頭に出向いて相談したりフィッティングを確かめたりして購入するのが一般的でした。そのため、オンラインでの購入には高いハードルがありました。
そこでZoffは、ECストアと実店舗の顧客情報一元化を図り、顧客がフレームを選ぶだけで自分に合うメガネを購入できるシステムの構築を行います。このようにOMOをマーケティング手法として取り入れた結果、業界にあったオンラインへの障壁は低くなり、顧客はメガネを購入しやすい環境が得られました。
まとめ
OMOは、デジタルの成長が著しい現代社会において主要なマーケティング施策になりつつあります。オフラインとオンラインの垣根を取り払って俯瞰的な視野に立つのがOMOを成功させる秘訣です。
まずは顧客の立場になって全体の導線を確認し、より利便性の高いシステムを考えるようにしましょう。困ったときには、紹介した3社の成功事例も参考にしてください。
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