Webマーケティングをやってはいるけど、なかなか何か成果が出ないみたいな話を結構聞くと思うのですが、成果がなかなか出ないのは何か理由や原因があったりするのでしょうか?
中小企業に専門特化しているので、中小企業さんのWebマーケティングに成果が出ないケースで、なぜなのかというところでお話しします。
結論としては、お客様主体ではなく、企業主体になっているからです。
企業主体とはどのような状態ですか?
例えば、すごくわかりやすく言うと、マーケティングを本来どうやらなくてはならないかというと、基本的に、
・お客様がどうしたいのか
・お客様が何がわかっていないのか
・お客様は何を欲しがっているのか
と、お客様が主語になるんです。
ですが、成果が出ないときには何が起きているかというと、
・うちの会社がこれを見せたい
・うちの会社の強みを見せたい
・うちの会社はこれを売りたい
など、企業側が主語になってしまっているという状態ですね。
なるほど。
会社が主語になるというと、Webマーケティングをすることになったときはお客様を主体に考えるような気がしますが、意外と自分の会社が主語になって、「売りたいサービスがあるから広告を回したい」などの考えが結構多いんですか?
そうですね。
売りたい商品を売れるように広告を出すということ自体はいいんです。
それ自体は別に構わないんですけど、「それってお客様のためになっているんだっけ」という視点が抜け落ちていることが多いんですよね。
「うちの技術はこんなに素晴らしいです」「うちはこんなに、これにこだわっています!」のように、何かにこだわっている、何かの技術がすごい、みたいなことがあると思いますが、お客様からすると、それはぶっちゃけどうでもいいよね、みたいなこともあるわけです。
すごく極端な例なのですが、カレーを欲しいお客様に対して、
「うちは人参の薄切りの技術がすごいんです!その技術がめちゃくちゃすごくて特許を取っています!日本一、世界一です!見てください、
こんなに薄切りした人参をカレーに入れています!」
これはカレーを欲しがるお客様にとって、はたして意味のあることなのか、お客様が求めていることなのかっていうと、全然違いますよね。
ただ、これがお客様のためになるケースもあります。
例えば、「完全に具が溶けきった、汁単体のようなカレーが欲しい」
と言っている人の場合は、溶け込むことの方がより良いわけなので、
具なしカレーが好きな人特化型、あるいは具なしカレーが大好きな人
専用カレーです。
「カレーを具なしにするために、うちには人参薄切りの技術があります!それで素早く均等にカレーの中に人参の旨みが浸透するんです!」
みたいなことがある場合は、お客様の欲しい美味しい具なしカレーに対して、具なしカレーに専門特化して作るための「人参の薄切り」と
いう技術があるのは、お客様にとっていいことなんですよ。
なるほど、わかりやすいです!
例えば、思ったより成果が出ないなというときは、そのお客さんのニーズに合っていないなという認識を持つべきということなのですか?
そうですね。
まず、お客様のニーズとは、簡単に言うと顕在化している悩みだったり、「こういうものが欲しい、こういうものに悩んでいる、これこれを解決したい」みたいなことが、いわゆるニーズと呼ばれるものです。
なので、これを満たすということはもちろん大事です。
さっきのカレーの話で言えば、具なしカレーが大好きでそれを買いたいっていう事がもう明確になっているので、それはニーズなわけです。
ニーズと同時にもう一つしっかり押さえなければいけないのがインサイトと呼ばれるものですね。
ニーズは表面化しているものを指します。明確に言葉になっていたり、何が欲しい、何を悩んでいる、これが明確なものをニーズと呼びます。
一方、インサイトはその逆です。
明確になっていないものなので、その人の無意識の中にあったり、価値観や根底の考え方のところにあったり、言葉になっていないけど心の中にはあるもの、言われれば気がつけるようなもののことです。
例えば、具なしカレーで行くならば、そこのニーズは、「単純にそれが好きだから欲しい」ということもあるでしょうし、「食べやすいから好きだ」みたいな話や、単純に「ゴロゴロしていると噛み切れないからそれが良い、それが欲しい」という人もいるでしょうし、要はその理由が実はすでに分かっているわけです。
インサイトの場合は、自分で気づいていなかったりするんですよ。
なので、具なしカレーでいうと、それを食べた時の自分の感情や、普段は言葉にしないし、気づいていないけれども、それを良いと思っている価値観みたいなことですね。
要は、具が入っているカレーだと、入れられる具に限界があります。
具がゴロゴロ入ると体積を取ってしまうので、限界がありますよね。
ですが、例えば具なしにすれば、細かくして煮込むことができるので、その分他のいろいろな野菜を入れられますよね。
そういうことが仮にあったとしたら、要は、「より多くの野菜の栄養をまとめて取りたい」みたいなインサイトがある可能性があり、それは別にその本人が言葉にしているわけではないというようなことです。
インサイトに気がつくには?
なるほど。そうなると、インサイトに企業側が気づく必要があり、探っていかなくてはいけないと思うのですが、それはどうしたらわかるものなのでしょうか?
そうですね。すごくいい質問です。
基本的には、いわゆる顧客インタビューっていうやり方が一番いいかなと思っています。
今の私のように、インタビューを受けることによって、普段から言語化できていないけれども、聞かれると「その場合ならこうかな、そういう時だとこういう価値の考え方があるな」のようなことに気がついて言葉にできることがあるんです。
それを顧客インタビューで深掘りしていくのがいいのかなと思います。
顧客インタビューには大体2種類あります。
一つが、いわゆる1対1のパターンですね。今やっているように、1対1でお話をして、片方がインタビュアーになって、もう1人の人から必要な
情報を引き出す方法です。
もう一つが、いわゆる1対多数のパターンです。言い換えると、企業対お客様達みたいな状態ですね。
例えば、BtoCの化粧品のテストでもよくあるのですが、30代の主婦の方々を集めてきて、その化粧品をその場で試して意見交換をしてもらって、「こういうものもいいよね、こういうものが欲しいよね」のように、いわゆるグループで話してもらうような方法です。
1対複数で質問をしたり、ワークショップを開いたりすることによって、お客様の本音を拾い上げていくというやり方もあります。
なるほど。
これって、どの場合は1対1が良くて、どの場合は1対多数が良いなど、
具体的にあるのですか?
まず、1対1が良い場合は、いわゆる対象となる1人の持つ価値観や考え方を深く掘り下げる方が良いケースですね。
その人の価値観や考え方、要は自分たちのお客様になりうる方々の価値観や考え方、その考え方の背景には何があるのか、どういう経験があってそうなっているのか、どういう体験からその価値になったのか、みたいなことを深く聞き出します。
そこに出てくる内容というのが、お客様が意思決定をする背景になったりするケースの場合は、1対1の方が良いです。
一方で、1対多、すなわち企業対お客様たちというパターンが良いのは、個人に対して深くというよりは、その人が普段表面的に思っていることの裏に何があるのかを知りたい時です。
他の人たちとコミュニケーションをさせることによって、こういうところは共感するんだな、ここは逆に共感しないで意見が分かれるんだな、などということが分かります。
要は、人とのコミュニケーションの中で共感できる部分やできない部分、あとはどうしてそう思うのかなどを一つのコミュニケーションの中で明らかにした方が良い場合、主にBtoCの場合に適しているかと思いますね。
企業対個人だと出てこないような意見を聞きたいときは、1対多数など、お客さん同士で話してもらった方が、本音が出るっていうことですか?
本音もそうですし、会話の中でしか出てこないものもありますよね。
例えば、「友達の誰々がこう言っていた」みたいなことって、友達との会話や家族との会話など、同じ属性での会話でないと出てこないんです。
こういったものを拾いたくても、要は1対1だとどうしても同じ属性とのような話はしないので、出てこないですね。
なので、口コミなどについて言うと、どういうふうに口コミされるのかみたいなことは、1対1だとわからないんですよ。
そもそも、成果が出ないという判断基準は?
今回、「Webマーケティングの成果がなかなか出ないのはなぜ?」というテーマでこれまでお話ししてきて、そもそも、その「成果が出ない」はどこを基準で考えるべきなのか、「この期間見て、これ以上駄目ならそれそもそも何かが間違っているよね」のように、何をもって成果が出ないという判断をすればいいのですか?
Webマーケティングの成果がなかなか出ないというのは、中小企業のマーケティングを前提に考えると、まず基本的に成果というものを細分化する必要があるんです。要は初動成果みたいなところですね。
あとは、その後の本成果や継続性みたいなところもありますが、まずは簡単に「初動」と「それ以外」の成果ですね。
中小企業の場合は、その初動の成果というところで、まずは判断した方がいいですね。
例えば、うちで広告運用をするときは、大体1週間ぐらいで判断します。
1週間なのですね。
すごく短い印象を受けますが、どういう理由で1週間なのですか。
基本的に、例えば3日や5日だと、土日が含まれていなかったり、月火水までのデータであったりと、曜日の変動が出てしまうということがあります。
まず、その曜日の変動も含めて見るための最短期間が1週間なんですね。
あとは、なぜ1週間かという話です。
もちろん1週間ではデータがそれほど多くないので、すごく精度の高い分析は難しいですが、一方で、初動の成果として、どの程度の反応が取れているのかは十分わかります。
また、この初動で、かつ1週間であった方が良いのは、中小企業さんの場合、基本的に予算に限りがあるケースですね。
予算が潤沢ではないケースっていうのが多いんです。
例えば、その1週間で検証に必要な最低予算をうちでは決めています。
お客様の商材やサービスによるのですが、大体5万円から10万円ぐらいですね。1週間で、5万円から10万円弱ぐらいまでの間です。
1週間の予算を決めて、例えば「新しいサービスや店舗を立ち上げるから、まずは認知を取らなきゃいけない」となった時、その認知を取るために、まず何が必要か。
広告をどれだけ効率的に表示できているかと、広告をどれだけ安いクリック単価で、どれだけ多くの人に広告をクリックしてもらえるかなので、クリック単価が重要になります。
要は、予算が決まっているので、予算÷クリック単価でクリック数が計算できるため、「とにかくクリック数を多く取らなきゃいけない、広告表示を多くさせなきゃいけない」という時は、それがまずできているかをチェックするのがファーストなんですよ。
ですので、1週間やってみたときに、
・平日のクリック単価
・土日のクリック単価
・広告の表示回数の合計
などが全部わかってくると、これを4週間、すなわち1ヶ月間続けたときの数字の目安がわかります。
別のインタビューでもお話していますが、それがいわゆるKPIとかKGI、お客様の妥当な目標設定というところに対して、達成しうる指標になっているのかということをまず1週間チェックするんですよ。
これが例えば、それほど大きくずれていない場合、要はこの1週間の成果を4倍したときに1ヶ月で取っていきたいKPIやKGIが達成できそうだということであれば、ここから単純に3週間配信を続ければいいのです。
ですが、たまにあるのが、全く駄目だったというケースです。
例えば、本当は1クリック100円で取っていかなきゃいけないのに、1クリックに200円かかっているというようなことがあったら、取れるクリック数が半分になってしまう可能性がありますね。
1クリック200円を100円にする努力をまずしなければいけないんです。
例えば、この例のように「1週間のテストの後に1回検証する」ということをしないで、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月…と、「とりあえず最初の3ヶ月は様子を見ましょう」と言って適当に流していると、クリック単価200円のままで3ヶ月が経ってしまうんですよ。
でも、実際の広告主であるお客様にとっては、それは望ましいことではないじゃないですか。
しかも、例えばその3ヶ月はもうテストの期間だと割り切れるぐらい予算がしっかりあるお客様ならいいのですが、なかなかそのように割り切れるお客さんばかりではありません。
ですので、うちのクライアント様に対しては、予算をとにかく大事にして、無駄な広告費を使わせないように、
・1週間で駄目だと思ったら、1回強制的に止める
・クリック単価が200円なら、100円にするための改善策を考えて、改善した上で「次の1週間、もう1回テストしてください」と最低予算で提出する
ということをしています。
そして、「これである程度うまくいくよね」という形が見えてきたときに、初めて予算を増やしたり、次の週も継続して運用したりということをします。それまではずっと、テストテスト、改善改善ですね。
1週間で毎回テストして、ある程度結果が見えないと、その先に進まないという考え方ですね。
そうですね。よくある話として、例えば広告の運用の話の中でよく出てくるのは、広告によって自動運用というAIがあるんです。
自動運用の最適化にしっかり沿う形で運用していくことが、最近のスタンダードになっているんですよ。
ただ、自動運用は、一定の運用データがしっかりないと、自動化がうまく働かないんです。
自動化といっても、もちろん最初は、実際に広告を出してみてデータを収集するところから始めます。
その収集したデータが少なければ少ないほど、当然ながら精度は下がります。
大手さんみたいに、月に100万、200万、500万のような予算を出せるところは、多くのデータがあるので精度が上がりやすいです。そうなると、自動運用の最適化は成果に乗りやすいんですね。
中小企業さんの場合、例えば20万円から30万円程度と、予算に限界がある場合があります。そうなると、自動運用の最適化に乗るほどデータが集まらない、データが集まるのにすごく時間がかかるということが起きます。
中小企業さんの場合、「自動運用の最適化に乗るまでずっと耐え忍ばなければいけないのか」のようなことになるんですけれども、僕はそれに関してはノーだと思っているんですよ。
基本的に、できるだけ最短で成果を出すためには、自動運用に頼りきりになるより、まずお客様の今回のテーマであるWebマーケの成果を上げるため、「お客様主体になっているかどうか、お客様が主語になっているかどうか」ということをチェックすることが大切です。
広告の運用などの施策を実際に走らせてみて、細かくテストをして、お客様からきっちり想定通りの反応をいただけているか、お客様主体の内容になっているかをチェックしながら成果を上げていくことです。
そういうことですね。
では、成果が出ない時には、まず「お客様主体になっていない」ということと同時に、そもそも初動成果の見極めがきちんとできていなくて、最終的な目標設定もぶれてしまっているから、結果として成果が出ていないような印象を受けるという考え方で大丈夫ですか。
そうですね。
そもそも、妥当な目標設定もできていなければ、初動の手前にある当座の目標を何にするのかということを決めきれていないということもあるでしょうし、そもそも、その初動の検証をしない会社も多いです。
「まずは1ヶ月やってみましょう」という会社さんもまだまだ一定数いらっしゃいます。
今のお話を聞いた後で1ヶ月と聞くと、なんだか恐ろしい期間だなと思ってしまいますね。
もちろん、その1ヶ月2ヶ月というのも、一定の正当性はあるんですよ。
やはり先ほどの「自動運用の最適化に乗せるために学習させましょう」という話もあるでしょうし、1ヶ月通してやってみる中で入ってくるデータも多いので、「データとしてはこのぐらいで、今は落ち着いてきている」のようなことを見ることもできます。
ただ、これはもちろん重要なことではありますが、最重要事項ではないんですよね。お客様にとっては、成果を出すことと、成果を出す上で広告費を無駄にしないことが一番大事なわけです。特に、中小企業様であればあるほどそうですね。
ですので、うちの場合は、1週間、2週間というできるだけ短い期間で、まず初動の成果の目標を決めて、それを一緒に追いかけます。
それが大幅に想定を外れているような時は、そもそも妥当な目標設定がうまくできていないか、はたまた、お客様主体であるべきところが、企業側が主語になってしまっていないかをチェックしながら、商品サービス、広告・SNSやマーケティングの施策、そういったものを全て、その都度細かい改善を行います。
なるほど。
今のお話をお伺いしていると、しっかり知識がある人に介入してもらえれば、いわゆるコケることはないかなと思うのですが、実際、「成果が全然出ないんです」という相談は結構あるのですか?
はい、めちゃくちゃ多いですよ。
「あちこちの広告代理店に行って、結局駄目でした!」のように、どこに頼んでも駄目だったという話もありますし、「広告は予算だけ多くかかって、たくさん配信してしまって、結局何も得られなかったので、あんまりしたくないです」という状況になってしまっている方もいらっしゃいますし。
そうなると、「自社でやってみました」ではなくて、広告代理店の、いわゆるプロとしてマーケティングをしているところに依頼しても駄目だったということですか。
広告代理店の方に問題があるケースももちろんありますが、一方で、広告を出す側のお客様に問題があることもあります。
なので、やはり冒頭の話のとおり、いわゆるお客様を主語にしたお客様主体ではなくて、企業主体、企業を主語にすることですね。
お客様の立場を考えないで、自分たちの売りたいものをとにかく押し出す。それで、それを広告に回してくれと言って、広告代理店にオーダーをしてしまう方もいらっしゃるんですよ。
ただ、広告代理店は基本的に広告の運用代行を行うという代理店業務以上の専門性は特段持っていないことがほとんどなんです。
ですので、例えば商品やサービスの設計や、すごく強いコンセプトを作りに行くことを、中小企業さんが頼める範囲でしっかりやってくださる広告代理店さんは、実はそれほどないんですよね。
「LPはどれを出しますか?広告の運用媒体はどれにしますか?」みたいなことですね。
媒体をGoogle広告にするのならキーワードを決めますね、広告物を作りますね、という感じでどんどん出していったり、出してみて、ここの所がうまくいかないので、候補の媒体を変えましょうかという提案だったり。
商品開発や改善みたいなことまで手が入っていないことが多いので、そこでお客様の何が問題かというと、広告を魔法だと思ってしまうことなんです。
「広告を出せばうまくいくはず」「みんな広告を出してうまくいっていると聞いた」「でも、広告としてはうまくいかないし、これは広告を運用している人が悪いんだ、代理店を変えよう」…。
これでうまくいくわけがないんです。
こうなるともう、広告を魔法だと思ってしまっているので、商品やサービスの改善ということをしないんですよ。
そこがすごく甘いと思います。
実際、サービスや商品が良くなくて結果が出ないこともある?
実際、「そもそもこのサービスは良くないよね」ということ結構あるんですか?
正直なところ、めちゃくちゃありますよ。
「どうしてそれを売ろうと思っているんだろう」と思うほど、一緒に比較検討されるような競合に対して、価格面で大したメリットがあるわけでもないですし、すごい強みがあるわけでもないようなサービスを出そうとされている会社さんは、もちろんあります。
そういう時、サービスなら改善のしようがある気がするのですが、例えば提供するものが商品の場合、その商品がいまいちだなと思ったらどう改善するんですか?
商品だとしたら、その時点で改善をするのであれば、もちろん商品の開発ですよね。初めに遡って、「そもそもその商品のコンセプトって何だったんだっけ」と。
例えば、扱う物が「水」の場合。
まず、「この水って、そもそもどういう水なんだっけ」と考えます。
ナチュラルミネラルウォーターもあれば、ミネラルウォーターもあります。水って、いろいろな種類があるんですよ。
さらに言うと、容器の形はなんだっけみたいなことや、あとはラベルですね。「どうしてこういうラベルにしているんだっけ」みたいなことを全部さかのぼるわけです。
それで、「お客様に求められているものを提供しているんです」というお客様目線でのマーケティングと、「こういうお客様向けにこういう商品を、こういう見せ方をして売っている」というペルソナをしっかり確認するのが一番最初ですね。
いきなり「他の商品に変えてください」みたいなことは、マーケターとしては微妙かなと思うので、それはあまりしないです。
商品、例えば水に求められているのが持ち運びやすさだとすると、「水を持ち運びやすい」ということを重要視されているお客様の中には、例えば次のような人がいます。
・20代中盤から30代中盤ぐらいまでの女性
・比較的外に出歩くことが多い
・平日は会社に出社をする
・土日は友達と外に出かけたり、自分の好きな買い物に行ったりする
また、
・水を持ち運べることを重要視する健康意識が比較的高い
・ジュースより水を飲む傾向がある
・水を持ち運ぶ時、できるだけカバンを小さくしたい
このような人だと、水が大きな容器に入っていると、そもそも持ち運べないよねという話にもなります。
「手で持ったときにすごく持ちにくいと持ち運びたくなくなるよね」のようなことであったり、あとは健康意識が高い人なので、比較的おしゃれなものだったり、自分を磨くような人に見られることを意識するような人だったりという傾向も考えて、「人からおしゃれなお店だと思われた方がいいよね」みたいな。
例えば、1本の単価が56円ぐらいの水を、「日本で56円で売っているお水ですよ」と言うだけでは、さらに安いお水と比較されます。
でも例えば、いつも水を持ち歩くような、健康意識が高くて、かつ、できるだけおしゃれに水を飲みたいなと思う人なら、きっと毎日、500ミリリットルを2本飲むいうこともあるでしょうから、「それを60本セットで3,360円で売ります」とすると、持ち運べて、おしゃれに見えて、健康意識も高まる。3,360円払うのに、それだと売れるわけですね。
そのような前提があれば売れますが、先ほど強みがない商品や差別化されていない商品も結構あると言ったのは、今話したように、「軟水で56円の水なんです」みたいな売られ方をしているものがすごく多いんです。
それを突き詰めていくと、この商品はそもそもこういう人たちのために、こういうコンセプトを作っていて、こういう利用シーンを想定していて、容器にはこういうこだわりがあって、ラベルにはこういうこだわりがあって…みたいなことが出てくるケースがよくあるんです。
大体、全ての商品・サービスにはそのようなものがあります。
うちはそういったマーケティングにアクティブコンサルティングで入る中で、売りたいものについて、「本当に強みがないんだっけ、本当に売れる要素がないんだっけ?」とか、「例えばターゲットを変えたら刺さるということはないんだっけ?」みたいなことを細かく掘り起こして、一緒にその商品サービスをブラッシュアップするところから始めます。
なるほど。
全ての商品・サービスについて、「もともと何を目的に作ったんだっけ」というところを深掘りして新しい見せ方を掘り出すと、今まで成果が出なかったものを成果が出る形に変えられるということですか?
そうですね。
同じ商品なんですけど、見せ方やターゲットを変えたりするのは、マーケティング上いいことなんです。
その物の見せ方を少し変えることによってうまくいった事例が、すごく有名なもので1個あるんですよ。
それは、ご存知だと思いますが、シーブリーズです。
え、あのシーブリーズが!
はい。シーブリーズは、多分僕ら世代だと、中高校生ぐらいから使ったかなと思います。
「シーブリーズ」って、もともと「海のそよ風」という意味なんですよ。その名前の通り、もともとのターゲットはマリンスポーツをする若者でした。海でマリンスポーツの後に汗をかく、特に20代、30代の男性を設定したんですよ。
特に、1980年代には海をイメージするようなCMを打ったりしてプロモーションしていましたが、時代は流れて、若い男性が海に行ってマリンスポーツをゴリゴリやってということ自体がそもそも少なくなって、楽しみ方が変わっていきました。
それで、海で使う制汗剤のようなブランドイメージが、時代に取り残されていく感じだったんですよ。
「なんか昔あったよね」みたいな時代遅れの扱いをされてしまったということがありましたが、そこから何をしたかというと、ターゲット層を大きく変えたんです。
その時のシーブリーズの広告は、とにかく中高生向けでした。中高生、その中でも女子でした。
中高生世代が汗のケアに気を使っていたので、その市場に合わせて、ターゲットをそこに完全に寄せ切ったんです。
いわゆる女子高生にがっつり寄せるみたいな事をやりました。
特にCMでも、訴求されたのは部活の後に汗を拭く女子高生に細かくターゲットを合わせて、部活の後でも汗の香りをさせずに、汗のケアがしっかりできるというものに変えました。
これも結局同じことですよね。
「そもそもこれって誰のために作っていたっけ」のような話があって、「こういう効果があるんだよね」。
もう一度お客様目線に立って、「今の時代に、汗のケアを特に必要としているのって誰なんだっけ」。制汗剤というくくりで見ると、「制汗剤を最も欲しがっていて、最もケアに気を使っている、お金を落としてくれそうな人たち」って誰なんだっけ。
当時は、それが女子高生だったんですね。
時代の流れによって、売り上げが低下気味になってしまっていたのが、ターゲットを変えることで、また跳ね上がるみたいなことって結構ある話なんですね。
全然ありますね。
ターゲットだったり、コンセプトだったりを切り替えてというのは、
よくありますね。
例えば、同じことを言っていても、言い方をAからBに変えるだけで売り上げが多く気変わるようなことはあるんですか?
例えば、フレーズについてよくある話をすると、「一気通貫でサポートします」っていう言葉はよくありますよね。
元の文章は、「マーケティングに関して一気通貫で対応ができます」という言葉で、それをまるっと言い換えるなら、「マーケティングに関してはうちに丸投げできます」という感じです。
言っていることは一緒です。
ただ、フレーズが全然違うので、その「丸投げ」という言葉が他社よりも刺さって、問い合わせをより多く獲得できたり、お客様に認知してもらえたりということはよくあります。
そういうことですね。ありがとうございます。
ただ一つ注意点なんですけど、それをやったときに、言葉に反応してくる人たちって、やっぱり言葉を変えると反応する人が変わるんですよ。
例えば「一気通貫」と「丸投げ」、まとめてお受けできますよっていうニュアンスの意味では一緒なのですが、お客様主体で考えると、お客様から見て「一気通貫で対応できる」というのは何か。
広告を頼んだときに、SNSのマーケもお願いできるし、SEOもお願いできるしという状態が、基本的に一気通貫なわけですね。
同じ会社にただ丸投げできるというのは、それだけのニュアンスではないんですよ。
・自分たちが面倒だと思うことを全部ポイッとできる
・自分たちが手を放してもやっておいてくれる、勝手にいい感じにやっておいてくれる。
・自分たちは責任を持たなくてもいい
のような解釈がされる可能性もあるということですね。
そうすると、当然ながら入ってくる人たちの認識が違ったり、お問い合わせをいただくお客様のそもそもの前提となる考え方が違ったり、価値観が違ったりします。
管理画面上の効果が良くなる、獲得単価CPAが良くなる、広告をよりクリックするようになるというのとは別のところで、「実際に成約をした後にお客様が契約を続けてくれるか、そもそも契約するのか」みたいなところは、大きな影響があることを加味した上で、使うフレーズや言葉を選ばなきゃいけないですね。
難しいですね。
お客様視点に立ち返って、「こういう言葉の方が刺さるよね」となったとしても、結果として、その満足度が上がるとも限らないんですね。
そうです。お客様に過剰な期待、「期待値」と言ったりするんですけど、期待値を過剰に上げすぎたりしてしまうことがありますね。
まとめ
今日はお話しいただきありがとうございます。
最後に今日のまとめと、この記事を見てくださっている方に一言お願いできればと思います。
はい。
「Webマーケティングの成果がなかなか上がらないのはなぜ?」っていうのが今回のテーマですが、基本的には、お客様主体になれていない、企業が主語になってしまっているというケースが中小企業の場合は非常に多いので、まずはそこを疑いましょうということが僕からの話です。
いわゆる企業主体で、お客様を主体として考えるときには、
・お客様に直接お聞きするインタビュー
・お客様同士のグループで行うワークショップ
・アンケート
などで、お客様の声を実際に拾うことを行います。
これが、Webマーケで上手くやっていく上で、一番お客様主体に立ち戻りやすいやり方です。
また、成果が出ないときには、そういったお客様のところに立ち戻れているかということで、実際に、現場で施策を回すということにおいて言えば、少なくとも初動の成果をどこに置くのか、きちんと定義しなければいけない。
その定義したものに対して、いわゆる妥当な成果が出ているのか、必要な成果がきっちり出ているのかを確認した上で、伸ばしていくっていうことをしないと、なかなか大きく伸ばすのは難しいです。
そうしないと、広告費を無駄に使ってしまって、継続的にWebマーケティングをやっていくことができなくなってしまうので、やはりそこのコストコントロールもしっかりやる必要があります。