動画広告は視覚と聴覚に訴えることで高い訴求力を持ち、TVCMや静止画広告よりもユーザーの関心を引きつけやすいため多くの企業が活用しています。しかし、種類や特徴、課金形態について十分な知識がないまま作成しても、期待する効果を上げられないかもしれません。
この記事では、動画広告の種類や特徴、課金形態を解説します。動画広告の作成や出稿を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
市場規模の拡大が予想される「動画広告」とは?
動画広告とは、文字通り動画を用いた広告の総称です。TVCMも動画広告の一種といえますが、「動画広告」といった場合はWebで流す広告を指すのが一般的です。
CCI・D2C・電通・電通デジタルの4社が共同で発表した「2023年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」によると、Web上での動画広告費は前年比115.9%の6860億円であり、広告媒体の中で最も高い成長率を示しています。
また、インターネット広告媒体費の広告種別構成比をみると動画広告の割合は25.5%で、検索連動型広告、ディスプレイ広告についで3番目の位置付けになっています。この分析から、Web上で公開される動画広告にかけられる費用は年を追うごとに拡大すると考えられ、その流れは今後も続く可能性が高いでしょう。
参考:電通「2023年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」
動画広告の種類とそれぞれの特徴
動画広告には、以下の3種類があります。
- インストリーム広告
- アウトストリーム広告
- インリード広告
ここでは、種類別に動画広告の特徴を紹介します。広告の種類と特徴を把握しておけば、自社に合った広告を作りやすくなるでしょう。
インストリーム広告|動画メディアで主流のWeb版TVCM
インストリーム広告とは、YouTubeなどの動画共有サイトや、ABEMAをはじめとする動画配信サイトで視聴時に流れる広告です。広告は動画と同じサイズで表示されるため、Web版のTVCMといえばイメージしやすいでしょう。
インストリーム広告には、以下の3種類があります。
- プレロール広告:動画が始まる前に再生される
- ミッドロール広告:動画の間に再生される
- ポストロール広告:動画が終了したあとに再生される
また、流せる広告には以下のような種類があります。
- スキップバル広告:一定の時間が経過するとスキップ可能な広告
- ノンスキップバル広告:終了までスキップできない広告
- バンパー広告:長さ6秒までのスキップできない広告
例えば、ミッドロール広告でノンスキップバル広告を流せば視聴者に必ず視聴してもらえますが、スキップできないことからストレスを与えてしまう可能性があります。
バンパー広告はスキップできない広告であるものの、ノンスキップバル広告に比べて尺が短いためユーザーに負担をかけにくい特徴があります。インストリーム広告を配信する場合は、目的によって種類を使い分けるとよいでしょう。
アウトストリーム広告|幅広いユーザーへアプローチ可能
アウトストリーム広告とは、Webサイトやアプリ、SNSの広告枠などさまざまな場所に出稿できる動画広告です。幅広いユーザーに広告を見てもらいたい場合に適しています。アウトストリーム広告は、以下の2つに分られます。
- バナー広告
- レスポンシブ広告
バナー広告は、Webサイトなどの広告スペースに掲載されます。広告をクリックしないと音が流れないため、ページを見る際の邪魔になりません。その反面、広告が見逃されやすい点がデメリットです。
レスポンシブ広告は、広告枠のサイズや縦横比に合わせてフォーマットが自動的に調整できるのが特徴で、バナー広告の進化系ともいえます。動画・画像・テキストなどを出稿する際にまとめて登録しておくと、媒体が最適化してくれるため見逃されるリスクも減らせます。
ただし、バナー広告に比べて作成・入稿に手間がかかるのがデメリットです。
インリード広告|視認性が高く視聴率の向上に期待
インリード広告とは、Webページをスクロールした際に表示される動画広告のことです。コンテンツの途中に挟まる形で表示され、広告自体がコンテンツの一部のような形をしている点が特徴です。また、インリード広告はWebページ閲覧時に邪魔をしないことから、ユーザーにストレスを与えにくいといったメリットもあります。
インリード広告には視聴率を向上させるためのシステムが開発されており、設計したペルソナが興味のあるWebサイトに広告を出稿すると高い効果を上げられる可能性もあります。一方で、出稿場所が適切でないと費用をかけても効果が得られない恐れもあるでしょう。
インリード広告を作成する際は、ペルソナ設計を入念に行ったり広告の作り方を工夫したりすることが重要です。
動画広告で効果を出すポイント
動画広告を出稿して効果を出すためには、広告の種類を把握しておくだけでなく押さえておくべきポイントがあります。ここでは、動画広告を出稿して売上を向上させたり認知度を高めたりするためのポイントを紹介します。
メリットだけでなくデメリットも把握する
動画広告の出稿を検討する場合、メリットだけでなくデメリットも把握しておきましょう。動画広告のメリットとデメリットを以下の表にまとめました。
メリット | ・写真やイラストより多くの情報を盛り込める ・ユーザーの印象に残りやすく訴求力が高い ・商品やサービスの認知度、購買意欲を高めやすい ・自社のサイトに誘導(コンバージョン)しやすい |
デメリット | ・ほかの広告に比べて制作コストがかかる ・最後まで見てもらえないケースがある ・表示方法によっては、視聴者の印象が悪くなる |
広告制作にかかるコストが高ければ、頻繁に新しい広告を作ったり設計したペルソナに合わせて広告を作りわけたりするのが難しくなります。
また、広告を作成・出稿すれば、自動的に認知度が高まったり売上が増大したりするわけではありません。時間や費用がかかる点を考慮しながら、どのくらいの効果を見込めるのか予測を立てておくとよいでしょう。
作成する目的をはっきりさせる
動画広告は作成する目的を明確にし、商品やサービスの紹介に動画が最適かどうか検討しましょう。動画広告を作成する目的には以下のようなものが挙げられるでしょう。
- ストーリー性のある広告を作ってブランド力を高めたい
- 静止画広告では伝わらないサービスの魅力を伝えたい
目的を明確にしておくことで、どのような動画広告を作るべきか指標も定めやすくなります。単純に「静止画広告より動画広告のほうがインパクトがありそう」といった抽象的な理由だけではうまくいかない恐れがあります。
なお、商品やサービスによっては静止画広告のほうが適している場合もあるため、目的に沿ったものを選びましょう。
出稿する場所をある程度絞る
動画広告の出稿を検討する際は、出稿場所ごとにかかる費用や投稿できる動画の種類を把握しておくことが大切です。動画広告は静止画の広告より費用や時間がかかるため、効果がないと痛手になる傾向があります。場合によっては、次の動画広告を作るのが難しくなるケースもあるでしょう。
例えば、主要ターゲットのペルソナを明確に設計できれば、活発に利用されているSNSに広告を集中させることで費用対効果を高められる可能性があります。ただし、幅広い層に訴えたい広告の場合は、アウトストリーム広告を利用するのも効果的です。
動画広告と相性の良い媒体
動画広告には相性の良い媒体が複数あります。一例を挙げると以下の3つです。
- YouTube
- SNS
- YDA・GDN
ここでは、各媒体の特徴や出稿できる広告の種類を紹介します。動画広告を作成する際は、ペルソナを設計しつつ、広告を出稿する最適な媒体も探しておきましょう。
YouTube
YouTubeは、幅広い年代が利用している動画共有サイトです。商品やサービスの認知度を高めたい場合から、特定の商品・サービスの訴求まで幅広い広告が出稿できます。YouTubeはインストリーム広告が主流であり、広告の長さは以下のとおりです。
- スキップ可能なインストリーム広告:12秒以上3分以内(YouTube推奨)
- スキップ不可のインストリーム広告:5秒以上15秒以内
なお、スキップ可能なインストリーム広告は12秒未満の広告も作成できますが、12秒未満の広告は視聴回数としてカウントされないため注意が必要です。
60秒以上の広告は長尺CMと呼ばれ、訴求力を高めたい場合に利用すると効果的です。その一方で、途中でスキップされる可能性が高まるデメリットもあります。YouTubeに広告出稿する場合、予算や動画の時間などを検討しておきましょう。
SNS
SNSは、プラットフォームごとにユーザーの年齢層や属性が分かれているのが特徴です。設計したペルソナへ効果的に訴求したい場合にSNSは適しています。広告が出稿できるSNSの種類と特徴を以下の表にまとめました。
SNS | 特徴 |
・30~50代のユーザーが利用している ・ユーザーの登録情報が細かくターゲットを絞りやすい | |
TikTok | ・10~20代のユーザーが多く利用している ・若い世代の認知を高めたい場合に適している |
X(旧:Twitter) | ・幅広い年代が利用している ・リポスト先のアクションには課金されないため広告費を抑えやすい |
・ユーザーの年齢層は幅広く、比率は女性ユーザーが多い ・女性に訴求したい商品やサービスに適している | |
LINE | ・幅広い年代が利用している ・年齢や居住地、ショッピング履歴など細かいターゲティング設定に対応している |
各SNSの特徴を把握した上で広告を出稿する場所を選びましょう。
YDA・GDN
YDA(Yahoo!ディスプレイ広告)とGDN(Googleディスプレイアドネットワーク)を利用すると、提携サイトやアプリなどで幅広く動画広告を配信できます。動画広告を出稿する媒体が増えるほど、幅広い層にアプローチが可能です。商品やサービス、ブランドの認知度を高めたい場合にYDA・GDNは適した媒体です。
その一方で、ペルソナに合せた配信ではないため、ターゲットが明確に決まっている場合は効果が薄くなる可能性があります。そのため、YDAやGDNでは商品やサービスなどの認知拡大を目的にし、認知が高まったら別の媒体でペルソナへの訴求を行う方法もあります。
なお、YDAとGDNを比較した場合、YDAの方がユーザーの年代が高いのが特徴です。また、GDNは子どもの有無や世帯年収といったデモグラフィックを設定できます。それぞれの特徴を把握した上で、出稿先を選びましょう。
動画広告の課金形態
動画広告を出稿する場合、課金形態も詳しく把握しておきたいものです。ここでは、以下3つの課金形態を解説します。
- CPV(Cost Per View)
- CPM(Cost Per Mille)
- CPC(Cost Per Click)
それぞれの特徴を把握し、適したものを選びましょう。
CPV(Cost Per View)
CPV(Cost Per View)は、動画広告の視聴回数によって掲載費用が変動する課金形態です。動画広告の中では最もスタンダードな課金形態であり、広告の視聴率やエンゲージメントを把握したい場合にも適しています。視聴回数にカウントされるタイミングは、メディアやプラットフォームによって異なります。
なお、CPVは一定時間以上の再生がないと再生回数にカウントされないのが一般的です。CPVを採用する場合、プラットフォームの課金が発生するタイミングを比較した上で自社に合ったものを選びましょう。
CPM(Cost Per Mille)
CPM(Cost Per Mille)は、インプレッション(表示)数に応じて掲載費用が課金される形式です。動画が視聴されなくても表示された時点で費用が発生します。したがって、ユーザーが広告された商品やサービスに関心を持っているかどうかはわかりません。
また、10人に1回ずつ広告が表示されても、1人に10回広告が表示されても同じ10インプレッションとカウントされます。そのため、商品やサービスの認知度を上げる目的で広告を出稿したい場合に適した課金形態です。
一方、ユーザーが商品やサービスに関心を持っているかなどを調査したい場合は、別の課金方法を検討しましょう。
CPC(Cost Per Click)
CPC(Cost Per Click)はクリック単価とも呼ばれ、広告がクリックされたタイミングで料金が発生します。動画広告が表示されたり再生されたりしただけでは料金はかかりません。そのため、広告の効果を確認したい場合や、コンバージョンを高めたい場合に適した課金形態だといえます。
CPCを利用して動画広告を出稿する場合、ユーザーがクリックしたくなるような広告を作成する必要があります。そのため、ほかの課金形態に比べると広告制作のコストが高くなるケースもあるでしょう。
まとめ
動画広告は静止画の広告と比べて、ユーザーに多くの情報を与えられるメリットがある一方、制作コストが高いといったデメリットもあります。また、動画広告を出稿すれば自動的に認知度が向上したり売上が高まったりするとは限りません。
自社の商品やサービスの宣伝に動画広告が適しているか、静止画広告に改善の余地はないかと検討した上で導入を検討しましょう。
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