近年、ショート動画と呼ばれる短尺動画の人気が高まっています。それにともない、企業の中にも集客効果を期待してショート動画を活用する事例が増えてきました。
本記事では、ショート動画をマーケティングに活用したい方や企業の認知度向上を図りたい方に向けて、ショート動画のマーケティング活用事例や成功のコツなどを解説しています。ショート動画マーケティングのメリット・デメリットも紹介しているので、併せてご覧ください。
ショート動画とは？
短尺動画（尺の短い動画）を「ショート動画」と呼びます。具体的な長さはプラットフォームによって異なりますが、数分以内に収まる動画を指す傾向にあります。
縦型で視聴できるタイプが一般的で、スマートフォンユーザーとの相性が良い動画コンテンツです。空いた時間で気軽に視聴できる上、倍速視聴も可能なため、タイムパフォーマンスの良いデジタルコンテンツとして人気を集めています。
ショート動画のプラットフォーム
ショート動画の代表的なプラットフォームとして、次の4つを紹介します。
- YouTube
- TikTok
- LINE
プラットフォームごとに特徴やメインユーザー層は異なるため、自社のメインターゲットと照らし合わせながらご覧ください。なお、各プラットフォームの年齢層や利用率は、総務省「令和5年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」を参考にしています。
YouTube
YouTubeでは、最長60秒の縦長ショート動画が投稿できます。YouTubeアプリを使えば、動画の撮影から投稿までスマートフォン1つで完結します。アプリにはサウンドやエフェクトの追加などさまざまな編集機能も搭載されています。
YouTubeを利用するメリットに利用者数の多さと年齢層の幅広さが挙げられます。YouTubeの全年代利用率は87.8%です。この数値は、動画配信サービスを主軸とするSNSの中でトップの利用率を誇ります。ショート動画をマーケティングに活用するなら、まずは利用率の多いYouTubeから参入を検討しましょう。
Instagramには「リール」と呼ばれるショート動画の配信機能がついています。ショート動画の尺は最長90秒です。Instagramの編集機能を利用すれば、動画編集ソフト無しで動画の制作・投稿が行えます。
Instagramの全年代利用率は56.1%、世代別の利用率は10代が72.9%、20代が78.8%です。同調査書で男女の全年代利用率を確認したところ、男性48.8%・女性63.6%との結果でした。若者や女性をターゲットにしている企業は、Instagramの積極的な活用を検討しましょう。
TikTok
TikTokは、ショート動画の配信専門として始まったサービスです。最初は短尺の動画のみでしたが、サービスの拡充にともない投稿できる尺の長さが増えました。現在は、TikTokのカメラツールで撮影可能な尺は最長10分、アップロード可能な尺は最長60分となっています。
TikTokの全年代利用率は32.5%と高くはないものの、10代の利用率は70.0%と高い結果が出ています。若い世代の新規顧客を開拓するなら、TikTokが狙い目です。
LINE
LINEでは、ショート動画サービス「LINE VOOM」が利用できます。LINE VOOMの投稿できる動画の尺は最長60秒までで、友だち追加せずに動画投稿者のフォローが可能です。いいねやコメントなどの機能もついているため、ユーザーとの相互コミュニケーションツールとしても役立ちます。
LINEの全年代利用率は94.9%にも昇ります。動画視聴以外の用途で利用するユーザーも含まれているため、LINE VOOM単独の利用率は明確にはなっていません。しかし、全体的な利用率の高さを考えれば検討する価値のあるプラットフォームといえるでしょう。
ショート動画をマーケティングに活用するメリット
ショート動画をマーケティングに活用すると、次のようなメリットがあります。
- 顧客・潜在顧客の獲得につながる
- 拡散される可能性がある
- コストパフォーマンスに優れている
ここでは、それぞれのメリットを具体的に解説します。
顧客・潜在顧客の獲得につながる
ショート動画は長尺の動画より短時間で視聴できる手軽さがあります。視聴者はおすすめ表示で興味のあるジャンルやテーマに的を絞ってショート動画の視聴が可能です。そのため、視聴者がおすすめから自社の運営チャンネルに辿り着く可能性があります。
おすすめから訪れる視聴者は、その企業が扱う製品やサービスに興味を持っていると考えられます。それにより、チャンネル登録や長尺動画の視聴など何らかの行動を取る可能性が高く、顧客・潜在顧客の獲得を期待できるでしょう。
拡散される可能性がある
ショート動画は、視聴者やファンに拡散される可能性があります。拡散されれば再生回数が増え、チャンネルに興味を持つユーザーも出てくるでしょう。
多くのユーザーにシェアされて注目を集めることで、企業の認知度やブランドイメージも高まります。ショート動画は手軽に視聴できる性質上、拡散も手軽です。この簡便さが、ショート動画の魅力ともいえます。
コストパフォーマンスに優れている
低コストで制作可能な点もショート動画をマーケティングで活用するメリットです。ショート動画は短時間で制作できます。また、スマートフォンで撮影した動画をプラットフォーム上で編集から投稿まで行えるため、高価な機材を必要としません。
仮に外注する場合であっても、短尺の動画なら長尺の動画より制作費は安価で済む場合が多いため、参入へのハードルは長尺動画より低いでしょう。
ショート動画をマーケティングに活用するデメリット
ここでは2点のデメリットを取り上げて解説します。ショート動画をマーケティングで活用する上で、多くのメリットがあるもののデメリットも潜んでいます。デメリットを事前に把握し、対応策を検討しておきましょう。
動画制作・マーケティングのスキルが求められる
ショート動画の制作には、企画や編集など一定のスキルが求められます。ショート動画の制作で求められるスキルの一例を挙げると次の通りです。
- 要点を短時間でまとめる力
- プラットフォームやスマートフォンアプリを用いた編集スキル
- エフェクトやBGMの選択などクリエイティブなスキル
また、企業のショート動画は制作すれば終わりではありません。制作後の検証・効果測定を行うマーケティング部門の人材が必要です。
外注すればこれらのデメリットは解消されるものの、動画制作スキルの蓄積が難しくなります。社内で人材を新たに募るか外注にするか、自社の現状や予算と照らし合わせて検討しましょう。
ユーザーとターゲット層が合わない場合もある
プラットフォームによって、利用しているユーザーの属性（性別・年齢など）は異なります。プラットフォームの選択を誤ると、プラットフォームのメインユーザー層と自社のターゲット層が合わず、思ったような効果を得られなくなります。
このようなリスクを回避するためには、各プラットフォームの特徴やユーザー層など入念なリサーチが不可欠です。より高いマーケティング効果を得るためにも、ショート動画を投稿するプラットフォームはよく検討しましょう。
ショート動画マーケティングに取り組んでいる企業事例
ショート動画をマーケティングに活用している企業の事例を、プラットフォーム別に3つ紹介します。
- YouTube｜トゥモローゲート株式会社
- Instagram｜富士通株式会社
- TikTok｜IBM
ショート動画をマーケティングに取り入れる際の参考にしてください。
YouTube｜トゥモローゲート株式会社
トゥモローゲートは、企業の経営コンサルティングや採用戦略など総合的なブランディングを行っている企業です。代表の西崎氏は自身のYouTubeチャンネルを用いて、社内の日常や企業経営に役立つ情報などを定期的に投稿しています。
トゥモローゲートのショート動画の特徴は、プレゼンのコツやマネジメントのポイントなど企業経営者の求めている情報が多い点にあります。企業経営者の目を意識したコンテンツづくりによりターゲットに近い層へのアプローチを図り、集客力の向上に成功しました。
動画に登場する方々が等身大の姿でありのままに話している点も、視聴者を引きつけている魅力の1つです。また、トゥモローゲートのショート動画には「これからどうなる？」と思わせるものやオチがついているものも多く、視聴者を飽きさせない工夫が凝らされています。
Instagram｜富士通株式会社
富士通は企業に向けて、システムインテグレーションやITコンサルティング、アウトソーシングなどのサービスを提供する企業です。
Instagramでは、富士通が開発した人工知能と水中ドローンを使った海洋環境保全活動の紹介など、富士通の技術や製品に関する情報を発信しています。動画では新製品や富士通が誇る技術とその活用方法を紹介し、企業のイメージ向上やユーザーの興味・関心を引いています。
富士通グローバルアカウントのリールは、企業経営や企業の問題解決の一助となる情報も豊富です。その一例に、AIによる需要予測（在庫の最適化・顧客満足度・コスト削減等）を活用した業務の効率化について解説しているリールが挙げられます。
また、事業ブランド「Fujitsu Uvance」のHealthy Livingビジョンが医療機関のデジタル面や患者さんのケアをサポートしていることを発信しています。
TikTok｜IBM
IBMは、コンピュータハードウェア・ソフトウェアやクラウドコンピューティング、AIなどの技術サービスを提供しているグローバル企業です。TikTokのショート動画では、社員へのインタビュー動画やデモ動画を配信しています。IBMが制作した動画の例は次の通りです。
【メインフレームサーバーの地震の揺れに対する耐久性の動画】
地震テストの様子をTikTokを通して見てもらい、大きな地震が来た際に倒れない耐久力をアピール
【IBMが開発した光時間領域反射計の仕組みや特徴の解説動画】
光ファイバーケーブルを測定する仕組みや使い方、メリットを実際に使用しながら解説し、企業に向けてPR
【AMRが工場ラインで稼働している様子の配信動画】
自動車業界にもたらすメリットや効果を伝えている
IBMではこのように、自社製品が実際に使われている様子を視覚的にわかりやすく伝えるためにTikTokを活用し、ユーザーの興味を引く工夫をしています。
成功に近づくショート動画制作のコツ
ここでは、マーケティングを成功させるために知っておきたいショート動画制作のコツを解説します。初めてショート動画を制作する方や成功のコツを知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
続きが見たくなる動画を作る
ショート動画を成功させるためには、まず「見てもらうこと」が大切です。視聴者にショート動画を最後まで見てもらうには、思わず続きが見たくなるような動画を制作する必要があります。続きが見たくなるような動画の例として、次のようなものが挙げられます。
- ストーリー性のある動画
- ビジュアル・エフェクト・音を駆使したインパクトのある動画
- トレンドを盛り込んだ動画
これらの要素は、動画の序盤に入れると効果的です。
定期的に投稿する
定期的な投稿もショート動画を成功に導くポイントです。動画を定期的に投稿し続ければ視聴者に認知されやすくなる上に、視聴者に役立つ情報が蓄積されたチャンネルへの成長も見込めます。
定期的な投稿の継続はチャンネル登録者数の増加やブランドイメージ向上などの効果をもたらし、企業の成長にもつながっていきます。投稿頻度は、週に1回以上から始めるのが無難です。品質を確保しつつ、無理のない範囲で定期的な投稿をするように心がけましょう。
自社のコンテンツに導線をつなぐ
ショート動画の視聴者を自社の長尺動画やECサイトに誘導できると、自社の製品・サービスをより理解してもらえます。ショート動画の概要欄にURLを貼って導線をつないでおけば、ショート動画で興味を持ったユーザーが移動してくれるでしょう。
自社の製品・サービスをより深く知ってもらうためにも、積極的に自社コンテンツへの導線をつないでおきましょう。
視聴完了率を高めやすいショート動画の長さは？
マーケティングに効果的なショート動画の長さは、一般的に15秒〜30秒といわれています。15秒より短いと伝えたい内容が入りきらず、30秒より長いと視聴者が飽きてしまう可能性があるためです。もし、30秒以上のショート動画を制作する場合は、ストーリー性を高くして内容に深みを持たせるようにしましょう。
まとめ
ショート動画マーケティングは、まずプラットフォームの特徴やユーザー層を理解することが大切です。その上でメリット・デメリットを把握すれば、より効果的なマーケティングが行えるでしょう。今回紹介した企業の事例や成功のコツも参考に、集客力の高いショート動画を制作してください。
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