USJをV字回復に導いた立役者、森岡毅氏のマーケティング戦略について知りたいと考えていませんか。なぜUSJは、わずかな期間で劇的な復活を遂げることができたのでしょうか。その裏側には、緻密に計算された森岡氏独自の戦略がありました。
この記事では、USJで実施されたマーケティング戦略の全体像から、具体的な成功事例、そして森岡氏の思考法までを分かりやすく解説します。森岡氏の「すごさ」の本質や、他の業界での成功事例も紹介するため、ビジネスに役立つヒントが見つかるはずです。
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USJを変えた森岡氏のマーケティング戦略とは
ターゲット再定義
森岡氏の戦略は、来場者のターゲットを根本から見直すことから始まりました。当時のUSJは、映画好きの若者が主な客層でした。しかし、森岡氏はより大きな市場に目を向けます。
それは人口が多く、何度もテーマパークを訪れる傾向にある「ファミリー層」です。この層を取り込むことで、パークの来場者数を大きく伸ばせると考えたのです。
- 従来のターゲット
- 関西圏在住の若者
- 映画ファン
- 再定義後のターゲット
- 日本全国のファミリー層(子供連れ)
- 映画に詳しくない人も含めた幅広い層
提供価値の再設計
ターゲットの変更に伴い、USJが提供する価値も大きく変わりました。これまでの「映画の世界を体験できる場所」という位置づけから、「世界最高のエンターテイメントを集めたセレクトショップ」へとコンセプトを転換します。
映画という枠に縛られず、ハリー・ポッターや人気アニメなど、人々が熱狂する最高のコンテンツを積極的に取り入れる方針を打ち出しました。多様な顧客の興味を引きつけ、誰もが楽しめるパークへと生まれ変わることを目指したのです。
変更前 | 変更後 |
---|---|
コンセプト | 映画のテーマパーク |
提供する体験 | 映画の世界観の追体験 |
訴求ポイント | 映画ファンに向けた魅力 |
体験×IP×季節波の統合
森岡氏の戦略では、個々のアトラクション(体験)、人気コンテンツ(IP)、そして季節ごとのイベント(季節波)を巧みに統合しました。例えばハロウィンの時期にはホラー系のコンテンツを集中させ、クリスマスには特別なショーを用意します。
強力なIPであるハリー・ポッターのエリアは、季節を問わず集客の核となりました。異なる要素を戦略的に組み合わせることで、一年を通して来場意欲を刺激し続ける仕組みを作り上げたのです。
- 体験(アトラクション)
既存アトラクションの価値を再発見する(例:バックドロップ) - IP(知的財産)
ハリー・ポッターなど、強力な集客力を持つコンテンツを導入 - 季節波(イベント)
ハロウィンやクリスマスなど、季節感を活かしたイベントで需要を創出
効果の俯瞰
森岡氏の戦略は、来場者数、客単価、リピート率という3つの重要な指標を同時にアップさせるメカニズムを構築しました。
まずは新しいターゲット層の獲得と強力なIPの導入で、来場者数が大きく増加します。次に魅力的なグッズやフード、有料の体験を提供することで、一人当たりの使う金額(客単価)が上昇しました。そして年間を通じて多様なイベントを展開することで、一度訪れた人が「また来たい」と感じるリピート率の向上に成功したのです。
この好循環が、USJの安定した成長を支える基盤となりました。
指標 | 向上させた要因 |
---|---|
来場者数 | ファミリー層へのターゲット拡大、強力なIP(ハリー・ポッターなど)の導入 |
客単価 | 限定グッズやフードの販売、エクスプレス・パスなどの有料サービス |
リピート率 | ハロウィン、クリスマスなどの季節イベント、期間限定のコラボイベント |
成功要因の骨子
USJのV字回復を支えた成功要因は、大きく3つの骨子にまとめられます。第一に、徹底した「消費者視点」です。作り手のこだわりではなく、消費者が本当に求めているものは何かを深く追求しました。
第二に、「明確なターゲティング」です。最も市場規模が大きく、勝てる可能性が高いファミリー層に狙いを定め、資源を集中させました。第三に、一度来たら終わりではない「リピート動線」の設計です。
- 消費者視点の徹底
顧客が何に価値を感じ、お金を払うのかを第一に考える - 明確なターゲティング
勝算の高い市場(ファミリー層)を見極め、集中的にアプローチする - リピート動線の設計
年間を通じてイベントを企画し、顧客が何度も訪れたくなる理由を作る
USJを復活させた戦略思考と意思決定フレーム
戦況分析→目的→目標→戦略→戦術のプロセス
森岡氏は、一貫したフレームワークに沿って戦略を組み立てました。はじめに「戦況分析」で市場や競合を徹底的に調べ、自社の置かれた状況を正確に把握します。次に、その分析に基づいて事業の進むべき方向性である「目的」を定めます。
目的を達成するために、具体的な数値である「目標(KPI)」を設定。そして、目標を達成するための大きな方針が「戦略」であり、戦略を実行するための具体的な行動計画が「戦術」です。この一連の流れが、意思決定のブレを防ぎ、組織全体が同じ方向を向く力となりました。
- 戦況分析
市場の大きさ、競合の強み・弱み、自社の現状などを客観的に把握する - 目的
事業として「何のために(Why)」それをやるのかという根本的な方向性を定める - 目標
来場者数や売上など、達成度を測れる具体的な数値(KPI)を設定する - 戦略
目標達成のために「何を(What)」やるかという大きな方針を決める - 戦術
戦略を「どのように(How)」実行するかの具体的な施策を計画する
市場規模・競合・需要期の見立て
戦況分析において、森岡氏は市場の全体像を正確に捉えることを重視しました。例えば当時のテーマパーク市場で最も大きな割合を占めていたのは、実はファミリー層でした。この事実から、USJが成長するためにはファミリー層の獲得が不可欠であると判断したのです。
また競合である東京ディズニーリゾートとの違いを明確にし、USJならではの強みで勝負できる領域を探しました。需要の波を分析し、閑散期をなくすための施策を考える上でも、こうした前提の置き方が全ての基本となりました。
目標設計
目的と戦略が決まると、次に具体的な「目標」を設定します。森岡氏は、最終的なゴールである売上や利益を達成するために、それを構成する要素を細かく分解しました。例えば「来場者数」「客単価」「リピート率」といった中間目標(KPI)です。
さらに来場者数も「ファミリー層」「若者」「シニア層」といった構成比に分け、それぞれに目標値を設定します。目標を細分化することで、各施策がどの目標に貢献するのかが明確になり、進捗管理や効果測定がしやすくなるのです。
資源配分と優先順位
森岡氏のすごさは、限られた予算や人材といった「資源」を、最も効果の高い場所に集中させる点にあります。全ての課題に手をつけるのではなく、「勝てる土俵」を慎重に選び、そこに全力を注ぐのです。
USJでは、当時最も大きな投資対効果が見込める「ハリー・ポッター」エリアの建設に大きな予算を配分しました。この意思決定は、市場分析に基づき、最も勝算の高い戦いに資源を集中するという明確な基準があったからこそ可能だったのです。
- 優先順位付けの基準
- 投資した資源に対して、最も大きな成果(リターン)が期待できるか
- 市場の成長性や規模が大きいか
- 競合に対して優位性を築けるか
USJの主要施策マップ
年間需給設計
森岡氏が取り組んだ大きな課題の一つが、一年間の来場者数の波をならすことでした。テーマパークは、休日や夏休みなどの「ピーク」と、平日や冬などの「オフ」の時期で、需要の差が激しいビジネスです。
そこでオフシーズンに魅力的なイベントを集中させることで、需要を創出しました。例えば秋には「ハロウィン・ホラー・ナイト」、冬にはクリスマスイベントを強化し、一年を通して集客の山を作る設計をしたのです。パーク全体の稼働率向上につながり、収益の安定化に成功しました。
時期 | 主なイベント | 目的 |
---|---|---|
春 | イースター、クールジャパン | ファミリー層や若者層の集客 |
夏 | ワンピース・プレミアショー、ウォーターパレード | 夏休み需要の最大化 |
秋 | ハロウィン・ホラー・ナイト | 閑散期の需要創出、若者・大人層の集客 |
冬 | クリスマスイベント、カウントダウン | 年末年始の需要最大化 |
価格政策
価格設定も、需要をコントロールするための重要な手段でした。森岡氏は、来場者が価格に対してどの程度受け入れられるか(値上げ耐性)を慎重に見極めながら、段階的にチケット価格を引き上げました。一方で、混雑が予想される日には価格を高く、空いている日には安く設定する変動価格制を導入し、混雑の分散を図ります。
また「年間パス」はロイヤルティの高い顧客を確保し、閑散期の集客を支える重要な役割を担いました。価格を単なる売上を上げる手段ではなく、顧客体験を向上させるための戦略として活用したのです。
プロモーション導線
USJのプロモーションは、人々の感情を動かし、来場へと導く一連の流れとして設計されています。はじめにテレビCMなどで大々的に告知を行い、イベントやアトラクションへの期待感を高め、「話題化」させます。
次にウェブサイトやSNSで詳細な情報を提供し、具体的な「検討」を促します。そして期間限定の特典やイベントで「今行かなければ」という気持ちを後押しし、「来場」に繋げるのです。それぞれのメディアが持つ役割を明確にし、連携させることで、効果的な集客を実現しました。
体験デザインとIP活用の原則
森岡氏の戦略において、アトラクションの体験デザインとIP(知的財産)の活用には明確な原則がありました。それはIPが持つ独自の世界観を徹底的に守り、ファンを裏切らないクオリティを追求することです。
例えば「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」では、原作者が描いた世界を忠実に再現することにこだわりました。中途半端な模倣ではなく、本物と見紛うほどの体験を提供することで、顧客の深い感動を引き出し、強いブランドロイヤルティを築き上げたのです。
- IP活用の原則
- IPの世界観を絶対に壊さない
- ファンの期待を超えるクオリティを追求する
- IPの力を最大限に引き出すための投資を惜しまない
アトラクション事の具体事例
ユニバーサル・ワンダーランド
このエリアは、森岡氏が最重要ターゲットと定めたファミリー層を獲得するための中心的な施策でした。スヌーピーやハローキティといった、子供たちに人気のキャラクターを集結させ、親子で安心して楽しめる空間を創出しました。
小さな子供でも乗れるアトラクションや、キャラクターと触れ合えるグリーティングを充実させたのです。結果として、これまでUSJに足を運ばなかった多くのファミリー層を呼び込むことに成功し、V字回復の大きな原動力となりました。
- ターゲット:未就学児から小学生までの子供を持つファミリー層
- 洞察:親は子供が安全に、かつ心から楽しめる場所を求めている
- 打ち手:子供に人気のキャラクターを集めたエリアの創設、屋内施設や低年齢向けアトラクションの充実
- 成果:ファミリー層の来場者数が大幅に増加
- 転用点:最も重要な顧客層に的を絞り、そのニーズを徹底的に満たす空間やサービスを提供する
ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド~バックドロップ~
この施策は、すでにある資産の価値を再定義し、新たな需要を生み出した好例です。具体的には、人気ジェットコースター「ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド」を、期間限定で後ろ向きに走行させたのです。
新しいアトラクションを建設するには莫大な費用と時間がかかりますが、この方法は比較的少ない投資で、全く新しいスリルと話題性を生み出すことに成功します。顧客に「知っているけど新しい」という驚きを提供し、既存のアトラクションを再び活性化させる見事な一手でした。
- ターゲット:スリルを求める若者、リピーター
- 洞察:人は慣れ親しんだものでも、視点が変わると全く新しい体験として楽しめる
- 打ち手:既存のジェットコースターを後ろ向きに走らせる「バックドロップ」を期間限定で導入
- 成果:長時間の待ち時間が発生するほどの大人気となり、閑散期の集客に貢献
- 転用点:既存の商品やサービスに少しの工夫を加え、新しい価値として提供する
ハロウィン・ホラー・ナイト
このイベントは、秋という閑散期の需要を掘り起こすために戦略的に強化されました。昼間は子供も楽しめるパレードを行い、夜になるとパークの雰囲気が一変。大量のゾンビが徘徊する本格的なホラー体験を提供するという二面性を持たせたのです。
ファミリー層から絶叫系が好きな若者や大人まで、幅広い層が楽しめるイベントへと進化しました。今ではUSJの秋の風物詩として定着し、一年で最も集客力のあるイベントの一つにまで成長しています。
- ターゲット:ホラーやスリルが好きな若者・大人層
- 洞察:非日常的な恐怖体験には、強い中毒性と口コミを生む力がある
- 打ち手:パーク内に大量のゾンビを放ち、複数のホラーアトラクションを同時展開する
- 成果:秋シーズンの集客記録を毎年更新するほどの人気イベントに成長
- 転用点:季節の特性を活かし、特定のターゲットに深く刺さる尖ったコンセプトのイベントを企画する
ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター
この大型投資は、USJのブランド価値を決定的に高めた施策です。世界的に絶大な人気を誇る「ハリー・ポッター」の壮大な世界観を、圧倒的なクオリティで再現しました。単なるアトラクションの集合体ではなく、エリア全体で物語への没入感を体験できる設計が特徴です。
この強力なIPの導入により、日本国内だけでなく、海外からも多くの観光客を呼び込むことに成功しました。USJが「世界最高のエンターテイメントブランド」へと飛躍する上で、極めて重要な役割を果たしたのです。
- ターゲット:全世界のハリー・ポッターファン、ファミリー層、海外観光客
- 洞察:ファンは物語の世界に心から没入できる「本物」の体験を熱望している
- 打ち手:莫大な投資を行い、映画の世界を忠実に再現したエリアを建設
- 成果:来場者数が飛躍的に増加し、国内外でのブランドイメージがアップ
- 転用点:多くの人が熱狂する強力なIPと提携し、その世界観を徹底的に再現することで爆発的な集客力を生む
ワンピース・プレミアショー
このショーは、日本の人気アニメという強力なIPを活用し、夏の集客を最大化した事例です。夏休み期間に合わせ、毎年内容を新たにして開催される期間限定のライブショーは、多くのファンを惹きつけました。
中でも、リピーターを飽きさせないストーリー展開や、ファン心理をくすぐる演出が特徴です。期間限定という希少性が「今行かなければ」という強い来場動機を生み出し、夏のUSJの定番イベントとして高い人気を誇っています。
- ターゲット:人気アニメ「ワンピース」のファン、夏休み中の若者・ファミリー層
- 洞察:ファンは好きなキャラクターが登場する、その年だけの特別なライブ体験を求めている
- 打ち手:夏休み期間に限定した、オリジナルのストーリーによるライブ・エンターテイメント・ショーの開催
- 成果:満足度が高く、夏の集客の柱として定着
- 転用点:期間限定のイベントで希少性を演出し、特定のファン層の強い来場意欲を喚起する
USJをV字回復させた森岡氏とは
森岡氏の何がすごいのか
森岡毅氏のすごさは、徹底した「数学的思考」と、人間心理への深い「消費者理解」を両立させている点にあります。市場データを冷静に分析し、成功確率の高い戦略を論理的に導き出す能力。
それと同時に、人々が何に心を動かされ、何にお金を払いたいと感じるのかを直感的に見抜く力。この左脳的な思考と右脳的な感性を高いレベルで融合させ、誰もが納得し、熱狂するアイデアを生み出せるのが、森岡氏が「すご腕マーケター」と呼ばれる理由です。
- 数学的思考(左脳):市場データや確率論に基づき、客観的で論理的な戦略を構築する
- 消費者理解(右脳):人間の感情や欲求を深く洞察し、心に響くアイデアを発想する
- 融合による成果:USJのV字回復など、多くの事業で驚異的な成果を出す
経歴
森岡毅氏は、大学卒業後、世界的な消費財メーカーであるP&Gに入社しました。そこでマーケターとしての基礎を徹底的に学び、数々のブランドの成長に貢献します。その後、業績不振にあえいでいたUSJのCMO(最高マーケティング責任者)に就任。
本記事で紹介したような大胆な改革を次々と実行し、わずか数年で劇的なV字回復を成し遂げました。USJ退社後は、マーケティング精鋭集団「株式会社刀」を設立し、様々な企業の成長を支援しています。
年代 | 主な経歴 |
---|---|
1996年 | 神戸大学経営学部を卒業後、P&Gに入社 |
2010年 | USJ(ユー・エス・ジェイ)にCMOとして入社 |
2017年 | 株式会社刀を設立、代表取締役CEOに就任 |
USJでの役割
森岡氏がUSJで担った役割は、CMO(Chief Marketing Officer)、つまりマーケティングの最高責任者でした。彼の仕事は、単に広告宣伝を考えるだけではありません。誰に、何を、どのように売るかという事業戦略の根幹から、アトラクションの企画開発、価格設定、レストランのメニュー開発、さらには人材育成まで、集客に関わる全ての領域を統括しました。
強いリーダーシップで組織を動かし、全部門がマーケティング視点を持つように改革を進めたことが、会社全体の変革に繋がったのです。
- 主な役割
- 事業戦略の立案と実行
- アトラクションやイベントの企画開発
- 広告宣伝、プロモーション戦略の策定
- チケット価格や年間パスの設計
- 組織改革と人材育成
森岡氏がマーケティング戦略を手がけた他業界の関連事例
丸亀製麺
森岡氏率いる株式会社刀は、讃岐うどん専門店「丸亀製麺」のブランド再生にも携わりました。刀が注目したのは、店内で粉からうどんを作る「手づくり・できたて」という圧倒的な強みです。この価値が顧客に十分に伝わっていないと考え、その魅力を改めて伝えるプロモーションを展開しました。
またテイクアウト商品の開発にも注力し、コロナ禍における新たな需要の開拓にも成功しています。ブランドの原点に立ち返り、その本質的な価値を磨き直すというアプローチが見られます。
- 戦略のポイント
- ブランドの核となる強み(店内製麺)の再発見と訴求
- 時代に合わせた提供方法(テイクアウト)の開発
- 顧客体験価値の向上
西武園ゆうえんち
老朽化が進んでいた「西武園ゆうえんち」のリニューアルも、森岡氏が手掛けた代表的な事例です。新しいアトラクションを追加するのではなく、1960年代の日本の懐かしい商店街を再現するというユニークなコンセプトを打ち出しました。
来場者は、まるで昭和の時代にタイムスリップしたかのような没入感を味わえます。これは、人々が心の中に持つ「懐かしさ」という強い感情に訴えかける戦略です。USJで培った、世界観への没入感を重視する手法がここでも活かされています。
- 戦略のポイント
- 「懐かしさ」という感情に訴えかけるコンセプト設定
- 徹底した世界観の作り込みによる没入体験の提供
- 既存資産を活かしたリニューアル
ネスタリゾート神戸
大自然の中での冒険をテーマにした大型リゾート「ネスタリゾート神戸」も、刀の支援によって大きく生まれ変わりました。単なるアクティビティの寄せ集めではなく、「本能が揺さぶられる興奮体験」という明確なコンセプトを掲げ、全ての体験に一貫性を持たせたのです。
CMなどのプロモーションでも、その興奮や爽快感をダイナミックに伝え、人々の「行ってみたい」という気持ちを強く刺激しました。体験の価値を言語化し、それを効果的に伝えることで、ブランドイメージを刷新した事例です。
- 戦略のポイント
- 体験価値を凝縮したコンセプト(本能を揺さぶる)の策定
- 感情に訴えかけるプロモーション展開
- ブランドイメージの再構築
業界別の適用ポイント
森岡氏のマーケティング手法は、特定の業界だけでなく、様々なビジネスに応用できます。小売業であれば、単に商品を並べるのではなく、顧客が「買う理由」となる体験や価値を提供することが重要です。
外食業では、味はもちろんのこと、店の雰囲気や接客を含めた「食事体験全体」をデザインする視点が求められます。レジャー産業では、人々が日常を忘れて没入できる「非日常的な世界観」をいかに作り込むかが重要です。
業界 | 適用ポイント |
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小売業 | 商品の機能的価値だけでなく、購入体験やブランドストーリーといった情緒的価値を高める |
外食業 | メニューの魅力に加えて、店舗のコンセプトや接客など、食事全体の体験価値を設計する |
レジャー業 | 顧客が日常を忘れられるような、徹底した世界観と没入感のある体験を提供する |
まとめ
USJを奇跡の復活へと導いた森岡毅氏のマーケティング戦略は、徹底した消費者理解と、数学的な思考に基づいた緻密な計算の上に成り立っています。ターゲットを再定義し、提供価値を磨き上げ、一年を通じて来場したくなる仕組みを作り上げたことで、USJは多くの人々から愛される場所へと生まれ変わりました。
その思考法は、USJだけでなく、丸亀製麺や西武園ゆうえんちなど、様々な業界で成果を上げています。森岡氏の戦略から学べることは、自社の本当の強みを見つけ、顧客が真に求める価値を提供することの重要性です。
マーケティング戦略に関してお悩みなら、株式会社FlyEdgeにご相談ください。3,000回以上のコンサルティングで構築した、中小企業の勝ちパターンを活用してあなたのサービスを届けるお手伝いをいたします。