インターネットを活用したマーケティングを展開する企業が増えています。しかし、ネットやSNSの情報でよいといわれる手段を手当たり次第に試しても、思うような成果が得られず、頭を抱えている方も多いのではないでしょうか?
施策を実行する前に必ず行うべきなのが、まずWeb戦略を立てることです。そこで活用したいのが、段階に適した「フレームワーク」です。枠組みに当てはめながら分析することで、問題が整理され戦略立案や問題解決に役立ちます。
この記事では、段階的に活用できるフレームワークと実際にWeb戦略を立てる流れを紹介します。Web戦略におけるフレームワークの目的や活用方法がわかり、すぐに実践できる内容となっているため、ぜひ参考にしてください。
Web戦略とは?
Web戦略とは、Web上においていかにして競合他社よりも集客数を増やすか、ビジネスにおいて成果を出すか、長期的な目標とプランを設定することです。あらかじめWeb戦略を策定することで、Webマーケティングの手法を正しく選択・構築でき、かつ目標達成に向け効率的・効果的に実行できます。
Web戦略は、限りある資源のなかでいかに効率的に成果を得られるかが鍵です。このあとに紹介するフレームワークを活用しながら、多角的に分析を重ねていきます。分析に分析を重ねることで、初めて問題の本質が見え、最適なアクションが選定できるようになるでしょう。
あらゆる情報が手に入る現在では、Webマーケティングの手法は多種多様です。そのようななかで、自社に適したマーケティング手法を見極めるためにも、Web戦略は重要視されています。
Web戦略を立てる際に必要なフレームワーク
Web戦略を立てるためには、段階に応じて戦略の基盤となるフレームワークを使い分けるのがポイントです。Web戦略を立てる4つの段階ごとに、役立つフレームワークは異なります。
Web戦略を立てる4つの段階 | フレームワーク名 |
現状把握に役立つフレームワーク | ・MECE ・3C分析 ・SWOT分析 ・PEST分析 |
顧客理解に役立つフレームワーク | ・ペルソナ ・カスタマージャーニーマップ |
戦略立案に役立つフレームワーク | ・4P分析 ・4C分析 ・STP分析 |
施策実行に役立つフレームワーク | ・KPIツリー ・PDCA |
それぞれのフレームワークの目的と効果を紹介していきます。
現状把握に役立つフレームワーク4つ
Web戦略を立てるときにまず行うのは自社の現状分析です。現状分析に便利なフレームワークにはMECE、3C分析、SWOT分析、PEST分析の4つがあります。それぞれのフレームワークの目的を確認しましょう。
①MECE
MECEとは「モレなく、ダブりなく」という意味や状態を示す論理的思考の概念です。Web戦略を練るときに、ピックアップした要素の漏れや重複を回避するために活用します。一見複雑そうに見える問題も、MECEを活用することで問題の全体像を把握でき、シンプルに整理できるのが特徴です。
Web戦略では、消費者の購買行動(注意・興味・欲求・記憶・行動)や事業活動(仕入れ・製造・物流・販売・サポート)の分析もMECEのフレームワークに当てはまります。次に解説する3C分析やSWAT分析もMECEの一つです。
②3C分析
3C分析とは、事業の成功要因を発見するためのフレームワークです。以下の3つの要因の頭文字を取って、3Cといいます。
- Customer(市場)
- Competior(競合)
- Company(自社)
3C分析では、市場や競合を分析することで事業を取り巻く環境が分析できるうえ、自社の強みや弱みなど差別化できるポイントを発見できます。狙う市場において、自社の競争力を高めるためにも欠かせない工程です。
③SWOT分析
SWOT分析とは、Strengths(強み)・Weaknesses(弱み)・Opportunities(機会)・Threats(脅威)の頭文字を取ったものです。
内部環境 | Strength(強み) | 自社(商品)の強み |
Weakness(弱み) | 自社(商品)の弱点 | |
外部環境 | Opportunity(機会) | 社会や市場の変化で受けるよい影響 |
Threat(脅威) | 社会や市場の変化で受ける悪い影響 |
SWOT分析をすると、自社が置かれている現状を客観視できます。Webで事業を展開するにあたっての課題や将来に起こりうるリスクを発見でき、Web戦略や策定の意思決定にも役立つフレームワークです。
PEST分析
PEST分析は、自社ではコントロールできない外部要因を、以下の4つに分けて分析するフレームワークです。
- 政治(Politics)
- 経済(Economy)
- 社会(Society)
- 技術(Technology)
これら4つの外部環境が現在・未来にどのような影響を与えるのか分析します。事業の参入や撤退、トレンドに沿ったWeb戦略の方向性を判断するのに役立つフレームワークです。
顧客理解に役立つフレームワーク2つ
ターゲットとする顧客を理解する上で役に立つフレームワークは、ペルソナ設計とカスタマージャーニーマップの2種類です。
ペルソナ設計
顧客のイメージをより具体化するために行うのがペルソナ設計です。自社の商品やサービスの利用が想定される架空の顧客像を設計しておくと、顧客が何を考えどのように行動するのかイメージしやすくなり、顧客体験の向上に反映できます。
加えて、共通の顧客像をもっておくと企業内で業務にブレが生じるのを抑えられ、作業効率を高めるためにも有効です。
ペルソナを構成する際の一例は以下のとおりです。
カテゴリ | 具体的な設定内容 |
個人情報 | 名前、年齢、性別、収入、学歴、家族構成、居住地 |
個人の資質など | 性格、趣味、余暇の過ごし方、人間関係 |
行動範囲 | 買い物をする場所 |
Webの利用状況 | 利用しているSNS・よく閲覧するWebサイトやアプリ、 使用しているPCやスマートフォン・タブレット |
情報源 | Web、TV、新聞・雑誌 |
仕事の目標や夢 | 目標・課題・今後挑戦したいこと |
よりリアリティのある人物像が描けていることがポイントです。
カスタマージャーニーマップ
ペルソナが自社商品と出会い、購入に至るまでの過程を推測するのが「カスタマージャーニーマップ」です。商品を購入するまでの思考・感情・行動の変化をプロセスごとに可視化すると、最適なアプローチ方法が見えてきます。
以下、カスタマージャーニーマップの完成例です。
画像引用:ゼロから学べる、カスタマージャーニーマップとは|図解を用いて解説
作成時には販売者目線とならないように注意しましょう。販売者目線となると、顧客の理想行動パターンを反映してしまいやすくなります。常に顧客目線に立つことを重視し、リアリティを追求しましょう。
戦略立案に役立つフレームワーク3つ
自社の現状を把握し、アプローチしていきたい顧客のイメージ像を設定できたあとは、Webマーケティングの施策を始めるための分析指標を準備しましょう。戦略立案に役立つフレームワークは、4P分析、4C分析、STP分析の3種類です。
4P分析
4P分析は4つの視点から製品やサービスを分析し、強みや訴求ポイントをマーケティング企画に活かすためのフレームワークです。
4Pとは以下の頭文字をとったものです。
- Product(製品・サービス):どのような価値を市場に提供するのか
- Price(価格):いくらで提供するのか
- Place(販売する場所・提供方法):どのように提供するのか
- Promotion(販促活動):どのように認知してもらい購入してもらうのか
それぞれの要素は、独立した存在ではなく密接に関係しています。例えば高級な商品を提供したいのにもかかわらず、マーケットを大規模に設定すれば、価値は下がり値崩れが起ります。さらに4P分析する上では、ターゲットとの適合性も大切なポイントです。
4C分析
4P分析が売り手目線で分析を行うフレームワークであり、4C分析は顧客目線で考えるフレームワークです。
4Cとは、以下4つの要素の頭文字を取ったものです。
- Customer Value(価値):顧客は商品やサービスにどのような価値を抱くか
- Cost(コスト):いくらで購入するか
- Convenience(利便性):購入するまでの過程はスムーズか
- Communication(コミュニケーション):コミュニケーションを取りやすいツールは何か
4P分析と4C分析はそれぞれ単独で行わず、双方の適合性を踏まえて分析します。これらは、顧客の購買行動につなげる戦略の組み合わせ「マーケティングミックス」として活用していきます。
STP分析
STP分析は、マーケティング戦略を策定するにあたり、市場における商品やサービスの立ち位置を明確化するフレームワークです。
STPとは以下3つの要素の頭文字です。
- Segmentation(セグメンテーション):市場を細分化する
- Targeting(ターゲティング):細分化した市場からターゲットとなる市場を選ぶ
- Positioning(ポジショニング):自社の立ち位置を決定する
STP分析で自社の立ち位置を発見できたあとでも、常に市場の成長率を加味し、マーケティングの展開方法を工夫していく必要があります。
施策実行に役立つフレームワーク2つ
これまでに紹介したフレームワークを活用し、戦略立案まで至ったとしても、まだゴールではありません。施策を実行したとしても必ず成功するとは限らず、常にトライ&エラーを繰り返していかなければならないからです。
この施策実行の段階で役立つフレームワークが、KPIツリーとPDCAです。
KPIツリー
KPIとは、Key Performance Indicatorの頭文字を取ったものです。最終目標を達成するために、必要な要素を定量的に落とし込んだ指標を指します。KPIを設定しておけば、目標達成に向け、やるべきタスクが明確化します。
KPIツリーとは、達成に向け必要な要素をロジックツリー状で整理したものです。例えば、年間の売上目標を〇〇万円と決めたとき、売上を構成する要因を細分化し関係性を可視化していきます。
以下がKPIツリーの一例です。
画像引用:SCALE CLOUD|KPIツリーの具体的な作り方や作成のメリットデメリットを解説
上記のように目標達成に向けた要素と関係性を可視化できれば、達成するためのアクションが一目瞭然です。施策の効果検証もしやすくなります。
PDCA
PDCAは、仮説と検証を繰り返し、業務の品質や効率を高めるためのフレームワークです。Plan(計画)→Do(実行)→Check(チェック)→Action(改善)の4つのサイクルを繰り返し、継続的な改善を図ります。
Webマーケティングにおいて、一朝一夕で成果を上げるのは難しいといえます。そのため、PDCAを繰り返しながら、少しずつ効果のあるWebマーケティング施策を模索していく気持ちが大切です。
Web戦略の立て方は4段階に分けて考えよう
Web戦略は、自社の現状を把握してから施策実行まで4つの段階に分けて考えると効果的です。
- 現状把握
- 顧客理解
- 戦略立案
- 目標設定・施策実行
それぞれの段階を、上記で紹介したフレームワークを交えながら一つずつ解説します。
段階1.現状把握
Webマーケティングを成功させるには、何より現状の把握が大切です。自社の強みを発見し、他社との差別化を図るためです。市場環境や競合他社、顧客動向などの外部環境と、現有リソースであるヒト・モノ・カネや過去の実績などの内部環境の双方から分析を行います。
ここで役立つのが、MECE・3C分析・SWOT分析・PEST分析の4つのフレームワークです。それぞれのフレームワークを併用することで、社内と外部の状況を漏れなく把握できます。
現状をきちんと把握できれば、効果的でかつ実現性の高い戦略が立てやすくなります。
段階2.顧客理解
現状や課題が見えてきたら、続いてターゲットとする顧客に対する理解を深めましょう。顧客が抱える課題を明確にし、商品やサービスを通じて解消したいことや欲求など顧客心理が理解できれば訴求ポイントが見つかります。
この段階で活用するフレームワークは、ペルソナ設計とカスタマージャーニーマップの2種類です。より深く顧客心理を理解するためには、実際のユーザーやターゲット層と接点を持つ機会を増やすのもおすすめです。以下、顧客の心理を理解するための手法の一例です。
- 問い合わせ内容を集約する
- ソーシャルリスニング
- アンケートを実施する
- 商品やサービスのモニターを募集する
すでに商品・サービスを提供しているならば、顧客ヒアリングもおすすめです。なかでもお得意様や優良顧客にヒアリングできれば、ターゲットの心情をより深く理解できるでしょう。
段階3.戦略立案
Web戦略と聞くと難しい表現ですが、シンプルに言い換えると「誰に×何を×どのように」して目的を達成するか考える枠組みのことです。「誰」はターゲット、「何を」は商品やサービスが提供する価値、そして「どのように」が戦略立案です。
4P分析・4C分析・STP分析の3種類のフレームワークを併用し、顧客が数ある商品のなかから自社の商品を選び、購入からリピートに至るまでのプロセス全般を考えます。
段階4.目標設定・施策実行
実行に移す前に最終ゴールと段階的な目標数値を決め、達成に向けた具体的なアクションに落とし込んでいきましょう。
そこで土台となるフレームワークがKPIツリーです。目標達成に向けた要因を可視化し、具体的なアクションに落とし込みます。KPIツリーの作成ポイントは、売上を達成するために必要な要因を数値化し目標を設置することです。
整理した情報を元に、最後に施策の実行です。具体的な施策としては、メディア運営によるSEO施策やSNSマーケティング、短期間で成果が望めるWeb広告などがあります。
ただし、実行してすぐに成果を得ることはありません。常にPDCAサイクルで分析・検証・実行を繰り返し、長期的な運用を視野にいれておきましょう。
まとめ
Webマーケティングにはさまざまな施策があり、どれから手を付けたらよいか迷う方も多いかもしれません。最短で成果を得るには、施策を実施する前に自社の立ち位置や顧客心理をいかに分析でき、目標達成に向けた最善のルートを発見できるかが鍵になります。まずは本記事で紹介したフレームワークを活用し、問題の本質をとらえることから始めてみましょう。
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