
今回のテーマは「『うちは中小企業で資金もないし、あれもこれもできていない……』。”できていない”ことよりも、それを認めない・放置することが問題!」というテーマでお話しいただきたいと思います。



はい、よろしくお願いします。
「できていないこと」を放置するとどうなる?



「できていないことよりも、そのことを認めない・放置することが問題」ということですが、大澤さんがご相談いただく中で、例えばどういうことが多いのでしょうか?



まず「できていない」に関しては、
「広告を出してみたいけどできていない」
「サービスを改善しなければいけないのはわかっているんだけどできていない」
「お客様の声を取りたいけど取れていない」
「SNSの配信をやろうと思っているんだけどできていない」
というものが非常に多いです。



とはいえ、これに気づけている会社はばっちりなんですよ。



中小企業が「できていないこと」を放置すると何が問題なのか?中小企業であるため、予算が大量にあるような中堅大手以上の会社と比べるといろいろ準備も整っていないし、オペレーションもできていないことも多いので、できていないことがあって当たり前なんです。



そのなかでも、それが「できていない」ことを自覚して認めているということは、素晴らしいことなんです。



一方で、いろいろできていないのにも関わらずそれを認めなかったり、できていないのはわかっているのに認めず放置する、諦めているのは問題と言えます。


「できていない」ことを認識できる企業と、認識できない企業の違い



「できていない」ことに気付けているのは素晴らしいということでしたが、もし、できていないことを、認めていない・気づいていない・放置してしまう・勝手に諦めてしまっている会社とお仕事をする場合には、どのようにお話をするんですか?



これは本当はちゃんとできていないし、やっていないにもかかわらず、そもそもそれを認められていないことに、まず気づいてもらわないといけないんです。



そのために、
「これは今どうなっていますか?」
「本当にできていますか?」
「御社にとって、できているってどういう状態のことですか?」
などの基本質問から入ります。



その話をしていくなかで、まだやれていないこととか、気づきが少しずつ出てきます。
最終的に「今の状態は『できている』基準には至っていないですよね?」という話をすると、徐々に気づいてもらえることが多いです。



まずは質問をして、話を聞く中で現状を一緒に把握することが大事ということですね。



そのとおりです。まず現状を正しく認識して、把握をすることが大事です。



どういう状況だと気づきづらいとか、認めづらい・放置してしまいがちだなどの具体例はありますか?
「うまくいっているから大丈夫!」思い込みが生む危険な状況



そういうことなんですね。



他にも、短期的な数字で広告をかけ始めて、それだけでうまくいったので「集客はできているので大丈夫です!」という会社もいらっしゃいますが、それは最初の訴求がうまくいっているだけの場合もあるんです。



もちろん、広告も同じものをずっと出しているとお客さんは飽きてきます。問い合わせをくださる方も最初は反応してくれますけれど、その方をどんどん除外していって、問い合わせをくださらない方に対してもどんどん配信していって、またそこから取っていこうとするので、同じやり方をしているとパイはどんどん狭まっていくんです。



最終的に同じものをずっとやっても、結局的に効果が落ちていくだけになります。
それなのに、短期的にうまくいったり数値が上がったりしている場合は「うまくいっているから大丈夫」「新しいことはやらなくても今のまま続けていくつもりだから大丈夫」と勘違いしてしまいます。
なぜ改善が後回しになるのか?



うまくいっていると問題ないと思ってしまいますね。



よくあるのは、何か特定の施策がうまくいっている時は「できていない」ことに気づきにくいです。
その施策だけがうまくいっていたり、短期的な数字が上がったりした時は、「できていないこと」を認められないうえに、放置してしまいがちになります。



例えば、紹介営業がうまくいっているときは「うちは集客できている」と言うんです。冷静になるとわかりますが「紹介」というのは、出るときもあれば出ないときもあります。



紹介というのは、非常にコストパフォーマンスの良い集客方法であるのは事実なんですが、基本的に自分たちでコントロールが効かないものになります。



つまり、短期的に特定の施策や紹介営業だけで結果が出ていると、集客がうまくいっていると勘違いしやすくなります。そのため、話をする中で「本当にその一つの集客方法だけでいいんでしたっけ?」と質問することがあります。



あとは、例えば事業を始めたてのタイミングでの初回キャンペーンのような施策で、短期的な数値が上がっているときもそうです。



一時的に店舗に行列ができている状態になった時は「今お客さんがたくさん来ているので大丈夫です」「たくさん集客できるので大丈夫です」と勘違いしやすくなります。



とはいえ、短期的に一気に数字が伸び上がるものは、逆に短期的に数字が落ちやすいものでもあるんです。



例えば、集客で有名な方法で「プロダクトローンチ」という、短期間で売り上げを作ることに非常に特化しているものがあります。新しいサービスの提供などで、お客さんの期待感を少しずつ醸成していってそれを一気に爆発させるやり方です。



初めてのサービスでやっていくと、確かに一定の数字は出ますが、それを同じお客さんに対して何度もプロジェクトのプロダクトローンチを仕掛けていくと、お客さんも慣れてきちゃうので、反応率が落ちるんですよ。



一つの施策だけでうまくいっていると、勘違いしてしまいやすいということですね。



そうですね。
これがうまくいっているから大丈夫!と思ってしまう傾向にあります。一つというか特定の施策という感じです。中小企業は一つの場合がほとんどですが、複数の場合もあるでしょうね。



「これがうまくいっているから大丈夫!」と思いがちな会社もあるということでしたが、中小企業の場合、複数の施策を行うのは難しいのでは?と思いました。
限られたリソースの中で施策を進める優先順位とは?



そうした場合、どういった優先順位で施策を行っていくといいのでしょうか?



優先順位の原則は、売り上げや集客に一番近い施策から行うことです。
そのなかでも、もちろん一番効果的な施策を行うことが良いですね。会社として集客をしていくのであれば、いわゆる自転車操業的な集客ばかりしていても仕方がないんです。複数の集客はできないという理由でやらないのは簡単なんですよ。



例えば、広告にかけられる予算のうち、8割ぐらいかけるのは、短期的には合わせなくてはいけないのでいいと思います。ただ、それだけをやっていると、広告を止めた瞬間に集客力はゼロになってしまいます。



その前に、かけられる予算の1割~2割くらいを、SEOやSNSなど、何か別の施策の方に少しずつでも行うと良いと思います。他の施策もテストしていって勝ち筋を探ることは、同時並行でやるべきです。



主軸で行う施策は、売上や集客に一番近い施策をやっていくことが大事であるため、広告や特定のポータルサイトにお金をかけた方がうまくいくんです。これで売り上げや利益を作って、また次の別の主軸となる施策や仕組み作りに回していかなくてはいけません。
「投資の考え方」が重要!利益をどう使うべきか?



また、会社の考え方にもよりますが、中小企業さんには利益を残したがる傾向もあります。もちろん利益を残すのは大事なことです。会社が少しうまくいかなくなったときにすぐ対応できますし。



前提としては、うまくいかない期間を耐え抜くために必要なお金もあるので、そういった部分で現預金を持っておくことは大事なんです。ただ、利益をたくさん抱え込むことは間違いです。



個人で考えるとわかりやすいかもしれません。
個人で考えると、「給料が入ったら、できる限り貯金に回しましょう」
ということと変わらないんですよ。
例えると、普段の食事や自分の生活にかかるお金を差し引いた金額は、何もかも貯金にしよう!みたいな感じです。



なるほど。
わかりやすいです。



そう考えるとわかると思うのですが、そうなるとその人の成長はないじゃないですか。



例えば個人で言えば、本を買ったり、何か新しい体験ができるところに行ったり、人に会ったりなど、いろいろなことに投資ができますよね?



そういったようなことも加味すると、結局一定以上は投資に回さないと、個人で言えば自分の成長、会社で言えば会社の成長が止まってしまうことになります。



投資に回すというと、できるだけ楽に、置いておくだけで年利何%か返ってくるものに回したいと考える会社さんもいるんですけれど、それも大間違いです。



例えば規模の大きい会社で資本金が何千万、何億、何十億とあって、どこかの会社を買って……みたいな投資の仕方であれば、また話が変わるのですが。



とはいえ、資本金が数千万から数億円ぐらいの規模の中小企業に関して言えば、自分たちがキャッシュフローで得た利益を、次の事業の拡大に投資していかないと、その会社は大きくならないんですよ。



年利10%もあればなかなかいい投資だと思います。年利10%だと100万円投資したら110万円で還ってきますもんね。



ある程度サービスが整っている状態で、広告費に100万円ぐらい投資すると、広告の費用対効果300%から500%ぐらいで、大体300万円から500万円の売り上げになって返ってきます。



さらにそのお客さんのLTVまで考えると、1000万円、2000万円と普通に返ってくるので、利回りが3倍なんですよ。それなのに、そこを勘違いしている人たちが多いんです。



投資と言うと、資産運用的なものを想像しがちですが、一番リターンがいいのは実は自社の事業に投資することです。



話がちょっと脱線しましたけれど、利益は常に一定以上は残さなくてはいけないけれど、自分たちの会社でちゃんとルールを決めて、必要な分はちゃんと投資に回すという意思決定を初めからしておくことが大切になります。



ちなみにうちは、利益の1割しか会社には残しません。逆に言えばそれ以外の9割は、通常コストや次の投資のコストに全部回しています。



1割しか残さないんですね!



そうしないと、今より次のフェーズに絶対いかないので。
それで次のフェーズに持っていけないのであれば、僕の人の使い方が悪かったり、かけている場所が間違っていたりするということであるため、それを直せばいいんです。



結局のところ、最初から何%か投資に回すという決まりをちゃんと作っておく必要がありますね。主軸でやっていく施策には、8割ぐらいかけていくんですけど、その次の仕込みに何割回すかを考えて、一緒に回していかなきゃいけないという考えを持っておかないと、大体ダメになりますね。



主軸がダメになった瞬間に、第2、第3の矢がないので、集客が全部止まってしまいます。
施策を回し続ける企業が強い!成功するマーケティング戦略



うちの会社も、プライドを持たずいろいろな施策を行っています。
ホームページやXから直接の問い合わせもありますし、営業も普通にかけていますし、紹介営業やビジネスマッチングも全部コストをかけて行っています。全部で毎月100万円以上かかっていますけど、うまくいかないことはやめていくと、うまくいくものだけが残ります。



そのなかで「お客様に見やすいサービス」や「契約がしやすいサービス」がブラッシュアップされていくんです。そうすると、めちゃくちゃいい循環ができるんです。



うちの場合はちょっと極端ですが、やっぱりマーケのコンサルをしている会社であるため、自分たちがまずはいろんな施策を実際に実施してみて、うまくいくもの、いかないものの実体験を積み重ねています。



その体験・経験を元に支援したいという考えから、利益は1割しか残らなくていいと思っています。それ以外の9割は全部投資しましょうという考え方でやっています。



ありがとうございます。
どんどん施策を回して、新しいものもどんどん試していくっていうことが大事ということですね。



はい、そうですね。


まとめ



では最後に今日のまとめと、この記事を見てくださっている方に一言お願いいたします。



まず、いろいろな施策ができていないことに関しては認めないといけません。
「できていない」ことを認めて、ちゃんとそれを自分たちで正していくことが一番大事であって、認めないということや、放置することは避けましょうというのが今回のお話です。



できていないのは当たり前なんです。しかし、できていないことをどうこう言っている時間は本当にもったいないので、できていないことを認識したのであれば、すぐにやるという方向に切り替えた方がいいですね。



できていないことを認識した時に、役員報酬を高くしたり、変なコストのかけ方をしていたり、利益率を高くすることが目的になってしまっていることがよくあるので、本当に自分たちの会社にとって中長期的に必要なものはなにかを考えることが大切です。



お客さんが継続的に来る仕組みがあるとか、他の施策でカバーできる状態にある会社の方が、当然、中長期的に生き残れます。



こういった仕組みや施策を準備するために、現在の売り上げや集客に近い施策を最優先にして、予算のうちの何割かを、主軸の施策以外の、次の中長期の仕込み施策などにも割けるような意思決定をしましょう。



まずそれが「できていないことをちゃんと認めてやる」ということです。手を付けることがまずは重要だと思います。



いつも仰っている「まずはやること」ですね!
ありがとうございました。



