自社の商品やサービスに関するマーケティングを行うなら、AISASはぜひ理解しておきたい行動モデルの1つです。理解すればマーケティングがより成功しやすくなるだけでなく、そのほかにも複数のメリットがあります。
また、よく似た行動モデルにAIDMAがあります。AISASをより深く理解し、マーケティングに活用するためにはAIDMAについても理解が必要です。本記事では、AISASとの概要やAIDMAとの違い、それぞれのメリット・デメリットを紹介します。フレームワークの活用方法やマーケティングの選定方法に悩んでいる方は、参考にしてください。
AISASの概要と段階を解説
AISASとは、消費者が商品を認知してから購入するまでの流れを段階ごとにプロセス化したフレームワークの一種です。1924年にサミュエル・ローランド・ホール氏によって提唱されたAIDMAより派生しました。
インターネットやSNSを利用したWebマーケティングを実施する際に役立ちます。AIDMAと同様、5つの段階が設けられています。
- Attention|注意
- Interest|興味
- Search|検索
- Action|行動
- Share|共有
それぞれの段階を詳しく解説します。
Attention|注意
Attentionは、見込み顧客に対して認知度を上げる段階と定義されています。したがって、マーケティングの目標は商品やサービスの存在を知ってもらう「認知」です。一例を挙げると、リスティング広告・動画広告・マス広告等が有効です。
Attentionの段階では、可能な限り多くの顧客に商品やサービスを認知してもらう必要があります。そのためには、施策を定める前に、ターゲットとペルソナを設計することが重要です。そのうえで、アクセスする可能性が高い施策を実施します。また、SNSでの情報発信やSEOも有効な手段です。検索エンジンの上位に表示されるようになれば、認知度を急速に高められるでしょう。
Interest|興味
Interestの段階では、見込み顧客に商品やサービスへの関心を高めてもらいます。認知された商品やサービスに深い関心を持ってもらうことがマーケティングの目標です。ターゲットやペルソナの関心を引くような写真・イラスト・キャッチコピーなどを使った広告を打つと効果的です。
リスティング広告・SNS広告・LP(ランディングページ)など複数のマーケティング施策の中から、設計したペルソナに合わせた施策を実施しましょう。また、商品やサービスをPRするWebサイトやブログの運営も効果的です。SNSにリンクを設定して定期的にアップし続けると、ターゲットを目当てのページに誘導できます。
Search|検索
Searchは、見込み顧客が自社の商品やサービスに興味を持ちインターネットを利用して積極的に検索している段階です。自社の商品やサービスへの興味や関心を深めてもらうチャンスがある一方、類似商品やサービスと比較される可能性があります。
この段階で見込み顧客を惹きつけられれば、顧客になる可能性が高まります。そのためには、SEO対策を実施し、自社の商品・サービスの魅力や強みをPRするページを上位表示させることが重要です。
また、申し込みや問い合わせにアクセスしやすくしたりする工夫も必要です。検索結果からスムーズに問い合わせや申し込みにアクセスできる仕組みができていれば、次の段階になるActionまで進む可能性もあります。
Action|行動
Actionの段階では、見込み顧客は「検索」を経てサービスや商品のメリットを理解し、購入する意思をほぼ固めていると想定できます。したがって、確実に商品・サービスを購入してもらうことがマーケティングの目標です。購入につなげるためには、見込み顧客が購入を躊躇する要因を一つずつ解消していかなければなりません。具体的な対策は以下の通りです。
【価格が高く購入を迷っている】
初回購入割引きや定額購入割引きを導入して購入のハードルを下げる
【購入手段がなく躊躇している】
複数の決済方法を導入する
【購入方法がわかりにくい】
購入や決済が簡単にできるボタンを目につく場所に設置する
消費者は億劫に感じたり高いと思ったりすると購入を躊躇うことがあります。これらの対応策は消費者にとって魅力を引き出すため、購入に至る可能性を高める要素になります。
Share|共有
Shareの段階では、見込み顧客はすでに顧客となり、商品やサービスを購入して利用していると想定できます。この段階でのマーケティングの目的は、口コミサイトで商品やサービスの良さを広めてもらうことです。
インターネット検索が即購入へつながりやすい現在、顧客による口コミが有効的なマーケティング手法になります。顧客にプラスの口コミを書いてもらったり、SNSで購入した商品やサービスをシェアしてもらえたりするように働きかけましょう。
例えば、購入した商品やサービスをSNSでシェアするとポイントがアップするキャンペーンを実施したり、口コミを投稿する場所をWebサイトに設けたりする方法も有効です。
AISASをマーケティングに活用する利点
ここでは、AISASをマーケティングに活用する利点を3つご紹介します。どのように活用すればいいのか詳しく知りたい方は参考にしてください。
BtoBマーケティングにも活用できる
AISASはBtoCマーケティングだけでなく、BtoBマーケティングにも有効なフレームワークです。従来のBtoBマーケティングは、顧客との信頼関係の構築や専門的なニーズに焦点を当てた戦略が一般的でした。訪問型の営業が主流であり、受動的な営業がスタンダードだったためです。しかし、現在では見込み顧客が自らインターネットを利用して商品やサービスを探し、問い合わせる能動的な時代に変わっています。
AISASのフレームワークは現代の営業方法に適しており、自社サイトやECページに誘導し見込み顧客から顧客へと転換するためのアプローチを決定する際に活用できます。ただし、提供する商品・サービスの性質によっては適さないこともあり、どの行動モデルが適切かを見極めなければなりません。
プロセスごとに適切な施策を行える
AISASを活用することで見込み顧客が現在どのプロセスにいるかを把握しやすくなります。これにより、各プロセスに応じた効果的な施策を実施できます。
Webマーケティングは施策が豊富にあるため、どの施策を行えば良いか迷うこともあるでしょう。しかし、このフレームワークに当てはめて考えることで、見込み顧客がどのプロセスにいるかを判断し、適切な施策を選びやすくなります。プロセスが異なれば、同じ施策であっても見込み顧客へのアプローチ方法が変わるため、迷いが生じにくくなります。
マーケティングの課題が明確になる
試行錯誤をくり返しているのに効果が得られない場合にも、AISASの活用で改善が見込めます。AISASを利用することで、見込み顧客がどのプロセスに位置しているかを分析できるためです。
例えば、見込み顧客がAttentionの位置にいる状態にもかかわらず、Action段階に向けた施策を行っていれば効果は期待できません。AISASを活用すれば適した手法の整理が行えるため、このような問題点に気づくことができ、改善策が立てられるようになります。
消費者が能動的な時代だからこそ、消費者の行動分析は成果を得るためには欠かせないプロセスです。AISASの各段階を基準に施策を評価し、課題を見つけてトライアンドエラーで対策を講じましょう。
Webマーケティングの強みを活かせる
Webマーケティングは、企業から顧客への一方通行では成果が得られません。企業と顧客がコミュニケーションを取って関係を構築していくことで成果が得られます。その強みを活かせるのが、最終段階であるShareです。
効率的に見込み顧客を顧客に転換させるためには、Shareに力を入れて、新しく顧客となった方々に商品やサービスの良さを共有・拡散をしてもらえるような施策を行いましょう。これにより、InterestからSearch・Actionまでの流れがよりスムーズに進む可能性があります。
AIDMAとAISASの違い
AIDMAとは、消費者が商品やサービスの購買を決定するまでのプロセスを理解するためのフレームワークです。AIDMAにはAISASの「Search」と「Share」の代わりに、「Desire(欲求)」と「Memory(記憶)」があります。Desireは関心が高まり、商品やサービスを使用してみたいと思う段階です。Memoryは、顧客の購買意欲は高まっているものの行動を起こすまでには至っていない段階です。
AIDMAは、まだWebマーケティングがなくテレビ・ラジオなどのマス広告が主流だった際に誕生しています。そのため、Webマーケティングに活用した場合、やや当てはまらない部分が出てきます。したがって、成果を得るためにはAISASとの使い分けが重要です。
AISASを活用した成功事例
AISASの活用成功事例として「メルペイ」を紹介します。メルペイは、フリマサイト「メルカリ」を通したスマホ決済サービスです。メルペイが実践したマーケティングの流れは、以下の通りです。
【Attention・Interest】
「すすメルペイキャンペーン」を実施、広告に人気のYouTuberやインフルエンサーを起用して認知度や関心を高める
【Search】
友達とメルペイに登録する、それぞれに1,000ポイント付与する特典を提供し、ユーザーの意欲を高める
【Action】
ユーザーがメルペイに登録する
【Share】
1,000ポイント付与の条件に「友達を誘って登録」を設け、登録するメリットを共有してもらう
このように、プロセスごとのポイントを押さえて効率的なマーケティングを実施していることがわかります。
AIDMAとAISASの利点と欠点
フレームワークを活用すればマーケティングの成果が得られやすくなります。しかし、それぞれの特徴と利点・欠点を把握して適切に使い分けなければなりません。ここでは、双方の利点と欠点を説明します。適切に使い分けるためにも把握しておきましょう。
AISASの利点と欠点
AISASの主な利点は、以下3点です。
- Webマーケティングに適している
- ユーザー主体のマーケティングを考えたい場合に利用できる
- BtoCマーケティングにより活用しやすい
ECサイトやWebサイトでの通販が主流になる商品やサービスで活用すれば、効率的なマーケティングが可能です。一方、ネガティブな評判に弱く、特にSNSで一度ネガティブな評判が立つと、瞬く間に拡散されてしまうリスクがあります。
また、SNSの意見をまとめたブログに転載されると検索上位に表示される恐れもあるため、ネガティブな評判が立たないような対策を講じる必要があります。
AIDMAの利点と欠点
AIDMAの主な利点は、以下3点です。
- BtoBマーケティングに適している
- Webマーケティングが不向きな商品・サービスのマーケティングに適している
- 成功事例が多く参考にできるものが多い
歴史が長いフレームワークのため、参考になる事例が豊富にあります。また、Webマーケティングに適さない商品やサービスを扱っている場合も活用可能です。
一方、顧客が自分からアプローチしてきた際の対策が不十分になる場合があります。自社のWebサイトに問い合わせの窓口を設けておく、商品やサービスの紹介ページを充実させるなどの対策が必要です。
AISASは「買いたい」から「広めたい」へ進化
現在は、AISASの進化形であるDual AISASを活用する事例も増えています。Dual AISASとは「広めたい・共有したい」の要素を強調したフレームワークです。
なお、「コミュニケーションへの興味」と「購買への興味」は異なります。コミュニケーションへの興味が高い層は、購買意欲が薄い傾向にあるため売上には貢献しません。しかし、面白いコンテンツを通じたコミュニケーションには関心が強く、SNSや口コミでのShareに期待できます。
この2つの興味層を分離して分析することで、購買までのプロセスをより正確に予測できます。ターゲット層に応じた適切なマーケティング戦略の立案が可能になります。
まとめ
AISASは、Webマーケティングにおいて顧客との関係性を構築しながら商品やサービスを購入してもらいたい場合に役立ちます。ただし、ケースによっては合わない場合もあるため、AIDMAと合わせて活用する方法も視野に入れなければなりません。
加えて、今後Webマーケティングを利用して売上をアップしたい場合や、自社のマーケティングが抱えている課題を明確にしたい場合にも有効なフレームワークです。ぜひ使いこなせるようになりましょう。
ウェビットでは主に中小企業がWebマーケティング、Web集客を行ううえでのお悩みを解決するような情報を発信しております。気になられた方はぜひ、ほかの記事もご一読ください。