「顧客の心理を活かして商品・サービスの売れ行きをよくしたい」
「顧客と距離を縮め、信頼関係を構築したい」
マーケティング活用を円滑に行うためには、顧客の心理を理解し、適切なアプローチをかけることが大切です。特に、知らない商品やサービスに対して、ターゲットの興味を引くのは簡単ではありません。そこで、活用したい心理がバーナム効果です。
バーナム効果とは、自分のことを指摘されたように感じる心理的効果の一つです。
マーケティングに活用することで顧客の感情やニーズに共感を呼び、商品やサービスが一人ひとりのニーズに特化しているような錯覚を生み出し、顧客とのエンゲージメントを高める効果を期待できます。
しかし、バーナム効果をWebマーケティングにどう反映させるかわからない方もいるでしょう。
そこで本記事では、バーナム効果の概要やバーナム効果を使うメリット、活用方法など解説します。バーナム効果を使ってWebマーケティングを成功させたい方、バーナム効果をすぐに使いたい方はぜひ最後までご覧ください。
バーナム効果とは
バーナム効果とは、一般的でかつ抽象的なことでも、あたかも自分自身に関する特性として当てはまると信じる心理効果です。自分に関連する情報に対して強く反応し、個々に当てはまると錯覚してしまう仕組みです。
バーナム効果は心理学的な診断や占いなどで活用されることが多く、誰しも当てはまるような内容でも「私のことわかってもらえた」と思い込み、相手に好感や信頼を抱くことがあります。
このように働く人間の心理を活かし、マーケティング施策の一環として取り入れることで、より多くの顧客に商品やサービスへの興味を醸成することが可能です。ターゲットが個々で抱える感情やニーズに共感を呼び起こし、顧客エンゲージメントを高める効果が期待できます。
実際に顧客一人ひとりに響かせ、商品やサービスへの印象を強める手法として、広告やキャンペーンなどのメッセージで活用されています。
バーナム効果が起こる事例
多くの人に当てはまることを自分のことのように言われていると感じるバーナム効果ですが、日常生活において多くの場面で使われています。身近な例としては以下の5つです。
- 占い
- 血液型診断
- 性格診断
- おみくじ
- 営業
それぞれ詳しくみてみましょう。
占い
占い師に「あなたは今、悩みを抱えていますね?」と言われると、その言葉をきっかけに「実は…」と自分の内情を打ち明ける傾向にあります。占いに行く人の多くは何かしらの悩みを抱えていますが、占い師に悩みを抱えているだろうと指摘されることで、「自分のことを理解してもらえた」と好感を抱き信頼してしまうのです。
血液型診断
血液型がA型で大雑把な性格のSさんが、血液型診断で「A型は几帳面」と診断されたとしましょう。するとSさんは、普段は大雑把であるにもかかわらず、自分が几帳面な場面を思い出し、あたかも自分は几帳面であると思い込んでしまいます。また、本来の性格として把握している大雑把なところをこの時点で忘れてしまうのです。
血液型診断では、「確証性バイアス」も影響しています。確証性バイアスとは、自分の都合がよい情報を切り取り、不都合な情報は除外してしまう心理です。
広告やキャンペーンでも、血液型の特性を用いて顧客の興味喚起を促すメッセージが用いられることがあります。「我慢強く義理や人情を大切にするA型のあなたは、周りに気を使いすぎてしまうため自分を犠牲にしていませんか。たまには、自分を労わるためにご褒美を!」
このように投げかけられたA型の人は、自分に向けられたメッセージとして強く印象に残るでしょう。
性格診断
性格診断も血液型診断と同様です。診断結果と診断を受けた本人の性格が乖離しても、性格診断の結果が強く残り「自分は性格診断の結果のような性格なんだ」と認識してしまいます。
バーナム効果と性格診断に関する実験は、1948年にアメリカの心理学者バートラム・フォアが行ったものが有名です。
実験内容は、学生たちに性格診断テストを受けさせ、テストの回答に基づいた分析結果を配布するものです。
学生たちは性格診断テストをかなり正確なものと認識しましたが、実は文章の中身はすべて同じであり根拠のないものでした。それでも学生たちは性格診断テストの結果を見て、自分に当てはまっていると感じる結果となりました。
おみくじ
おみくじの結果に記載されているアドバイスは、誰にでも当てはまるような内容です。しかし、自分が引いたため、自分事のように受け入れてしまう傾向があります。
おみくじは占いと異なり自分から番号や札を選ぶため、よりバーナム効果が発揮されやすい事例です。
営業
ビジネスの場においても、バーナム効果が活用されています。営業担当者が製品の紹介をする際「このような悩みを抱えていませんか?」と最初に話しかけることにより「この人は悩みに寄り添ってくれるから話を聞いてみよう」と顧客の信頼を得やすくなります。
営業で活用するには、事前のリサーチが大切です。同様のポジションにある企業が抱えやすい問題をいくつかピックアップし、先に先方が抱えているであろう悩みを提示します。
先に悩みに共感してから次に製品の特徴を伝えることで、バーナム効果が働き、一方的に製品の特徴を話すより興味を引きつけられ、その後の提案がスムーズにいきやすいでしょう。
バーナム効果を使う3つのメリット
マーケティングにおいてバーナム効果は、ターゲットとなる顧客に対し、広告やキャンペーンなどで商品やサービスへの興味を引き立たせたり、顧客とエンゲージメントを高めたりする場面で活用されています。
以下、バーナム効果がもたらす3つのメリットです。
- 顧客との距離が縮まる
- 信頼度が上がる
- 売上が上がる
それぞれ見ていきましょう。
顧客との距離が縮まる
バーナム効果を使い、相手の悩みに共感することで、警戒心を解き歩み寄ってもらえる可能性が高くなります。
これにより、「この人なら自分の悩みを解決してくれそう」と思ってもらうことができ、後に紹介する商品やサービスの購入を検討してもらいやすくなるでしょう。さらに、警戒心を一度解くとその後も相談や継続的な商品の購入につながる可能性も高くなります。
代弁する言葉を選ぶためには、相手が何に共感を抱くのか、背景を推測した上で発信することが大切です。
信頼度が上がる
バーナム効果を活用し相手の内にある気持ちを解くことで、コミュニケーションを円滑に進めやすくなります。良質なコミュニケーションをとることによって、相手からの信頼度が上がり、別の仕事も相談されやすくなるかもしれません。
新規顧客に対してバーナム効果を使用し信頼度を上げることにより、商品の購入につなげられる確率が高くなります。また、既存顧客に対しては継続的な購入につなげられるかもしれません。
相手を理解するとともにバーナム効果を使うと、相手によき理解者と認識されます。
売上が上がる
バーナム効果を広告やキャンペーンに活用することで、商品の売上増加が期待できます。バーナム効果を使って顧客に問いかけることで、悩みを解決できそうな商品・サービスだと思ってもらえる可能性が高くなるからです。
売上が上がる流れは以下のとおりです。
- バーナム効果を使って相手の悩みに共感し、個人に向けたメッセージと受け取ってもらう
- 製品への必要性を感じてもらう
- 顧客が製品に関心をもつ
- 顧客の購買意欲が高まる
ポイントは、バーナム効果を活用したメッセージを送ることで、顧客に製品の必要性を感じさせる点です。必要と感じれば、セールスをかけなくとも顧客の購買意欲は自然に高まるでしょう。
バーナム効果を活用する5つのポイント
バーナム効果を活用する際は、以下5つのポイントを意識しましょう。
- 「あなた」を主語にして伝える
- 発信者の信頼性を高める
- ポジティブな表現を使う
- 解釈の幅が広がる表現を使う
- ほかの心理効果と組み合わせる
バーナム効果を最大化させるためには、これらのポイントを押さえておくのが大切です。
「あなた」を主語にして伝える
バーナム効果を活用するときには、個人に向けて伝えることが重要です。例えば、相手の呼び方を「皆さん」のような大勢ではなく「あなた」「○○さん」のように1人だけに向けた呼び方をしましょう。
1人だけに向けた呼び方をすることで、相手に「自分のことを言われている」と思わせやすくなります。反対に、「皆さん」のような大勢の場合「自分には関係ない」と認識され、バーナム効果が得られなくなってしまいます。
どの場面でも、バーナム効果を使うときは「あなた」を主語にしましょう。
発信者の信頼性を高める
バーナム効果は誰が発信している情報なのかも重要です。いくら個人に向けた情報でも、発信者のことを相手が信用していなければバーナム効果は意味をもちません。
そのため、バーナム効果を使うときは発信者個人や企業の実績を示しましょう。発信するときは、実績をデータで示すことで相手に信頼されやすくなります。高い実績・データを示せる人の発言は、さらに信用されやすいでしょう。
例として、占い師であれば占いした人の数や予言的中率、営業であれば、主力製品や営業実績などが挙げられます。
ポジティブな表現を使う
バーナム効果を使うときは、ポジティブな表現を用いて相手に問いかけましょう。受信者はポジティブな表現を覚えたい心理が働き、記憶に残りやすくなります。
例えば、なんとなく体がだるいサラリーマンに向けて「爽やかな朝を迎えるために~」「毎日を元気に過ごすために~」というキャッチコピーです。ポジティブな表現を用いれば、バーナム効果をより有効に活用でき、マーケティングの成果を伸ばせるでしょう。
解釈の幅が広がる表現を使う
バーナム効果を活用するためには、どのような人でも幅広く解釈できる言葉を選択しましょう。場面にもよりますが、バーナム効果は「自分に当てはまるかも」と思ってもらうことが大切なため、1つの言葉でいくつか連想できる言い回しが望ましいです。
例えば、「転職したいと思っていませんか」という質問を「これからのキャリアや理想の生活について悩んでいませんか」に変えることが挙げられます。
前者は転職を考えている人に限定されますが、後者は転職を考えている人に加え、昇進や業務形態の変更を考えている人にも当てはまる表現になります。
ほかの心理効果と組み合わせる
バーナム効果とほかの心理効果を組み合わせると、より効果を発揮しやすくなります。バーナム効果と関連性が強い用語として「確証性バイアス」があります。確証性バイアスとは、自分の信念や思い込みを強くする情報ばかりに目がいき、それ以外の情報を無意識に捨ててしまうことです。
例として、初対面の人から性格的な特徴を褒められたとき、私のよき理解者だと思い込んでしまうことや、何かの事業を始める際にメリットばかりに着目しリスクを見ないことなどが挙げられます。
共通しているのは、「褒められた」「メリット」のようなポジティブな印象に引っ張られ、ある程度のマイナス面があっても忘れてしまう点です。
バーナム効果をより高めたいときは、確証性バイアスも意識した発信内容にするとよいでしょう。
バーナム効果を使うときの3つの注意点
バーナム効果を効果的に活用するには、以下3つの注意点も押さえておきましょう。
- 適切な情報収集をする
- 誇大表現を避ける
- 悪用・多用に注意する
バーナム効果は使い方を誤ると信頼をなくす恐れもあります。特に、誇大表現や悪用には注意が必要です。
適切な情報収集をする
バーナム効果は、顧客となるペルソナ像を設計しておくと効果を発揮しやすいでしょう。反対に、ペルソナ設計やターゲット分析を誤ってしまうと、発言内容にブレが生じ、まったく伝わらなかったり気分を害してしまったりする恐れもあります。
例えば、20~30代のビジネスマンに主婦向けの内容を伝えても、バーナム効果は発揮されません。
バーナム効果を使うときは、ペルソナを設計した上で言葉を選びましょう。
誇大表現を避ける
バーナム効果を使うとき、相手に自分のことのように思ってほしいと思うあまり、誇大表現をしてしまう方も少なくありません。
誇大表現は相手に怪しく感じられてしまうとともに、法律に抵触する可能性もあるため注意が必要です。大げさな表現や悪質な誇大表現をした場合、景品表示法によって措置命令が行われます。
また、不安を煽るような表現は相手を不快にさせ、トラブルに発展する元となる可能性があるため、煽り口調にも気をつけましょう。
悪用・多用に注意する
バーナム効果は正しく使用できれば相手との信頼関係を築けます。しかし、同時に信用を得ることで、特定の行動や思考に誘導することもできる危険な心理効果です。必要がないものを無理に必要と思わせ、相手が「騙された」と感じてしまうような悪用方法は、企業全体の信用問題に発展しかねません。
また、多用すると顧客は情報に疑問を抱く可能性があります。
バーナム効果を活用するときは、適正とバランスを考慮するようにしましょう。
まとめ
バーナム効果とは多くの人が当てはまる特徴について、あたかも自分ごとのようにとらえる心理的効果を指します。バーナム効果を使うときのポイントは、主語を「あなた」にしたり、ポジティブな表現を使ったりすることです。ただし、効果を高めたいあまり誇大表現や悪用には注意しましょう。
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