「カスタマーエンゲージメントの具体的な定義や概念がわからない」
「カスタマーエンゲージメントを高める具体的な戦略や手法を知りたいが、どのように実践すればよいのだろう」
上記のような悩みを抱えるマーケティング担当者の方もいるでしょう。
カスタマーエンゲージメントを高めることで、商品やサービスの継続率向上や、売上アップにつなげられます。
本記事では、カスタマーエンゲージメントについての詳しい説明や、カスタマーエンゲージメントを向上させるメリットを紹介します。具体的な施策にも触れ、すぐにでも実践できる内容となっているため、事業発展を目指す方はぜひ最後までご覧ください。
カスタマーエンゲージメントとは
「カスタマーエンゲージメント」とは、企業と顧客の深い信頼関係や親密さを指す言葉です。高いカスタマーエンゲージメントが構築されていれば、顧客は自発的に企業の商品やサービスを利用し、よい口コミを投稿するため、企業の収益向上につながります。
エンゲージメントを向上させるには、顧客との密なコミュニケーションが不可欠です。顧客ニーズを理解し適切に対応することや、継続的なフォローアップ、迅速かつ丁寧な対応が求められます。
また、カスタマーエンゲージメントを向上させるには、一時的な取り組みではなく、継続的な企業努力が必要です。顧客との関係を大切にし、フィードバックを真摯に受け止め、企業の成長と共に顧客との関係も深めていくことが持続的な成功をもたらします。
カスタマーエンゲージメントの重要性
高いカスタマーエンゲージメントを築けていれば、リピート購入や口コミ投稿、SNSなどへの投稿を促すことが可能です。
昨今のビジネス環境は日々大きく変化しており、従来の手法では収益の拡大が難しくなっています。商品やサービスの差別化を図るのが難しく、差異や特徴が薄れ、商品やサービスの一般化・大衆化が進んでいるのが現状です。これを、マーケティング用語では「コモディティ化」と呼びます。
コモディティ化により、商品やサービスの差別化が難しく、価格競争は避けられません。しかし、価格を下げると収益が低下するリスクがあります。
高いカスタマーエンゲージメントを持つ企業は、顧客から選ばれやすくなります。そのため、カスタマーエンゲージメントを高め、安定した収益を目指す動きが多くの企業で見られます。
ロイヤリティとは
ロイヤリティとは、顧客があるブランドや商品、サービスに対して継続的に抱く好意や信頼、忠誠心のことです。
例えば、あるカフェの顧客の中には、毎朝同じ店舗でコーヒーを購入する習慣を持つ方々がいます。そのような方々は、その店の味や雰囲気、サービスに対し強い好意や信頼感を持っており、近くに別のカフェがあったとしても、気に入っている店を選び続けます。このように、ロイヤリティは、顧客が企業や店に対し好意や信頼を寄せている、いわばブランドを選び続けている結果です。
一方カスタマーエンゲージメントは、企業と顧客の双方向の関係性とコミュニケーションが前提とされており、関心を維持するためのプロセスを指します。カスタマーエンゲージメントはロイヤリティの構築の一部であり、ロイヤリティが高まると、長期的な顧客関係が強化されます。
カスタマーエンゲージメントが注目されている理由
カスタマーエンゲージメントは、企業の収益向上に欠かせない要素です。その重要性をより深く理解すれば、効果的な戦略策定に役立てられます。
ここでは、なぜカスタマーエンゲージメントが注目されているのかを解説します。
商品やサービスのコモディティ化
商品やサービスのコモディティ化は、カスタマーエンゲージメントが注目される背景の1つです。市場の飽和や競合との価格競争が激化する中で、単に「高品質低価格」では、顧客の心は掴めません。そのため、企業が顧客に対し「この企業だから選ぶ」と思わせられるカスタマーエンゲージメントの重要性が高まっているのです。
また、スマートフォンやデジタル技術の進化により、企業と顧客のコミュニケーション方法は多様化し、パーソナライズされたメッセージの重要性が高まっています。
これら複数のトレンドにより、カスタマーエンゲージメントの向上は企業にとって避けられない課題となりました。
サブスクリプションサービスの台頭
サブスクリプションサービスが広く浸透していることも、カスタマーエンゲージメントが注目されるようになったきっかけです。サブスクリプションのビジネスモデルにおいて、企業は顧客の解約を防ぎながら、アップセルやクロスセルを実施する必要があります。Salesforceの調査(※1)によると、74%のBtoB顧客と63%のBtoC顧客は、優れた顧客体験のために追加コストを支払う意向があることがわかりました。
この結果からもわかるように、カスタマーエンゲージメントを強化すれば、サービス解約の減少と上位プランへの移行が期待できるといえます。
現在、多くのサービスがサブスクリプションモデルを採用しており、新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客の維持が企業の売上を維持する上で重要なポイントです。そのため、サービス品質や価格のみならず、顧客との強い結びつきを築く取り組みが必要不可欠です。
購買プロセスの複雑化
購買プロセスの変化と複雑化が、カスタマーエンゲージメントの重要性を高めています。
従来、顧客は店舗で直接商品を購入していたのに対し、インターネットの普及によりオンラインでの商品比較や価格調査が一般的になりました。情報へのアクセスが容易になった消費者は、多くの選択肢から自分に合った商品やサービスを探すようになったため、ブランド間の競争が激化しています。
このような状況下で、カスタマーエンゲージメントを強化し、顧客が他社製品を比較する前に自社製品を選択する強い関係性の構築が、ますます重要になっています。
カスタマーエンゲージメント獲得のメリット
カスタマーエンゲージメントを高めるための取り組みをすることで、顧客ニーズや顧客行動をより深く理解でき、商品やサービスの改良や最適化が可能です。これは、今後のマーケティング活動や、新製品開発の際に大きく役立つ知識となります。
ここでは、カスタマーエンゲージメントを獲得するメリットを解説します。
継続率向上
カスタマーエンゲージメントの向上は、商品やサービスの継続率向上において重要です。カスタマーエンゲージメントが高まると、顧客は企業やそのサービスに対する深い関心や愛着を持つようになります。
似たようなサービスが存在する中で、カスタマーエンゲージメントが高ければ、「この企業が好きだから」といった理由で、顧客は企業の商品やサービスを選択します。新たな商品やサービスの購入を検討する際も、特定企業の商品やサービスを選ぶ傾向が高まり、企業にとっては収益の安定化が期待できるでしょう。
また、継続して利用する顧客は、新しい商品やサービスの導入にも前向きになりやすく、アップセルやクロスセルの機会が増える可能性があります。これにより、一人当たりの顧客単価が向上し、企業の収益構造全体の強化にもつながります。
新規顧客獲得
カスタマーエンゲージメントが高い顧客の存在は、新規顧客獲得にも有効です。エンゲージメントが高い顧客は企業の「ファン」となり、自発的によい口コミやレビューを拡散するケースが少なくありません。ファンが行うSNSやブログを通じた情報発信は、新規顧客獲得の強力なプロモーションになり、それを見た人の興味を引き出しやすくします。
その結果、効率よく新規顧客層へアプローチができ、企業単独のマーケティングでは到達が困難だった顧客へのリーチも可能です。
解約防止
カスタマーエンゲージメントの向上は、顧客の解約率を減少させる効果があります。特に、サブスクリプションサービスのような定額制のビジネスモデルでは、解約率を下げることが大切です。
このようなサービスは、顧客の継続的な利用が企業の売上に直結するため、顧客が自社のサービスを特別と感じ、他サービスに乗り換えないような施策が求められます。例えば、オリジナルコンテンツの独自配信や、定期的なアップデートや新機能の追加、継続利用によってポイントが貯まるシステムの導入などです。
顧客の継続的な利用を実現するには、ほかのサービスでは得られない価値の提供や、適切なサポートが不可欠です。カスタマーエンゲージメントが高まれば、顧客満足度が向上し、解約を検討するリスクを低減させられるでしょう。
顧客からの有益なフィードバック
エンゲージメントが高い顧客は、企業への思い入れや信頼が強く、商品やサービスにも深い知識を持っているケースが少なくありません。そのような顧客は、商品やサービスの改善点などの意見や感想を積極的に発信することが多い傾向です。このようなフィードバックは、新商品やサービスの開発において非常に役立ちます。
例えば、商品の使用方法や機能面で顧客が満足できていない点の把握や、新たに求められるサービスは何なのかなどの情報をリアルタイムで把握できます。
また、エンゲージメントが高い顧客は、新商品やイベントの案内にもポジティブに反応し、購入、参加、情報のシェアを積極的に行う傾向です。加えて、アンケートへの参加意欲も高まり、企業ブランドの価値向上につなげられるでしょう。
カスタマーエンゲージメントを高める方法を紹介
エンゲージメントの高い顧客は、頻繁に商品を購入したり、平均的な購入金額が高くなったりする傾向があります。このことを理解した上でエンゲージメントを強化する戦略を実行すれば、収益を最大化させられるでしょう。
ここでは、カスタマーエンゲージメントを高める方法を紹介します。
カスタマーエンゲージメントの現状把握
カスタマーエンゲージメントを高めるには、まずは現状を把握することが重要です。エンゲージメント向上施策の成果を、実施前と実施後で定量的に評価・検証しましょう。
具体的には、Webサイト訪問頻度、リピート率、ブックマークやタグ付けの数などのデータを活用し、顧客ロイヤリティを測定します。顧客が企業に対しどのような感情を持っているかを把握するには、SNSの反応や購入率、クリック率などのユーザーアクションも分析に取り入れるのが有効です。
顧客データの分析により、顧客エンゲージメントの現状が明らかになれば、今後の方向性が見えてきます。
カスタマージャーニーマップの作成と行動分析
カスタマーエンゲージメントを高めるには、「カスタマージャーニーマップ」の作成と、顧客の行動分析が効果的ですカスタマージャーニーマップとは、商品やサービスの購入プロセスを顧客の感情や志向に基づいて時系列で分析するフレームワークを指します。この手法を用いて顧客の心理状態を理解することで、顧客との各接点(タッチポイント)における顧客体験の向上が可能です。
また、カスタマージャーニーマップは、顧客の購買行動・思考・感情を接点ごとに可視化でき、顧客と企業が継続的な関係を築くのに役立ちます。可視化した情報を基に、企業は修正すべき課題や注力すべきポイントを明確に把握できるため、カスタマーエンゲージメント向上の戦略立案にも役立てられます。
One to Oneマーケティングの実施
「One to One」マーケティングとは、顧客一人ひとりに最適な施策を展開し、カスタマーエンゲージメントを高める手法です。顧客の体験を向上させるには、顧客が何を価値と感じるのか、顧客の視点に立って商品やサービスを評価することが大切です。これを実現するには、「行動パターン分析」と「ニーズ把握」が欠かせません。
また、「パーソナライズ化」もエンゲージメント向上に効果的です。パーソナライズ化とは、顧客の特性や興味、過去の行動、好みなどの情報を基に、その顧客に特化したコンテンツやサービスを提供する手法です。顧客情報に基づきより関連性の高い情報やサービスを提供すれば、顧客は「自分を理解してくれている」と感じ、エンゲージメントを高められる可能性も高まります。
NPSの実施
NPS(Net Promoter Score)とは、顧客のブランドや企業に対する愛着や信頼度を測る指標です。企業の商品やサービスを利用する顧客に対し、「この商品をおすすめできますか?」と質問します。回答は「批判者(0~6点)」「中立者(7~8点)」「推奨者(9~10点)」の、0~10で答えてもらいます。そして、「推奨者の割合 – 批判者の割合」でNPSの数値を算出するものです。正のNPSは顧客ロイヤリティの確保、負のNPSはロイヤリティの低下を示します。
NPSの活用により、顧客エンゲージメントの現状を理解でき、改善の方向性を定めることが可能です。NPSは、未来の顧客行動と収益性に連動するとされており、多くの企業で広く利用されている手法でもあります。
まとめ
本記事では、カスタマーエンゲージメントの概念から実践の方法まで詳しく解説しました。カスタマーエンゲージメントを高めることで、顧客は企業と継続的に長く関わり続ける傾向があるため、収益の安定化や増加を期待できます。また、商品やサービスへの有益なフィードバックも得られ、商品開発の助けにもなります。持続可能な関係構築のためにも、顧客のニーズや興味、行動を細かく分析し、常に顧客目線でサービス改善を図っていくことが大切です。
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