顧客インサイトとは、顧客自身が気づいていない購買行動の動機となる部分です。顧客インサイトに基づいて、製品ラインの拡充・マーケティング戦略の調整・顧客サポートの向上などの戦略的決定を行ないます。さらに、顧客満足度の向上と長期的な顧客関係の構築にも欠かせません。
本記事では、顧客インサイトの概念から、混合されやすいワード「ニーズ」との違い、さらに顧客インサイトを探り当てる方法・手順・意識したいポイントなどを徹底解説します。顧客インサイトについて知りたい、より効果的なマーケティングをしたい方はぜひ参考にしてください。
そもそも顧客インサイトとは?
そもそも顧客インサイトとは、顧客自身も自覚していない直感や本音のことです。商品を選ぶ際に無意識に働く深層心理であり、なぜその商品・サービスを選んだのか、選んだ当人もわからないことがあります。
例えば消費者が洋服を買ったとき、理由としては「かわいいから」「気に入ったから」といった感覚的な回答をするかもしれません。これは、機能性やスタイルなどのスペックが判断基準ではなく、消費者の奥に潜む欲求や動機が消費行動を後押ししたからです。
マーケティング用語として使われる「インサイト」とは、商品やサービスを選ぶ動機づけとなるものを指します。動機は、市場やトレンド、社会的地位や役割など、情勢やライフスタイルによって変化します。さらに、競合他社がいれば、競合他社が提供する製品やサービス・価格やマーケティング戦略によっても左右されてしまうため、さまざまな要因を分析することが重要です。
加えて、事業を発展させていくには、動機を左右する要因がどのように変化するのかも理解し、ビジネス戦略を調整していく必要があります。
顧客インサイトとニーズの違いとは
顧客インサイトとして混合されるのが、消費者ニーズです。まずはニーズの違いを整理し、そこから顧客インサイトとニーズの違いを確認しましょう。
顕在ニーズと潜在ニーズ
ニーズには「顕在ニーズ」と「潜在ニーズ」があり、それぞれ意味は以下のとおりです。
顕在ニーズ | 顧客自身がやりたいこと・欲しい商品・解決したい課題など明確になっている状態のこと |
潜在ニーズ | 顧客自身も明確になっていない欲求のこと |
例えば、スマートフォンを例に挙げてみましょう。
- 顕在ニーズ:スマートフォン画面が割れたら新しいのを購入する
- 潜在ニーズ:スマートフォンの使い勝手がよくなって欲しいと思っている(ただし、何に使い勝手の悪さを感じているのかわかっていない)
つまり、顕在ニーズは顧客が自分たちのニーズを自覚し、具体的に表現できるものです。問題や欲求が明確なため、解決策も選べます。一方、潜在ニーズは顧客が気づいていないか、もしくはなんとなく不満を感じつつも、その原因を顧客自身が特定できていない、または解決方法がわからない状態です。
顧客インサイトと潜在ニーズの違い
潜在ニーズとは、現状に不満を感じつつも、明確な悩みを特定できていない状態です。これらの欲求は、顧客の購買行動や嗜好、ライフスタイルなどからの推測や、ヒアリングをして発見されることもあります。
例えば、スマートフォンを例にします。
- スマートフォンの使い勝手が悪いと感じている
- 具体的にどのような点にそう思うのか深掘りする
- すると、スマートフォンのサイズが大きいため、満員電車で使いにくいと感じていたことがわかる
- 片手で簡単に操作できるサイズのスマートフォンがあるとよい(ニーズの明確化)
簡単な例ですが、潜在ニーズはヒアリングを通して顧客自身も気づくことがあります。
一方顧客インサイトは、潜在ニーズのさらに次の段階へと進み、意思決定するためのカギとなるものです。世界観や外観、香りなどあらゆるものが消費者を刺激し、「思わず買ってしまった」となる裏の動機を指します。本人も自覚しにくい動機のため、探り当てるのは難しい作業です。
例えばスマートフォンの例でいえば、片手で操作できる機能性をもつ機種はどのメーカーも製造しています。そこに、持っているだけで周りから一目置かれる「カッコよさ」、つまり戦略的なブランディングが加われば、購買意欲が増すかもしれません。しかし当人に購買動機を聞くと、「カッコよさ」で選んだ動機に気づかず、利便性やスペックの高さを購買理由に挙げるでしょう。
ただし、「カッコよさ」は市場の動きによって変化します。顧客がどこに「カッコよさ」を抱いたのか見抜くには、まずどのような潜在ニーズを抱えているか特定することが重要です。
顧客インサイトを見抜く上で、潜在ニーズは切っても切れない関係です。
顧客インサイトを活用するメリット3選
顧客インサイトにはさまざまなメリットがあります。
顧客インサイトを活用するメリットは、以下の3つです。
- より集客力が見込めるマーケティングが可能になる
- 顧客との関係構築に役立つ
- 競合他社の中でも優位な立場に立てる
ここでは、それぞれのメリットを紹介します。
より集客力が見込めるマーケティングが可能になる
顧客の潜在的な欲求を把握することによって、顧客が求めることがわかるようになり、効果的なマーケティングが可能になります。商品・サービスがどんなに魅力的だとしても、マーケティング方法が間違っていると集客はできません。
そこで顧客インサイトの活用によってターゲット層や消費者の購買意欲が刺激されるパターンがわかるようになり、効果的なマーケティングが可能になります。
顧客インサイトを積極的に見つけて、集客をしていきましょう。
顧客との関係構築に役立つ
顧客インサイトを追求することで、消費者のニーズやターゲット層を深く理解することができ、顧客とスムーズなコミュニケーションができるようになります。さらに関係構築につながり、事業拡大のメリットもあります。顧客の心を掴むことができれば、リピーターに育成することも可能です。
顧客インサイトを追求し、顧客の理解を深めていきましょう。
競合他社の中でも優位な立場に立てる
顧客インサイトを活用することで、競合他社の中でも優位な立場に立てるようになります。
そもそも、顧客インサイトは顧客自身も気づいていないものであるため、簡単に見つけられるものではありません。
だからこそ、顧客インサイトを見つければ顧客の購買意欲を刺激することができ、競合他社の中でも優位な立場に立つことができます。今や似たり寄ったりの商品・サービスは多くあります。顧客インサイトを追求して、商品やサービスの改善に役立てて、需要のある商品を考えていきましょう。
顧客インサイトを見つける方法・手順
顧客インサイトを見つける方法・手順は、以下のとおりです。
- 社内のデータ収集を行う
- 追加調査にて不足しているデータを集める
- 収集したデータを分析する
- フレームワークを用いて顧客インサイトを探っていく
ここでは、それぞれの方法と手順を詳しく解説します。顧客インサイトの追求ができないと悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
社内のデータ収集を行う
まずは、社内にあるデータをできる限り集めましょう。必要なデータは何を分析するかによって異なるため、目的に応じてデータ収集をしてください。
その後はデータ分析を効率よく行うために、必要なデータと不要なデータに分け、さらに必要なデータを項目別に分けていきます。必要なデータが不足している場合は、次に紹介する追加調査にてデータ収集を行ってください。
なお、データ収集に時間がかかる場合は、ツールの導入をすることで効率よく進められます。膨大なデータを集めるには時間がかかるため、前向きに導入を検討しましょう。
追加調査にて不足しているデータを集める
追加調査にて、不足しているデータを集めましょう。追加調査はアンケート、インタビュー、SNSからの口コミの検索等が挙げられます。アンケートの場合は顧客が答えやすい環境作りをしたり、重要な情報が得られるよう事前にテンプレなどを作成したりすると、スムーズに情報収集ができます。
SNSであれば、なるべく鮮度の高い情報を集め、具体的な意見を持ってくるようにしましょう。ただし、誰でも書き込めるSNSだからこそ、本当に顧客の意見か判別する必要があります。
収集場所に応じて意識するべきポイントを変えていくのが、上手にデータ収集をするコツです。
収集したデータを分析する
収集したデータを分析します。アクセス数やアンケートの満足度から得られるデータ、アンケートの内容から得られる情報をもとにデータ分析をしていきます。
データ分析のポイントとして、顧客の表面上の言葉だけを解説するのではなく、言葉の裏側まで追求することが重要です。基準を設けて、それぞれの共通点を探していきましょう。
フレームワークを用いて顧客インサイトを探っていく
収集したデータを分析した後は、フレームワークを用いて顧客インサイトを探っていきます。フレームワークには収集したデータからターゲットとなる顧客を想定する「ペルソナ分析」や、顧客のニーズや行動を発見する「共感マップ」などが挙げられます。
複数のフレームワークを用いて、顧客のニーズや痛点がどの段階で発生しているかを理解し、改善の機会を特定しましょう。
1つのやり方にこだわっていると、新たな視点を得にくくなり、顧客インサイトを探りにくくなります。顧客の立場に立って、柔軟な視点で顧客インサイトを探っていきましょう。
顧客インサイトを見つけるときの視点5つ
顧客インサイトを見つけるときの視点は、以下の5つです。
- 人間の欲求から探す
- 手段と目的から探す
- 矛盾から探す
- よい面と悪い面から探す
- 現象と原因から探す
顧客インサイトがうまく見つけられないときは、これから紹介する内容を参考にしてください。
人間の欲求から探す
顧客インサイトを見つけるときは、人間の持つ普遍的な欲求から探してみましょう。具体的には、「楽しみたい」「快適に暮らしたい」といった欲求は、時代が変化しても多くの人が抱いてる「自分を大切にしたい」欲求です。社会的に認められたいといった欲求も、人間の持つ普遍的な欲求です。
このような欲求をもとにして、自社の商品・サービスがどの欲求を満たすものなのか考えてみましょう。
事実、数値などのデータも重要ですが、人対人である以上、感情や欲求を理解するのはとても大切なことです。
手段と目的から探す
顧客がなぜその商品・サービスを手に取ったのか、どのようなことに利用するのか、手段と目的から考えてみましょう。
例として、日々の生活に役立つものが欲しいときは、日々の生活を楽にしたい以外にも、健康的に暮らしたい、環境に配慮した製品で丁寧な暮らしがしたいなど欲求はさまざまです。
このような顧客が抱える欲求や悩みを把握して、根本的な解決方法を見つけることで、需要のあるサービス・商品を生み出すだけでなく、新たなニーズを作り出すことも可能です。
自身がどういったときに自社のサービス・商品を欲しくなるのか、顧客目線で考えることで新な発見もあるかもしれません。
矛盾から探す
顧客の取った行動・発言から矛盾を見つけて、顧客インサイトを探る方法もあります。顧客の意見と行動、現実と理想のギャップなどから、商品・サービスを選んだ理由を探してみましょう。
具体的にはダイエットしたいのに高カロリーな食品を選んでしまう、買ってはいけないけれどついつい買ってしまう理由などが挙げられます。
なぜ高カロリーな食品を選んでしまうのか、ついつい買ってしまうのかといった矛盾を追求して、それらを解決する商品・サービスを作れれば、顧客の購買意欲を刺激できます。
よい面と悪い面から探す
物事のよい面と悪い面から、商品・サービスの見方を変えてみましょう。顧客が抱いている悪い面も、視点を変えればポジティブな内容につながっていることかもしれません。
仮に商品の短所だとしても、伝え方を工夫することでポジティブな内容となり、誰かの購買意欲を刺激する可能性もあります。例えば、刻み海苔用に開発されたハサミが、消費者の声に耳を傾け、シュレッダー用途として再販したところ、売り上げが大幅に上がった例があります。
「こうであるべき」といった固定概念にとらわれず、さまざまな視点から商品・サービスのよい面と悪い面を見ていきましょう。
現象と原因から探す
現象と原因から探しましょう。顧客はアンケートでその商品を買った理由は紹介してくれるものの、なぜその商品を選んだのか、ほかの商品に興味が湧かなかったのか原因までは答えないケースが多くあります。
これは顧客自身が原因を把握していないからです。
なぜその現象に至ったのか、原因を探っていくことで、顧客自身が気づいていない新しい視点を見つけられます。
顧客インサイトを分析するときに意識したいポイント3つ
顧客インサイトを分析といっても、顧客自身が気づいていない本質であるため、探り当てるのが難しいのが本音です。
そこで意識したいポイントが、以下の3つです。
- 分析や意思決定の際の基準を共通化する
- 根拠を提示する
- 客観視を意識する
これから紹介する内容をもとにして、顧客インサイトを分析するときの参考にしてください。
分析や意思決定の際の基準を共通化する
顧客インサイトの分析や意思決定の際には、基準を共通化しましょう。例えば、顧客満足度や顧客忠誠度を測定する方法を統一化し、同じ基準で評価します。なぜなら、顧客インサイトは数値やデータで可視化するのが難しいものだからです。
そこで社内、チームで共通フレームワークを用いることで可視化しやすくなり、顧客インサイトの分析がしやすくなります。
根拠を提示する
顧客インサイトをマーケティングに反映するには、根拠を提示していきましょう。データがどこから収集され、どのように分析されたかを説明できれば、関係者はデータの信頼性を評価できます。
とはいっても、顧客インサイトで根拠を提示するのは難しいものです。その場合は物事を数値化して、周囲が納得するデータを見つけていきましょう。
例えば、時系列データとトレンドを組み合わせて顧客の行動をデータ化します。すると、一過性のものなのか、持続的なトレンドに基づいているのか判断しやすくなります。ただし、中には数値化できないデータもあるかもしれません。
数値化できないデータに関しては、なるべく客観的な観点から考えるようにするのがポイントです。
顧客の立場から考えてみるのも、説得力をもたらす方法です。
客観視を意識する
訴求方法を間違えると、企業の印象が悪くなる可能性があります。特にデリケートな商品や、多くの人が悩むことを解消する商品を訴求する場合、訴求方法を間違えると企業の印象が悪くなってしまいます。客観的に見て不快に感じる人はいないか、さまざまな視点から確認することが重要です。
ときには、ストレートな表現ではなく、あえて抽象的・間接的な表現を用いて訴求してみるのもよいでしょう。周囲を考慮しながら、上手に商品・サービスのよさを伝えられるよう工夫が必要です。
まとめ
この記事では、顧客インサイトの意味から活用するメリット、分析するときのポイントなどを徹底解説しました。顧客インサイトは顧客自身も気づいていない直感や本音の土台となるものであり、購買意欲を左右します。
顧客インサイトを活用して、集客力をアップしていきましょう。
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