大澤要輔『Webhit（ウェビット）』編集長

売上が伸びる！マーケティングコンセプト設計のポイントと失敗しないための注意点

2025年4月11日

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「良い商品を作れば売れる」
「広告を打てば集客できる」

と思っていませんか？

実は、売れる企業には共通点があります。

それは明確なマーケティングコンセプトを持っていること。ユニクロ、ニトリ、無印良品も、単なる戦略ではなく、一貫したマーケティングコンセプトを軸にビジネスを展開し、成功を収めています。

本記事では、

マーケティングコンセプトの基本と重要性
成功企業の事例と具体的な設計ステップ
よくある失敗と対策

をわかりやすく解説します。

売れる仕組みを作りたいなら、まずはマーケティングコンセプトの設計から始めてみてください。

曖昧なコンセプトに悩んでいる企業担当者の方、これからマーケティングコンセプトを策定しようと考えている起業家の方、必見です。

目次ーこの記事で分かることー

マーケティングコンセプトとは

マーケティングコンセプトとは、企業が顧客に提供する価値や、顧客との関係性を明確に定義した考え方です。

顧客中心の経営を実現するための指針となり、すべてのマーケティング活動の軸となります。これは、単なる製品やサービスの特徴を説明するだけでなく、顧客にとってどのような便益があるのか、どのような体験を提供するのかといった、より包括的な視点を含みます。

企業理念やビジョンと連動しながら、市場における競争優位性を築き、持続的な成長を可能にするための重要な要素です。

マーケティングコンセプトの定義

マーケティングコンセプトは、顧客のニーズとウォンツを理解し、顧客満足を追求することで、企業の目標を達成しようとする経営哲学です。製品中心の考え方ではなく、顧客中心の考え方である点が重要です。顧客に価値を提供し、長期的な関係の構築で、企業の利益も最大化されるという考えに基づいています。

明確なマーケティングコンセプトは、企業活動全体の方向性を定め、一貫したメッセージを発信する上で不可欠です。

製品開発、価格設定、プロモーション、販売チャネルなど、あらゆるマーケティング活動はこのコンセプトに基づいて行われます。

マーケティングコンセプトが重要な理由

現代の市場は、消費者のニーズが多様化し、競争が激化しています。このような環境下で、企業が生き残っていくためには、顧客を深く理解し、顧客にとって真に価値のある製品やサービスの提供が不可欠です。マーケティングコンセプトは、顧客中心の経営を実現するための羅針盤となり、以下の点で重要です。

顧客満足度の向上
ブランドイメージの確立
競争優位性の獲得
持続的な成長の実現

明確なマーケティングコンセプトを持つことで、企業は顧客との強固な関係を築き、市場での成功を収められます。

例えば、サントリーは「水と生きる」という企業理念に基づき、水資源の保全や環境問題への取り組みを積極的に行っています。これは、社会貢献活動を通じて企業イメージを高め、顧客からの共感を獲得するマーケティング戦略の一環と言えるでしょう。

また、イオンは「お客さま第一主義」を掲げ、地域社会への貢献や従業員満足度の向上にも力を入れています。

顧客だけでなく、様々なステークホルダーとの良好な関係構築が、企業の長期的な成長につながるのです。

マーケティングコンセプトとマーケティング戦略の違い

マーケティングコンセプトとマーケティング戦略は、どちらもマーケティング活動において重要な概念ですが、それぞれ異なる役割を果たします。

マーケティングコンセプトは、企業のマーケティング活動全体の指針となる根本的な考え方であるのに対し、マーケティング戦略は、そのコンセプトを実現するための具体的な行動計画です。下記の表に違いをまとめました。

項目	マーケティングコンセプト	マーケティング戦略
定義	顧客に提供する価値や顧客との関係性を定義した考え方	マーケティングコンセプトを実現するための具体的な行動計画
役割	マーケティング活動全体の指針	目標達成のための手段
内容	顧客ニーズ、ターゲット市場、競争優位性など	製品開発、価格設定、プロモーション、販売チャネルなど
期間	長期的な視点	短期～中期的な視点

例えば、ある企業が「高品質な商品を低価格で提供する」というマーケティングコンセプトを掲げたとします。このコンセプトを実現するためのマーケティング戦略としては、効率的な生産システムの構築、低コストな流通チャネルの確保、効果的な広告宣伝などが考えられます。

このように、マーケティングコンセプトは戦略策定の基盤となり、戦略はコンセプトを実現するための具体的な手段となります。

売れるマーケティングコンセプト設計の３つのポイント

効果的なマーケティングコンセプトは、商品やサービスの成功を大きく左右します。ここでは、売れるマーケティングコンセプトを設計するための3つのポイントを解説します。

ターゲット顧客の明確化

誰に商品やサービスを届けたいのかを明確にすることは、マーケティングの第一歩です。ターゲット顧客を明確にすることで、彼らのニーズや行動パターンを理解し、効果的なマーケティング戦略を立てられます。

漠然とした顧客像ではなく、具体的な属性やライフスタイルを持つペルソナ設定で、より精度の高いマーケティング活動が可能になります。

ペルソナ設定の活用

ペルソナ設定とは、ターゲット顧客を具体的に人物像として表現する手法です。名前、年齢、性別、職業、趣味、ライフスタイル、価値観など、詳細な情報を設定で、まるで実在する人物のように顧客像を捉えられます。

ペルソナの設定によって、顧客のニーズや行動をより深く理解し、共感性の高いマーケティングメッセージの作成が可能です。

ペルソナ設定シートなどを活用し、具体的なペルソナ像を作成しましょう。顧客の行動や心理を想像し、彼らがどのような情報に触れ、どのような購買行動をとるのかを具体的にイメージすれば、より効果的なマーケティング施策を立案できます。

例えば、20代女性をターゲットとする化粧品ブランドであれば、
「都内に住む28歳の会社員女性で、美容に関心が高く、SNSで情報収集を行う」
といった具体的なペルソナを設定することで、彼女がどのような情報に魅力を感じ、どのような購買行動をとるのかを予測しやすくなります。

顧客ニーズの深堀り

顧客ニーズを正確に捉えることは、商品やサービス開発、そしてマーケティング戦略において非常に重要です。顧客が本当に求めているものは何か、どのような課題や不満を抱えているのかを深く理解すると、顧客にとって価値のある商品やサービスが提供できます。

顧客ニーズを深堀りするためには、様々な市場調査の方法を活用すが有効です。

顧客ニーズを捉えるための市場調査の方法

顧客ニーズを捉えるための市場調査には、様々な方法があります。代表的な方法として、アンケート調査、インタビュー調査、グループインタビュー、行動観察などが挙げられます。それぞれの調査方法には特徴があり、目的に合わせて適切な方法の選択が重要です。

複数の調査方法を組み合わせると、より多角的な視点から顧客ニーズを捉えられます。

調査方法	概要	メリット	デメリット
アンケート調査	質問票を用いて、多数の回答者から情報を収集する方法	短期間で多くのデータを収集できる	回答者の本音が得られない場合がある
インタビュー調査	1対1で面談を行い、詳細な情報を収集する方法	回答者の深層心理を探ることができる	時間とコストがかかる
グループインタビュー	複数人で話し合いを行い、意見やアイデアを収集する方法	多様な意見を収集できる	特定の意見に偏る可能性がある
行動観察	顧客の行動を直接観察し、ニーズを分析する方法	実際の行動に基づいた情報を得られる	観察に時間がかかる

競合分析

自社だけでなく、競合他社の状況を分析することも、マーケティングコンセプト設計において重要な要素です。

競合他社の強みや弱み、差別化ポイントなどの分析で、自社の優位性を明確にし、効果的な競争戦略を立てられます。競合分析を行い、市場における自社の立ち位置を客観的に把握すれば、成功確率も高められるでしょう。

競合他社のマーケティングコンセプト分析

競合他社のマーケティングコンセプトを分析することで、市場におけるトレンドや顧客ニーズの変化を把握できます。

競合がどのようなターゲット顧客を設定し、どのようなメッセージを発信しているのかを分析することで、自社のマーケティングコンセプトを差別化し、競争優位性を築けます。

SWOT分析などを活用し、競合他社と比較した自社の強みと弱みを明確にすることが重要です。例えば、競合他社が低価格戦略をとっている場合、自社は高品質・高価格帯の商品で差別化を図る、といった戦略を立てることができます。また、競合他社の成功事例や失敗事例を分析することで、自社のマーケティング活動におけるリスクを軽減し、成功の可能性を高めることができます。例えば、競合他社が特定の顧客層に支持されている場合、その理由を分析することで、自社も同様の顧客層にアプローチするためのヒントを得られます。

逆に、競合他社が失敗したマーケティング施策の分析で、自社が同じ轍を踏まないように注意できます。

事例で学ぶ！成功するマーケティングコンセプト

優れたマーケティングコンセプトは、企業の成長を大きく左右します。ここでは、日本を代表する企業の成功事例を通して、効果的なマーケティングコンセプトの作り方を学びましょう。

ユニクロ

ユニクロのマーケティングコンセプトは「Made for All（服を着るすべての人へ）」です。これは、年齢、性別、人種、貧富の差に関わらず、すべての人が快適に過ごせる服を提供するという理念を表しています。

ユニクロは、高品質でありながら低価格を実現することで、このコンセプトを体現しています。

具体的な施策として、機能性素材の開発やシンプルなデザインの採用、グローバルな生産体制の構築などが挙げられます。これらの施策によって、世界中の人々に受け入れられるブランドへと成長しました。

また、近年ではサステナビリティにも力を入れており、環境負荷の低減にも取り組んでいます。

ユニクロのマーケティングコンセプト成功要因

明確なターゲット設定：すべての人をターゲットとしているため、市場規模が大きい。
顧客ニーズへの的確な対応：低価格と高品質の両立というニーズに応えている。
効果的なプロモーション戦略：広告やSNSなどを活用した効果的なプロモーションを実施。

ニトリ

ニトリのマーケティングコンセプトは「お、ねだん以上。ニトリ」です。これは、価格以上の価値を提供するという約束を表しています。

ニトリは、商品の企画、製造、物流、販売までを一貫して自社で行い、低価格を実現しています。また、デザイン性にもこだわり、消費者のニーズに応じた商品開発を行っています。

ニトリは、プライベートブランド戦略の展開で、他社との差別化を図っています。また、店舗展開にも力を入れており、全国に多くの店舗を展開しています。顧客体験の向上にも注力しており、オンラインストアの充実や、店舗での接客サービスの向上にも取り組んでいます。

ニトリのマーケティングコンセプト成功要因

価格戦略：低価格帯の商品を提供することで、幅広い層の顧客を獲得。
品質へのこだわり：低価格でありながら、品質にもこだわっている。
豊富な品揃え：家具、インテリア雑貨、日用品など、幅広い商品を展開。

無印良品

無印良品のマーケティングコンセプトは「感じ良い暮らし」です。

これは、シンプルで無駄のないデザイン、使いやすさ、そして環境への配慮を重視した商品を提供し、消費者の生活を豊かにすることを目指しています。無印良品は、素材の選択から製造工程まで、環境負荷を低減するための取り組みを行っています。

無印良品は、ブランドイメージの統一で、顧客ロイヤルティを高めています。また、グローバル展開にも力を入れており、世界各国に店舗を展開しています。

商品開発においては、顧客の声を積極的に取り入れ、常に進化を続けています。

無印良品のマーケティングコンセプト成功要因

ブランドイメージの一貫性：シンプルで無駄のないデザイン、環境への配慮など、一貫したブランドイメージを構築。
商品開発力：顧客ニーズを捉えた商品開発力が高い。
グローバル展開：世界各国に店舗を展開し、ブランド認知度を高めている。

企業名	マーケティングコンセプト	ターゲット	主な施策
ユニクロ	Made for All（服を着るすべての人へ）	すべての人	低価格・高品質、機能性素材、グローバル展開
ニトリ	お、ねだん以上。ニトリ	価格重視の消費者	低価格戦略、プライベートブランド、店舗展開
無印良品	感じ良い暮らし	シンプルで自然な暮らしを求める消費者	ブランドイメージの統一、環境への配慮、グローバル展開

これらの企業は、明確なマーケティングコンセプトを設定し、それを実現するための具体的な施策を実行することで、成功を収めています。これらの事例を参考に、自社のマーケティングコンセプトを策定し、ビジネスの成長につなげましょう。

よくある失敗例と対策

せっかくマーケティングコンセプトを策定しても、それが効果を発揮しなければ意味がありません。ここではよくある失敗例と対策を紹介します。

コンセプトが曖昧

コンセプトが曖昧だと、社内での共有が難しく、マーケティング活動の方向性が定まりません。結果として、顧客に価値が伝わりにくく、売上向上に繋がりません。

具体的な対策

具体的な数値目標を設定する
例えば、「3ヶ月以内にウェブサイトへのアクセス数を20%向上させる」といった具体的な目標設定で、コンセプトを明確化しやすくなります。
誰に何を提供するのかを明確にする
ターゲット顧客を具体的に設定し、彼らにとっての価値を明確に言語化すると、コンセプトの軸がぶれにくくなります。ペルソナ設定を活用すると効果的です。
定期的にコンセプトを見直す
市場環境や顧客ニーズの変化に合わせて、コンセプトを定期的に見直し、必要に応じて修正し、常に最適な状態を保ちましょう。

ターゲット設定が間違っている

ターゲット設定が間違っていると、どんなに優れた商品やサービスでも顧客に響きません。市場規模が小さすぎたり、ニーズがなかったりする可能性があります。

具体的な対策

市場調査を徹底的に行う
顧客の属性、ニーズ、購買行動などを詳細に調査することで、適切なターゲットを設定できます。アンケート調査やインタビュー調査などを活用しましょう。
データに基づいて判断する
感情や思い込みではなく、市場データや顧客データに基づいてターゲットを絞り込むことが重要です。経済産業省の統計データなどを参考にしましょう。
ターゲットを絞り込みすぎない
ニッチすぎるターゲット設定は、市場規模を縮小させる可能性があります。ある程度の幅を持たせたターゲット設定を心がけましょう。

市場の変化に対応できていない

市場は常に変化しています。顧客のニーズや競合の状況も変化するため、一度設定したマーケティングコンセプトがいつまでも有効とは限りません。

具体的な対策

市場動向を常に把握する
ニュースサイトや業界誌、SNSなどを活用して、市場の最新動向を常にチェックしましょう。Googleトレンドなどのツールも活用できます。
競合分析を定期的に行う
競合他社のマーケティング戦略や顧客獲得方法を分析することで、市場の変化に対応するためのヒントを得られます。
PDCAサイクルを回す
マーケティングコンセプトに基づいた施策を実施した後は、必ず効果測定を行い、改善策を検討しましょう。PDCAサイクルを継続的に回すことで、市場の変化に柔軟に対応できます。

失敗例	対策
ニーズの誤解	顧客インタビューやアンケート調査を実施し、真のニーズを把握する。日経クロストレンドのようなマーケティング専門メディアも活用する。
差別化不足	独自の強みを明確化し、競合との差別化ポイントを打ち出す。USPを明確に設定する。
発信不足	ウェブサイト、SNS、広告などを活用し、積極的に情報を発信する。コンテンツマーケティング戦略を立てる。
時代遅れのコンセプト	トレンドや社会情勢の変化を捉え、定期的にコンセプトを見直す。外部環境分析を怠らない。

これらの失敗例と対策を参考に、効果的なマーケティングコンセプトを策定し、ビジネスの成功に繋げましょう。

マーケティングコンセプト策定ステップ

効果的なマーケティングコンセプトを策定するためには、明確なステップを踏むことが重要です。以下のステップに従って、自社に最適なマーケティングコンセプトを作り上げていきましょう。

現状分析

まず、現状を客観的に分析します。自社の強み・弱み、市場機会・脅威を分析するSWOT分析や、市場の規模や成長性、顧客の属性やニーズ、競合他社の動向などを調査することが重要です。現状分析を徹底的に行うことで、市場における自社の立ち位置を正しく把握し、効果的なマーケティングコンセプトを策定する基盤を作ることができます。

具体的な分析項目は以下の通りです。

分析項目	詳細
市場分析	市場規模、成長率、トレンド、顧客ニーズ、競合状況などを調査します。経済産業省の統計データなどを活用できます。
顧客分析	顧客の属性、購買行動、ニーズ、ペインポイントなどを分析します。顧客アンケートやインタビューなどの実施で、より深い理解を得られます。
競合分析	競合他社の製品・サービス、価格、販売チャネル、マーケティング戦略などを分析します。競合他社のウェブサイトや広報資料などを参考に、自社との差別化ポイントを明確にします。
自社分析	自社の強み・弱み、製品・サービスの特徴、経営資源などを分析します。客観的な視点を持つことが重要です。

コンセプト設定

現状分析に基づき、目指すべき方向性を明確に示したマーケティングコンセプトを設定します。コンセプトは簡潔で分かりやすく、顧客にとっての価値を明確に表現する必要があります。顧客にどのような価値を提供し、どのような存在でありたいかを明確に定義することで、その後のマーケティング活動の指針となります。

コンセプト策定のポイント

顧客視点：顧客にとってのメリットを明確にする
差別化：競合他社との差別化ポイントを明確にする
実現可能性：実現可能な範囲で設定する
簡潔明瞭：分かりやすく、覚えやすい表現にする

例えば、サントリー「伊右衛門」の「現代の茶室」というコンセプトは、ターゲット層である大人のための落ち着いたお茶という価値を提供し、他のお茶飲料との差別化を図っています。

具体的な施策立案

設定したマーケティングコンセプトに基づき、具体的なマーケティング施策を立案します。施策は、ターゲット顧客に効果的にメッセージを伝え、購買行動を促進するものでなければなりません。ウェブサイト、SNS、広告、イベントなど、様々なチャネルを組み合わせて、効果的なマーケティングミックスを構築することが重要です。