企業経営されている方の中には、ニッチ市場の開拓を図りたいが参入方法がわからないとお悩みの方も大勢います。ニッチマーケティングは、ニッチ市場参入を図るならぜひ知っておきたい戦略です。
本記事では、ニッチ市場参入を目指す方や参入したばかりの方に向け、ニッチマーケティングの基本やメリット・デメリット、事例から学ぶ成功のポイントなどを説明します。ニッチ市場参入やシェア拡大を目指す際の参考にしてください。
Webマーケティングにおけるニッチ市場・ニッチマーケティングとは
Webマーケティングにおける「ニッチ市場」「ニッチマーケティング」の意味は、次の通りです。
- ニッチ市場・・・小規模かつ特定領域で需要のある市場
- ニッチマーケティング・・・ニッチ市場での販促活動全般
それぞれ、次の項目で詳しく説明します。
ニッチ市場|小規模な特定領域で需要がある市場
マーケティングにおけるニッチ市場とは「小規模かつ特定の領域で需要がある市場」を指しています。市場が限定的であるために幅広いニーズはないものの、特定の顧客層から強く求められる市場です。
市場が狭く大企業が進出しづらいため、中小企業や個人事業主も戦略次第で市場参入やシェア拡大を図りやすい点が特徴です。需要と供給がマッチすれば、一般市場より大きな成果も期待できます。ニーズに対する専門的な知識やスキルがあれば、より参入しやすくなるでしょう。
ニッチマーケティング|ニッチ市場での販促活動全般
ニッチマーケティングとは、広報活動や宣伝、販売促進などのマーケティングをニッチ市場で行うことです。ニッチ市場で販路を拡大してシェア獲得に至るためには、一般的な市場よりも深く顧客のニーズを知り、顧客の求めに適した商品・サービスを展開する必要があります。
ニッチ市場には独自の戦略が求められるため、一般市場とは違った難しい側面もみられます。しかしそこで上手く販路を築けば、大きなビジネスチャンスが得られるでしょう。
ニッチマーケティングとブルーオーシャン戦略の違い
ニッチマーケティングとよく似た考え方に、ブルーオーシャン戦略があります。どちらも競合を避ける戦略であるのは変わりありませんが、「開拓先」に大きな違いがあります。
ニッチ市場は「競合の少ない市場」をみつけて開拓するのが特徴です。対するブルーオーシャン戦略は「まだ誰もみつけていない新たな市場」を開拓します。
ニッチ市場におけるマーケティングのメリット5つ
ニッチ市場参入には、主に下記5つのメリットがあります。
- 競合が少ないため価格競争に巻き込まれにくい
- アイディア次第で高い収益も期待できる
- 市場でのブランド価値を上げられる
- 特定層へのマーケティングによりコストを抑えられる
- 企業のファンを獲得しやすい
この項では、それぞれのメリットを詳しく説明します。
競合が少ないため価格競争に巻き込まれにくい
ニッチ市場は、市場規模が小さい上に大企業が参入する可能性も低いため、一般的な市場に比べると競合相手が少ない傾向です。競合相手が少なければ価格競争に巻き込まれにくくなり、自社の販促活動や商品開発、サービス向上などに集中できるようになります。
ニッチ市場なら、競合が多い大規模市場では難しかったオリジナルな発想のマーケティング活動も容易です。ターゲットとなる顧客層のコアな要望や意見を取り入れた新しい商品・サービスの展開も実現しやすくなるでしょう。
アイディア次第で高い収益も期待できる
ニッチ市場は需要が限定的で、競合相手も一般市場ほど多くはありません。そのため、誰も参入していない分野への進出や新しいアイディアの実現などにより、市場の先駆者になれる可能性があります。
競合が少ないため、ある程度は自由な価格設定も可能です。市場のニーズと自社のマーケティングが上手く合致すれば、シェアを独占できるなど高収益も望めます。自社の成長を目指すなら、ニッチ市場は挑戦する価値のある市場といえるでしょう。
市場でのブランド価値を上げられる
競合の少ないニッチ市場は、自社に顧客の注目を集めやすい傾向があります。そのため、市場のニーズに適切に応えれば、企業の信頼度やブランド力を向上させることも可能です。マーケティング次第では「〇〇といえばA社」と、代名詞的な企業になる可能性も秘めています。
さらに、顧客の注目を集めて企業が大きくなると、多くのメディアの目にも止まるでしょう。メディアをとおして多くの方々に商品・サービスが認知されれば、幅広い分野へ進出するトップ企業に躍り出るチャンスも出てきます。
特定層へのマーケティングによりコストを抑えられる
ニッチ市場へのマーケティングは、比較的低コストで行えます。その理由は、ニッチ市場は一般市場と比較して、広告費や調査費などを節減しやすいためです。また、パーソナライズドマーケティング(一人ひとりに合わせたサービスなどの提供)により、ROI(投資収益率)の向上が期待できるのもメリットの1つです。
ただし、まったく知識のない分野やノウハウが蓄積されていない分野だと、適切な戦略をみつけるまでに時間がかかる場合があります。その場合はかえってコストが高くついてしまう可能性もあるため、参入時には注意が必要です。
企業のファンを獲得しやすい
ニッチマーケティングは、特定分野のニーズに応える商品・サービスを展開する関係から、顧客の評価を得やすいのが特徴です。評価が高まると、口コミやSNSを使って自社の商品・サービスを宣伝してくれる顧客も出てくるようになります。
戦略を練りながら時間をかけて顧客の声に応え続けていけば、それに伴って顧客満足度も上がっていくでしょう。顧客一人ひとりの満足度が上がると、自社のLTV(顧客生涯価値)も増えていきます。
ニッチ市場におけるマーケティングのデメリット
ニッチマーケティングには、次のようなデメリットもあります。
- 市場規模に限界があるため事業拡大戦略が取りにくい
- 後発の競合が出現する可能性がある
ニッチ市場に参入するなら、メリットだけではなくデメリットの理解も大切です。ここでは、上記2つのデメリットについて対策を交えながら詳しく説明します。
市場規模に限界があるため事業拡大戦略が取りにくい
ニッチマーケティングの難しい点は、狭い市場をターゲットにしているために市場規模の拡大施策が進めにくいところです。マーケティングが上手くいけば、ある程度の顧客確保までは辿り着けます。しかし潜在的な顧客が少ないため、そこから先は頭打ちになりがちです。
一般的な対策は「安定収益を優先し、市場の様子をうかがいながらニッチマーケティングを継続する」または「事業拡大を目指し、一般市場にマーケティングの場を移す」の二択となります。
後発の競合が出現する可能性がある
自社がニッチ市場である程度の成功を収めると、他企業もその様子をみて参入を始める場合があります。他企業からみれば既にニッチ市場の成功事例があるため、その事例を見習いながら事業展開が可能です。
また、世間の流行や市場の動向により、将来的にニッチ市場がニッチ市場ではなくなる可能性もあります。そうなると、中小企業はもちろん大企業の参入も考えられるでしょう。このような後発の競合への対策として、シェアを獲得している現状に満足せず、独自のカラーを築いて競合との差別化を進めていくことが重要です。
5社から学ぶ「ニッチマーケティング」の成功事例
ここでは、ニッチマーケティングの成功事例として、業界の異なる5社を紹介します。
- 株式会社セコマ
- 株式会社ブシロード
- 株式会社カーブスジャパン
- FIRE KIDS(ファイアーキッズ)
- Patagonia(パタゴニア)
成功事例は、自社の成功に役立つヒントの宝庫です。独自の視点や戦略を自社のマーケティングに活かしましょう。
株式会社セコマ
株式会社セコマは、北海道を拠点にしたコンビニエンスストア「セイコーマート」を運営する企業です。セイコーマートは、まず「エリアを北海道に特化」「店内で調理をするホットシェフの導入」などの戦略を取りました。
そのほかにも、「基本的に24時間営業を行わない」「直営店が多い」などの独自路線を築き、競合他社との差別化に成功しました。コンビニの概念をあえて破壊したオリジナリティあふれる戦略が、北海道No.1シェア獲得の秘訣です。
株式会社ブシロード
株式会社ブシロード(以下、ブシロード)は、TCG(トレーディングカードゲーム)に特化した市場で成功を収めている企業です。TCGは若年層の男性からシェアを集めており、まさにニッチな分野といえます。
ブシロードは、エンタメ業界で生き残るための差別化戦略として、TCGへ参入しました。当時の担当者は、家庭用ゲーム機を取り扱う中古ショップを訪れて、店内で遊べるカードゲーム専門ショップへの事業転換を促しました。その結果、TCGを世間に浸透させ2024年現在では、462億円の売上を達成しています。
株式会社カーブスジャパン
ニッチな女性専門フィットネスクラブとして知られているのが、アメリカ発フィットネスチェーン「カーブス」です。カーブスのフィットネスは「体を鍛えること」が主な目的ではなく「毎日の健康維持」を目的にしています。
そのため、健康意識の強い中高年の女性を中心に高い支持を得ています。カーブスの戦略は、中高年の女性にターゲットを絞ったニッチマーケティングに成功した事例の1つといえるでしょう。
FIRE KIDS(ファイアーキッズ)
ヴィンテージウォッチに目がないコレクターのニーズに応えるのが、「FIRE KIDS」です。店舗は横浜市にあり、1940年代のヴィンテージ時計から2000年代に入ってからの高級腕時計まで、さまざまな時計を扱っています。
以前は実店舗でのみ販売を行っていましたが、近年ではITツールの普及に合わせて、ECサイトの展開を始めています。FIRE KIDSは現在、ニッチ市場から全国の顧客に向けて事業拡大を狙っており、今後の成長が見込まれている企業の1つです。
Patagonia(パタゴニア)
パタゴニアは、米国で創業したアウトドアスポーツ企業です。パタゴニアのモットーは「地球が私たちの唯一の株主」です。創業から現在まで、企業単位で環境保護に積極的に取り組み、環境に優しい商品開発を行っています。
今では世界中で知られている素材「フリース」を考案したのもパタゴニアです。その後は環境への配慮から、オーガニックコットンへの切り替えを決断しました。パタゴニアの事例は、「環境問題」に特化したニッチマーケティングといえるでしょう。
ニッチ市場で成功するためのポイント3つ
ニッチ市場で成功するポイント3つを説明します。
- 市場のターゲットに踏み込んで深く理解する
- 流行りに惑わされず「定番商品」を中心に展開する
- その企業にしかない付加価値を提案して独自カラーを展開する
自社が展開する事業やマーケティングと照らし合わせながら確認すると、ポイントを掴みやすくなるでしょう。
市場のターゲットに踏み込んで深く理解する
顧客の顕在ニーズだけではなく潜在ニーズまで深く理解するのが、ニッチマーケティング成功のポイントです。市場のリサーチを念入りに行い、顧客が本当に求める商品・サービスに辿り着くことで、事業成功に一歩近づけます。
購入者インタビューや店頭キャンペーンなどを行い、人と人との直な触れ合いを大切にし、顧客の本音を聞きながら自社の信頼度を上げていく戦略も、ニッチ市場では特に有効です。
流行りに惑わされず「定番商品」を中心に展開する
時代には流行り廃りがあるのが一般的です。世間の流行りに乗って企業活動を展開すれば、短期的な業績は大きく見込めるでしょう。しかし、流行は一時的なものです。時期が過ぎたら商品がまったく売れなくなったというパターンも珍しくありません。
そのため、ニッチマーケティングでは「流行に左右されない」自社商品・サービスの展開が重要です。自社の事業に自信を持って世に出していけば、世間の波にも負けない強いマーケティング戦略が行えます。
その企業にしかない付加価値を提案して独自カラーを展開する
成功事例で紹介した5社は、いずれもその企業にしかない付加価値でニッチ市場の生き残りを図っています。セコマはエリアの特化で成功し、ブシロードは男子学生の目を引きつけるカードゲーム、カーブスは健康を維持したい中高年女性をターゲットにしたマーケティング戦略が功を奏しました。
FIRE KIDSはリッチでラグジュアリーなビンテージの高額腕時計分野に進出し、ビンテージ時計ファンの心を掴んでいます。米国発祥のアウトドアウェア企業パタゴニアはコストより環境を優先し、環境問題に配慮した自然との共存を目指す企業です。
このように独自カラーの展開は、市場のニッチな需要を満たすと同時に自社の特徴を強くアピールし、マーケティングを成功に導いてくれます。
まとめ
ニッチマーケティングは、狭い市場で顧客の強い興味に向けてアプローチをする手法です。デメリット対策を行いながらメリットを享受すれば、これまでにない大きな成果も期待できます。今回紹介した5社の成功事例も参考に、今後の市場戦略をご検討ください。
ウェビットでは主に中小企業がWebマーケティング、Web集客を行ううえでのお悩みを解決するような情報を発信しております。気になられた方はぜひ、ほかの記事もご一読ください。