スマートフォンの普及により動画広告のフォーマットに縦型が登場しました。縦型で表示できる動画広告は、ユーザーの目に自然と触れやすい特徴から多くの企業で採用されています。
縦型動画広告の導入を検討している方に向けて本記事では、その概要や注目されている背景、メリット・デメリットを解説します。さらに、制作にかかる費用相場やコストを抑えるコツも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
縦型動画広告の概要と特徴
縦型動画広告とは、スマートフォンを横向きに変えることなく視聴できる動画広告です。スマートフォンの向きを変える手間がなく、画面いっぱいに広告を表示できる点が特徴です。
また、横型の動画広告と比較して画面サイズが300%上がるともいわれています。縦型動画広告は、InstagramやTikTok、YouTubeショートなどの媒体で配信されています。
縦型動画広告の配信が増えている背景
縦型動画広告の配信が増えている背景には、動画の視聴方法が変わったことが挙げられます。これまでは、パソコンで動画を視聴することが一般的で、そのユーザーに向けて動画広告を制作していました。
しかし、スマートフォンで動画を視聴する機会が増加し、縦型で配信できる広告キャンペーンが拡充しました。現在はスマートフォンの位置を変えずに動画広告を視聴できる縦型動画広告の制作が推奨されています。
また、モバーシャル株式会社が2018年に行った調査では、縦向きのみで動画を視聴するユーザーは32.6%という結果でした。2015年の27.6%と比べて5%増加しており、縦向きで動画を視聴するユーザーの割合が年々増加しているとわかります。
参考:モバーシャル株式会社「【第5回スマートフォンの動画視聴実態調査 】」
縦型動画広告の配信により得られるメリット
縦型の動画広告を配信するメリットは、以下3つあります。
- SNSで自然に配信できるため閲覧されやすい
- エンゲージメント率の向上が期待できる
- 視聴完了率を高め離脱の防止につながる
それぞれのメリットを解説しますので、縦型動画広告を制作する上での検討材料にしてください。
SNSで自然に配信できるため閲覧されやすい
InstagramやTikTokなどのSNSは、縦型で動画が配信されています。そのため、動画広告もほかの動画に合わせて縦型にすると、自然な形で配信可能です。
SNSはBtoCだけでなく、BtoBでも広く活用されています。SNSを利用しているユーザーは幅広く、顧客となる企業に在籍する社員だけでなく、意思決定者にも視聴してもらえる可能性があるためです。企業の認知拡大だけでなく、見込み顧客の獲得から優良顧客への昇格などに活用できます。
エンゲージメント率の向上が期待できる
縦型動画は、スマートフォンの画面にフルサイズで広告が表示されるため視認性が高く、情報をキャッチしやすいのが特徴です。これにより、広告内容を理解した状態でCTAに反応でき、エンゲージメント率を高められます。
TikTokが行った調査によれば、横型の動画に比べて縦型はエンゲージ率が9倍以上と高い傾向にあります。エンゲージメント率が高い動画は質が良いと判定されるため上位表示されやすく、エンゲージメント率がさらに高まるといったサイクルを生み出せるでしょう。
参考:TikTok For Business「「TikTok広告クリエイティブTips」公開 〜横型動画を縦型に編集することで、効果を最大化〜」
視聴完了率を高め離脱の防止につながる
縦型動画広告は、スマートフォンでの視聴に最適化しています。スマートフォンの向きを変えなくても、スムーズに視聴してもらえるためユーザーにストレスを与えません。また、画面全体に表示される仕様で、視認性が高いことから、ほかのコンテンツに気を取られにくい特徴もあります。
これにより、離脱が少なく、視聴完了率が高い傾向にあります。視聴者の興味を引き、広告効果を最大限に発揮できるでしょう。
縦型動画広告を配信におけるデメリットと改善策
縦型の動画広告を配信するデメリットには、以下2つが挙げられます。
- 伝えたい情報によっては不向きな場合がある
- 制作には高いスキルが必要になる
それぞれのデメリットを改善するための施策も紹介しますので、縦型動画広告を配信する際の参考にしてください。
伝えたい情報によっては不向きな場合がある
縦型動画は実際の視野よりも範囲が狭まるため、自然や風景などを紹介したい場合には不向きです。また、被写体が複数ある場合も向いていません。無理に縦型で動画広告を作成すると視聴者が違和感を抱き、視聴を停止する可能性があります。
視聴者に臨場感やインパクトを与えたい動画広告は横型で配信した方が効果を得られます。動画広告を制作する際は、どちらの方法が適しているか見極めましょう。
制作には高いスキルが必要になる
縦型動画広告の制作は難易度が高く、以下のようなスキルが求められます。
- 縦長の画面で風景や商品を収められるよう構図を考えるスキル
- 短時間で内容を伝えられるよう広告内容を要約するスキル
- 動画編集スキル(カット・ズーム・引きの度合いやタイミングの見極めなど)
社内で動画制作スキルのある方がいない場合や求めるクオリティによっては、動画制作会社に依頼するとよいでしょう。
縦型動画広告を配信できるプラットフォーム
縦型動画広告を配信できるプラットフォームを8つ紹介します。
- YouTube
- TikTok
- X(旧:Twitter)
- LINE
- Smartnews
マーケティング戦略に縦型動画広告を取り入れたいと考えている方は、こちらを参考に配信先を検討しましょう。
YouTube
動画配信に特化したYouTubeには、スマートフォンに最適化した動画「ショート」があります。ショートの動画内に最大60秒の縦型動画広告を配信できます。広告種別は複数あり、目的によって選択可能です。
- アプリ インストール キャンペーン
- 動画アクション キャンペーン(VAC)
「アプリ インストール キャンペーン」は、アプリのユーザー獲得やプロモーションを目的とした広告に適しています。また、「動画アクション キャンペーン(VAC)」はコンバージョンの向上を目的とした場合に効果があります。
YouTubeは幅広い年代の方が利用しているプラットフォームです。業種を問わず、どの企業へのアプローチにも向いています。
TikTok
TikTokは手軽にショート動画をアップロードできるアプリで、広告には以下の4種類が挙げられます。
- 起動画面広告
- インフィード広告
- チャレンジ広告
- 運用型広告
なお、どの種類の広告がアプローチに適しているかは、商品やサービスの種類、業態によって異なります。TikTokの利用は、10代・20代が中心で、30代以降は少ない傾向にあります。
ネットリテラシーの高い世代が利用しているため、有益な情報ではないと判断された場合は、最後まで広告を視聴しません。動画のなかに溶け込むような、宣伝色の少ない広告を配信するよう心がけましょう。
Instagramにおいて、縦型の動画広告を配信できるのはストーリーズとリールです。Instagramの動画広告にはCTAも設定できるため、お問い合わせや購入などを促すことも可能です。配信する際は目的を選択でき、BtoBに適合する内容には、以下が挙げられます。
- 認知度アップ
- 動画再生数のアップ
- コンバージョン
- エンゲージメント
- リード獲得
- カタログ販売
InstagramはYouTubeと同様に幅広い年齢の方に利用されています。飲食業界やアパレル業界、美容業界など視覚に訴える商品やサービスに向いています。
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X(旧:Twitter)
Xでは、ポストとポストの間に動画広告が配信されるほか、一般的な動画広告以外に以下の配信方法もあります。
- ウェブサイトボタン付き
- アプリボタン付き
- カンバセーションボタン付き
- 投票付き
「ウェブサイトボタン付き」の動画広告は70文字までのサイトタイトルやリンクの設置に対応しています。また、「アプリボタン付き」の動画広告にはCTAの設置が可能です。ユーザーに求める行動に合わせた動画広告の設置を行えます。
Xは、主に10代・20代・30代が利用しているSNSです。50代以降の利用は少ない傾向にあります。リアルタイム性・情報拡散性の高さから、新商品や新サービス、限定キャンペーンなどの配信に適しています。
Facebookも動画広告の配信が可能で、主に以下2種類のフォーマットが用意されています。
- ソーシャル動画広告
- インストリーム広告
「ソーシャル動画広告」では、フィード(投稿)・ストーリーズ・リールに広告の配信を行います。また、「インストリーム広告」は、企業やクリエイターが配信する動画内で広告が配信される仕組みです。
いずれの動画広告も縦型で配信が可能です。ただし、インストリーム広告においては、横型動画広告で用いることを推奨されています。FacebookとInstagramはMeta社が提供しているSNSです。運営元が同じであるものの、利用している年齢層はFacebookの方がやや高めです。ビジネス利用のユーザーが多いことから、BtoBに適しています。
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Pinterestの動画広告は、コンテンツとコンテンツの間で動画広告が配信されます。動画広告は、以下2種類あります。
- スタンダード
- ワイド
「スタンダード」は通常の投稿と同じサイズ、「ワイド」は画面全体に動画広告が表示される仕組みです。画像の投稿がメインのSNSで、料理・ファッション・インテリア・美容などに興味関心が高いユーザーが利用しています。
視覚にアプローチが必要な商品やサービスを訴求したい場合に向いています。なお、Pinterestは米国のキーワード調査が可能なため、トレンドを用いた広告配信も可能です。
LINE
LINEでも縦型動画広告の配信が可能で、ターゲティングを設定して効率よく広告を配信できます。
- デモグラフィック配信
- オーディエンス配信
- 類似配信
「デモグラフィック配信」は、ユーザーのプロフィール項目を利用した広告の配信が行えます。「オーディエンス配信」では、ユーザーのウェブトラッキング情報を活用した広告の配信が可能です。
LINEは連絡手段としても活用されるSNSで、年齢層問わず多くの方が利用しています。幅広い年齢層に認知してほしい商品やサービスのほか、購入ハードルが低い商品やサービスの広告配信に向いています。
Smartnews
Smartnewsでは、「Top News Video Ads」が縦型動画広告に該当し、トップ画面やメインのチャンネルにフルサイズの縦型の動画広告を配信できます。配信する広告は、性別や地域、チャンネルなどからターゲティングすることも可能です。
広告に嫌悪感を持つユーザーが少ない傾向にあり、広告のクリック率も高めです。また、通販を利用する頻度が高いユーザーも多く利用しているため、BtoB向けの通販サイトの広告とも相性がよいでしょう。
視聴者の興味を引く動画広告を作成するコツ
視聴者の興味を引く動画広告を制作するコツを3つ紹介します。
- 冒頭でインパクトを与える
- 音声OFFでも内容が伝わるようにする
- 60秒以内でコンパクトにまとめる
動画広告を制作する際に3つのコツを活かしましょう。
冒頭でインパクトを与える
冒頭にインパクトのある動画広告を制作しましょう。冒頭で広告内容に興味がないと感じたらスキップされたり、無視してスクロールされたりする可能性があるためです。
ただし、インパクトをつけるために「今だけ50%オフ」といった広告色の強いワードを入れるのはリスクがあります。広告色が強いものに嫌悪感を抱き、スキップを助長させる可能性があります。冒頭のワードや内容は、ユーザーの悩みに寄り添った構成にしましょう。
音声OFFでも内容が伝わるようにする
音声がない状態で動画を再生しても内容が伝わるように作成しましょう。SNSは通勤中や通学中など移動時に使用されることも多く、音声をONにして利用できない場面があるためです。また、周辺の音が大きい場所で動画を再生するケースでは、音声だけで内容を伝えるのは困難です。
音声OFFでも広告内容を伝えるには、テロップを入れる方法があります。特に伝えたい内容は、太字やサイズを大きくする、文字の色を変えるなど装飾をして強調させましょう。商品の上にテロップがあると視認性が低くなるため、余白にテロップを配置させるのが重要です。
60秒以内でコンパクトにまとめる
情報をまとめて伝えたい内容をコンパクトにしましょう。多くのプラットフォームが60秒と広告の長さが決められています。いかに要点を押さえて魅力を伝えるかがカギとなるため、商品やサービスのキャッチコピーや名前は、最初のほうに入れましょう。
動画広告の制作にかかる費用相場
動画広告の制作にかかる費用の相場と、制作費を抑えるコツを紹介します。縦型の動画広告を制作したい場合の検討材料にしてください。
制作費用の相場
動画広告の制作にかかる費用は、アニメーションの利用またはキャストの起用や、プロまたはフリーランスに依頼するかによって大きく変わります。動画編集のみを任せる場合、フリーランスへの依頼は1本数万円、制作会社に撮影から依頼する場合は数百万円かかることもあります。
内訳は、大きく分けると制作費用と人件費です。機材や撮影場所を借りる場合はレンタル料金が加わり、制作に携わる方が多いほど人件費は高くなります。
制作費用を抑えるためのコツ
動画の制作費用を安く済ませたい場合は、以下の方法があります。
- アニメーションの動画にする
- 撮影場所を社内にする
- 自社で制作する など
ただし、社内で動画編集に必要なスキルがない場合は、撮影は社内で行い、編集だけプロに依頼するとコストを削減できます。費用の削減ばかり考えると質が低くなる場合があるため、予算をかける内容とかけない内容を社内で検討しましょう。
まとめ
縦型の動画広告は、PRしたい商品やサービスを画面に大きく表示できるため、商品やサービスの魅力を伝えられるのが特徴です。縦型のまま見るコンテンツとの相性が良く、エンゲージ率の向上も期待できます。
しかし、動画編集スキルが求められるため、社内で対応できなければ外注を検討する必要があります。プラットフォームとの相性も考慮しながら、動画制作を行いましょう。
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