企業がオンラインでビジネス成果を上げるためには、明確な Web戦略を立てることが欠かせません。
闇雲に施策を実施しても効果は限定的であり、目標の設定から現状分析、ターゲットの明確化、さらに最適な施策の選定と検証・改善のプロセスを踏むことが重要です。
本記事では、 Web戦略の立て方をステップごとに解説し、役立つフレームワークも紹介します。
Web戦略の立て方とは?

企業がオンラインで成果を上げるためには「Web戦略」が欠かせません。しかし、ただ施策を思いつきで実行するだけでは、思うような結果に結びつかないケースが多くあります。
戦略を立てる際に重要なのは、順序を踏んで段階的に整理していくことです。
ゴールを明確にし、現状を把握し、ターゲットや顧客の動きを理解した上で、適切な施策を配置することで、はじめて持続的な成果を生み出す仕組みが作られます。
まずは、Web戦略の立て方を8つのステップに分けて、実務で活かしやすいように解説していきます。
- 目標設定
- 現状の分析
- ターゲット選定
- カスタマージャーニーを作成する
- 施策を考える
- 施策ごとにKPIを設定する
- 施策の予算やスケジュールを考える
- 改善と実行を繰り返す
Web戦略の概要や実例に関しては、こちらの記事でも詳しく解説しています。

ステップ1. 目標設定
戦略を立てる第一歩は「目標の明確化」です。ゴールが定まっていないと、どの施策が効果的なのか判断できず、結果として時間やコストを無駄にしてしまいます。
目標は「新規顧客の獲得」「既存顧客のリピート率向上」「売上の最大化」など、具体的かつ数値化できる内容に設定することが重要です。
社内で共有する際は、SMARTの法則(Specific:具体的、Measurable:測定可能、Achievable:達成可能、Relevant:関連性、Time-bound:期限)が役立ちます。
例えば「半年以内にWebからの問い合わせを30%増やす」などの形なら、全員が共通認識を持って行動できるでしょう。
ステップ2. 現状の分析
次に、自社の現状を正しく把握しましょう。競合の強みや弱み、業界全体の動向、そして自社のリソースや現状の課題を洗い出すことで、どの領域に注力すべきか見えてきます。
代表的な手法には「SWOT分析(Strengths, Weaknesses, Opportunities, Threats)」があります。強みと弱みを社内視点で整理し、外部環境からチャンスやリスクを見極めることで、現実的な戦略が描けるでしょう。
また、社内で共有する際は、データや調査結果を表やグラフで示すと理解が早まります。現状を客観的に見直すことは、戦略の土台を築くうえで欠かせない作業です。
ステップ3. ターゲット選定
どんなに優れた施策でも、届ける相手が不明確では効果は薄れます。そのため、具体的に「誰に向けて発信するのか」を決めることが重要です。
ターゲットを明確化する方法のひとつが「ペルソナ設定」です。年齢や性別、職業、ライフスタイルや悩みなどの属性を細かく描き、架空の顧客像をつくることで、施策に一貫性が生まれます。
BtoB企業の場合は、ターゲットとなる企業の業界やアプローチするべき個人の役職なども想定しておくと良いでしょう。
さらに、ターゲットがどの媒体を日常的に利用しているのか、どんな情報に価値を感じているのかを社内で共有することで、全メンバーが同じ視点で行動できます。
具体的なペルソナ像を1〜2パターン提示しておくと、マーケティング全体の判断軸が明確になるでしょう。
ステップ4. カスタマージャーニーを作成する
ターゲットを定めたら、次は顧客がどのように商品やサービスを知り、購入や契約に至るのかを可視化する「カスタマージャーニー」を作成します。
顧客は「認知 → 興味・関心 → 比較・検討 → 購入 → 継続利用」という流れで行動することが多く、各段階ごとに必要な情報やサポートが変わります。
社内で活用する際は、様々な立場のメンバーを集め、カスタマージャーニーの情報をワークショップ形式で図にまとめると理解しやすくなるのでおすすめです。
また、行動の各段階で「顧客がどのような悩みを抱えるのか」「どのような情報に安心感を持つのか」などのユーザー側の心理を整理していくことで、必要な施策の精度が高まります。
カスタマージャーニーの作り方にはポイントや注意点があります。
以下の記事でカスタマージャーニーの具体的な作り方を解説しているので、合わせてご参考にしてください。

ステップ5. 施策を考える
ここまで整理できたら、いよいよ具体的な施策を設計していきます。代表的な手法として「4P(Product, Price, Place, Promotion)」や「4C(Customer, Cost, Convenience, Communication)」などのフレームワークを活用するのがおすすめです。
例えば、商品を強調するのか、価格戦略を重視するのか、それとも利便性やコミュニケーションに力を入れるのか、などの方向性を整理できます。
また、施策を検討する際は「短期で成果が出るもの」と「長期的に効果が積み上がるもの」をバランスよく組み合わせることが大切です。
社内で共有する際には、カスタマージャーニーに沿って施策を一覧化した表を作成すると優先順位や必要性の判断がしやすくなるのでおすすめです。
ステップ6. 施策ごとにKPIを設定する
施策を実行するだけでは、その効果を測定できません。そこで必要になるのが「KPI(重要業績評価指標)」です。
例えば「広告クリック数」「サイト訪問数」「問い合わせ件数」など、施策ごとに進捗を確認できる数値を設定します。
KPIはあくまで中間指標であり、最終的な目標であるKGI(Key Goal Indicator)に結びつけることが大切です。
具体例としては、KGIは「今期の売上を10%アップする」、KPIは「Webサイトからの問い合わせ件数月間30件を目指す」といった目標が考えられます。
社内で共有する際は、KPIとKGIの関係を表や図で示すと理解が深まります。また、KPIはできるだけ分かりやすくシンプルな指標を用いることも大切です。
複雑なKPIを設定すると目標を達成する難易度が上がりますし、チーム内の認識に齟齬が生まれてしまう可能性もあります。
数値を追うだけではなく、なぜその数値を追うのかを明確にすることも重要です。
ステップ7. 施策の予算やスケジュールを考える
効果的な戦略も、予算やスケジュールの裏付けがなければ実行できません。限られたリソースをどこに配分するかを明確にすることで、戦略が現実的になります。
施策ごとに必要な費用を見積もり、優先順位をつけて配分するのが基本です。また、実行スケジュールをガントチャートなどで可視化すれば、チーム全体で進捗を共有しやすくなります。
社内共有では「短期施策」と「長期施策」を分けて示すと、取り組みやすさが格段に上がるでしょう。
例えば、Web広告は費用を払えばすぐに集客ができPDCAを回すことができますが、SEO対策やSNS運用は成果が出るまでに時間がかかる傾向があります。
費用対効果を意識しながら予算を組んでいきましょう。
ステップ8. 改善と実行を繰り返す
最後に大切なのは「実行と改善のサイクルを回し続けること」です。Web戦略は一度立てて終わりではなく、常に市場や顧客の動きに合わせて調整が求められます。
また、Webではユーザーの様々な指標をデータで素早く確認することができるため、データに基づいた地道な改善を続けることが成果を出すためには重要です。
代表的な手法が「PDCAサイクル(Plan, Do, Check, Act)」です。定期的に数値を確認し、成果が出ていない施策は改善案を取り入れる、このサイクルを回すことで戦略が現場に根づき、組織全体の成長につながります。
社内で共有する際は「成果報告会」や「改善ミーティング」を定期的に設けると、知見が積み重なりやすくなります。
Web戦略を立てる際に役立つフレームワーク

Web戦略を成功に導くためには、感覚や思いつきに頼るのではなく、体系的に状況を整理し、合理的に方向性を決める必要があります。そのようなときに役立つのがフレームワークです。
フレームワークを使えば「どこを強化すべきか」「どんな施策が有効か」を論理的に導き出せるうえ、チームや経営層と戦略を共有する際の共通言語としても活用できます。
ここでは代表的な10種類のフレームワークを紹介し、それぞれをWeb戦略にどう落とし込めるかを具体的に解説します。
| フレームワーク | 目的 | 分析の軸 | Web戦略での活用例 |
| 4P分析 | マーケティング施策を整理する | Product(商品)/Price(価格)/Place(流通)/Promotion(販促) | 自社サービスの価格設定を見直し、SNS広告で適切に訴求 |
| SWOT分析 | 内外環境を整理して強みを活かす | Strength(強み)/Weakness(弱み)/Opportunity(機会)/Threat(脅威) | 自社の強みをもとにSEO施策を展開し、競合との差別化を実現 |
| 3C分析 | 競合環境を俯瞰して戦略を考える | Company(自社)/Customer(顧客)/Competitor(競合) | 顧客ニーズと競合施策を把握し、自社Webサイトの改善方向を決定 |
| 4C分析 | 顧客視点での提供価値を設計する | Customer Value(価値)/Cost(コスト)/Convenience(利便性)/Communication(双方向性) | 顧客が求める情報をサイト内に充実させ、CVRを向上させる |
| PEST分析 | マクロ環境の外部要因を把握する | Politics(政治)/Economy(経済)/Society(社会)/Technology(技術) | AIやSNSの普及を背景に、動画コンテンツマーケティングを強化 |
| PDCA | 継続的な改善サイクルを回す | Plan(計画)/Do(実行)/Check(評価)/Act(改善) | 広告運用の数値を毎月レビューし、改善施策を次月に反映 |
| PPM分析 | 投資配分を最適化する | 市場成長率 × 市場占有率 | ECサイトの商品群を「花形」や「金のなる木」に分類し、広告投資を最適化 |
| 5F分析 | 業界収益性と競争力を分析する | 新規参入/競合/代替品/買い手/売り手 | 旅行業界で代替サービスや競合の力を調べ、差別化ポイントを明確化 |
| バリューチェーン | 企業活動を分解し、価値を生む部分を見つける | 主活動(物流・販売等)+支援活動(人事・技術等) | Web接客・顧客サポートを強化し、ユーザー体験を改善 |
| STP分析 | 顧客起点でポジションを確立する | Segmentation(市場細分化)/Targeting(標的市場)/Positioning(立ち位置) | 健康志向層をターゲットに自社の商品を「低糖質スイーツ」として差別化 |
4P分析
マーケティングの基礎ともいえる「4P分析」は、WebProduct(商品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販促)の4つの観点で施策を整理する方法です。
Web戦略に応用する場合、例えば「Product」では商品ページの訴求ポイントを整理し、差別化できる特徴を明確にしていきます。
「Price」では価格帯の比較コンテンツやキャンペーンページを企画し、顧客に納得感を与える施策につなげます。
「Place」では自社ECかAmazon・楽天などのモールを選ぶ判断、「Promotion」ではSNS広告やリスティング広告、SEO記事をどのタイミングで組み合わせるかを検討していきましょう。
4Pを網羅的に整理することで、Web施策が「商品軸」や「販路軸」などの観点から抜け漏れなくカバーできるようになります。
SWOT分析
「SWOT分析」は、Strengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)の4つに分けて現状を分析するフレームワークです。
Web戦略を考える際には、まず自社の商品やサービスそのものを起点にしてSWOT分析を行うことが重要です。
例えば、商品の品質やサービス提供のスピードがお客様から高く評価されているなら、それは「強み」として活かせます。
逆に、価格が競合より高い、提供エリアが限定されているといった点は「弱み」として認識する必要があります。
一方で「機会」としては、消費者のニーズの変化や市場の新しいトレンドなどが考えられます。
「脅威」には競合の積極的な参入や広告コストの上昇などが想定されるでしょう。
このように商品・サービスの特性を軸に整理した分析結果を、Web施策に反映させるのが効果的です。
例えば、Webサイトで、「品質の高さ」という強みについて具体的に解説するページを制作したり、提供エリアの限定性を逆に「地域密着型」としてSNSでアピールしたり、ターゲットを絞って広告配信をしたりする方法が考えられます。
単にSEOや広告などの手法を前提に考えるのではなく、自社の事業の特徴から導き出した強みや課題を、適切なWeb戦略へと落とし込むことで、より一貫性のある取り組みが可能になるのです。
3C分析
「3C分析」は、Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)Bを分析する手法です。Web戦略で特に役立つポイントは、顧客の検索行動やSNS利用の実態を把握する点です。
Web戦略を考える際には、まず自社の事業そのものを軸に置いた分析が欠かせません。例えば、自社の商品やサービスがどのような顧客層に選ばれているのか、その顧客は日常的にどのような情報を求め、どのような課題を抱えているのかを丁寧に整理します。
次に、競合企業がどのような顧客層をターゲットにしているのか、どの媒体や取り組みに力を入れているのかを分析し、自社との差別化ポイントを見極めます。
このような顧客分析・競合分析を踏まえて、自社ならではの強みを洗い出し、それを自社サイトのコンテンツや情報発信の方針、さらには具体的な施策に反映していくのです。
この流れを意識することで、手法ありきではなく、自社事業に根差した戦略を立てられるようになり、結果的に顧客に響くWeb戦略を実現しやすくなります。
初めて3C分析に取り組む場合は、どのように始めれば良いのか、どうすれば効率的に分析できるのかなど悩むことも多いでしょう。
以下の記事では3C分析について詳しく解説していますので、こちらもぜひ参考にしてください。

4C分析
「4C分析」は、Customer Value(顧客にとっての価値)、Cost(コスト)、Convenience(利便性)、Communication(コミュニケーション)を整理するフレームワークです。
Web戦略では、単なる機能紹介ではなく「顧客にとってどんな価値があるのか」を打ち出す記事や動画を制作するのが効果的です。
Costの観点では、価格だけでなく「時間的コスト」や「学習コスト」も含めて考え、導入ハードルを下げる工夫(FAQや比較表の掲載など)につなげます。
Convenienceでは、スマホ最適化やチャットサポートの導入などユーザー体験を高める施策が有効です。
最後にCommunicationは、SNSやメルマガで顧客と継続的に接点を持ち、双方向の関係を築くことに直結します。
PEST分析
「PEST分析」は、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)などの外部環境を整理する手法です。
Web戦略に適用すると、例えばCookie規制や個人情報保護法の改正などの法的制約(Politics)、景気動向や広告費の上昇(Economy)、消費者の価値観やSNS利用の変化(Society)、生成AIや新しい広告配信技術の登場(Technology)などの要因を把握できます。
要因を把握すれば、「今後はリターゲティング広告に依存せず、オウンドメディアでの顧客育成に注力するべき」などの判断を導きやすくなります。
外部環境は企業がコントロールできない部分だからこそ、早めに分析し、戦略に組み込むことが重要です。
PDCAサイクル
PDCAサイクルは「Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)」の流れを繰り返すことで、業務や施策の精度を高めていくフレームワークです。
単に計画を立てて実行するだけでは、思い通りの成果を得られないことも多いですが、振り返りと改善のステップを組み込むことで、常に状況に応じた最適化が可能となります。
例えばWeb戦略では、「広告キャンペーンを企画(Plan)→実施(Do)→クリック率やコンバージョン率を分析(Check)→広告文やLP、ターゲティングを修正(Act)」という流れを何度も回すことで、短期間で効果を引き上げられます。
PDCAの強みは、一度で完璧を求めるのではなく、小さな改善を積み重ねることで持続的な成果を築ける点です。
特にデジタル領域のように変化が激しい環境では、PDCAを素早く回すことが成功の鍵となるでしょう。
PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)
PPMは、企業が複数の事業や商品を持つ際に、それぞれを「市場成長率」と「市場占有率」という二軸で評価し、戦略的に位置づけを考える手法です。
縦軸に市場の成長性、横軸に自社のシェアを取り、製品やサービスを「花形」「金のなる木」「問題児」「負け犬」の4象限に分類します。
例えば、急成長している市場でシェアも高い「花形」は投資を強化すべき対象ですが、成長は鈍化していても安定的に利益を生み出す「金のなる木」は効率的に収益を確保できる資源となります。
一方、成長市場にいるもののシェアが低い「問題児」は、投資を強めてシェア拡大を狙うか撤退を判断する必要があり、成長性もシェアも低い「負け犬」は縮小・撤退を検討すべき領域です。
PPMを活用することで、企業は資源の最適配分を行い、成長分野に投資を集中させながら、収益基盤を維持する戦略を描けます。
Web戦略に応用する場合、例えば自社サイト内のコンテンツや運営中のSNSアカウントをPPMの4象限に当てはめて整理する方法があります。
検索順位が安定していて継続的にアクセスを生み出しているSEO記事は「金のなる木」として維持・改善に注力し、急速に伸びているSNSアカウントや動画施策は「花形」として積極投資します。
一方、まだ成果が出ていないが将来的な可能性がある新しい媒体は「問題児」に分類し、投資するかどうかを検討しましょう。
反対に、成果が出にくく費用対効果が低い施策は「負け犬」として縮小や撤退の判断を下します。
こうした整理を行うことで、限られたリソースを効率的に振り分け、Web全体の戦略をより明確に設計できるのです。
5F分析(ファイブフォース分析)
5F分析は、ハーバード大学のマイケル・ポーターが提唱した業界構造の分析手法です。業界の収益性に影響を与える「5つの力(Five Forces)」を明らかにし、自社の競争環境を理解するのに役立ちます。
その5つとは「既存競合の強さ」「新規参入の脅威」「代替品の脅威」「買い手の交渉力」「売り手の交渉力」です。
例えばEC業界の場合、競合はとても多く(既存競合)、新しいサービスも次々と生まれ(新規参入)、顧客は簡単に他社に乗り換えられる状況(買い手の力)になっている市場といえます。
このような環境を分析することで、自社がどこで優位性を持てるのか、どの部分で対策を取る必要があるのかを明確にできます。
5F分析の特徴は、単なる自社の強みや弱みだけでなく、業界全体の構造的要因を把握できる点です。
戦略立案の初期段階で5F分析を行うことで、参入障壁の高さや競争の激しさを予測し、中長期的な戦略を描きやすくなるのです。
バリューチェーン分析
バリューチェーン分析は、企業活動を「価値を生み出すプロセス」として分解し、どこで競争優位を築けるかを見極めるフレームワークです。
マイケル・ポーターが提唱したもので、活動は「主活動(物流・製造・販売・マーケティング・サービス)」と「支援活動(人事・技術開発・インフラ整備)」に分けられます。
Web戦略と組み合わせる場合、オンライン広告だけに注力するのではなく、サイトの使いやすさやカスタマーサポートの充実など、顧客体験全体を最適化する重要性が浮き彫りになります。
STP分析
STP分析は「Segmentation(市場細分化)→Targeting(ターゲット設定)→Positioning(自社の立ち位置)」という流れで市場を捉え、戦略を組み立てる手法です。
顧客をひとまとめにせず、特性に合わせてグループ分けすることで、的確なアプローチが可能になります。
STPの強みは、マーケティングの焦点を絞れることです。自社の商品やサービスのターゲットが広すぎると訴求がぼやけてしまいますが、絞り込むことで効果的にリソースを投下でき、顧客の共感を得やすくなるのです。
Web戦略においても、SNS広告やリスティング広告で特定の属性に的確にアプローチしたり、WebサイトやLPでターゲットに合わせた商品・サービスの魅力を伝えたりするために、STP分析は欠かせないフレームワークといえます。
【コンサルタントからのワンポイントアドバイス】
フレームワークを使うことは合理的な意思決定に役立ちますが、重要なのは、ウェブ戦略が最終的に「お客様の心を動かすかどうか」の勝負だという点です。
どれだけ素晴らしい分析をしても、お客様の感情が動いていなければ意味がありません。
感情が動く時にしか、人は行動(問い合わせ、購入など)をしないため、「このウェブ戦略で感情を動かせるか」という視点を忘れないように
目的別 効果的なWeb戦術の例

Web戦略は、企業の事業目標や市場状況だけでなく、顧客がどの段階にいるかによって最適な手法が異なります。いわゆる「購買ファネル」を意識し、潜在層から明確層まで段階に応じた施策を打ち分けることが重要です。
認知度を上げたいのか、興味を持たせたいのか、購入を後押ししたいのかによって活用すべきチャネルは大きく変わります。
短期的に成果を出したい場合は顕在層、中長期的に売上を伸ばしていきたい場合は潜在層へのアプローチを優先していくと良いでしょう。
以下では、それぞれの層に合わせた具体的な戦術を解説します。
潜在層向けのWeb戦術
潜在層は、自社の商品やサービスを必要としていることすら気づいていない層です。まずは「存在を知ってもらうこと」が目的になります。
認知度を上げるためのSNS
潜在層には、課題や商品への関心がまだ薄いため、まずは「存在を知ってもらう」ことが重要です。
SNSは日常の延長で自然に情報が届くため、潜在層へのアプローチに最適です。
例えばInstagramでは、ライフスタイルやトレンドに沿った投稿でブランドを印象づけ、X(Twitter)では話題性のある情報を発信して共感を呼び込みます。
短期的な成果よりも「認知の積み重ね」を意識することが大切です。
Web広告
インターネット上で配信される「Web広告」には、主に次の4つのタイプがあります。
【主なWeb広告の種類】
- リスティング広告(検索連動型広告):検索エンジンで入力されたキーワードに合わせて、関連するテキスト広告が表示される形式。
- ディスプレイ広告:Webサイトやアプリ上に画像や動画を組み合わせて掲載できる広告。
- SNS広告:InstagramやX(旧Twitter)など、SNSのタイムラインに表示される広告。
- 動画広告:YouTubeなどの動画プラットフォームで配信される広告。
それぞれの広告には独自の強みがあります。例えば、リスティング広告は設定した予算の範囲で、検索キーワードに合わせて表示できるため、すぐに運用を始められる点が魅力です。
費用対効果が数値化しやすい点も利点といえるでしょう。
一方で、ディスプレイ広告や動画広告は、視覚的に訴えかけられるため、テキストだけの広告よりも印象に残りやすい特徴があります。
SNS広告は通常の投稿と同じような形式で配信されることが多く、広告色を抑えられるため、ユーザーに受け入れられやすい傾向があります。
自社の商品やサービスの特性に合わせて、どの媒体でどのような広告を配信するのかを慎重に検討することが大切です。
「効率的に幅広い層へアプローチしたい」「既存顧客や見込み顧客に再度リーチしたい」など、目的に応じて広告の種類を選び、運用することが成功のポイントです。
動画配信
YouTubeやTikTokなどの動画プラットフォームは、潜在層にもアプローチすることができる施策です。商品説明よりもストーリー性や楽しさを重視することで、自然にブランドに触れてもらえます。
特に短尺動画は拡散性が高く、偶然見た視聴者にブランドを印象づける効果が期待できます。広告と異なり嫌悪感を持たれにくいため、長期的なファンづくりにつながるでしょう。
コンテンツマーケティング
ブログ記事やメールマガジンなどを活用したコンテンツマーケティングは、単に情報を発信するだけでなく、読者にとって価値のある情報を提供することで、自然に自社との接点を作れます。
業界の基礎知識や最新トレンド、課題解決のヒントなどを体系的に発信することで、潜在的な顧客に「この会社は信頼できる」と認識してもらいやすくなります。
また、定期的に更新することでSEO効果も高まり、検索エンジン経由で新規ユーザーを獲得するチャンスも広がるでしょう。
準潜在層向けのWeb戦術
準潜在層は、自分に課題があることはうっすら気づいているものの、解決方法まではイメージできていない層です。「課題を明確化し、解決の糸口を見せる」ことが狙いになります。
オウンドメディア
準潜在層は「なんとなく困っている」「情報を集めたい」と考えている段階です。この層には、検索から流入しやすいオウンドメディアが有効です。
課題解決に役立つ記事やHowToコンテンツを提供することで、ブランドへの信頼を少しずつ高められます。
SEOを意識した記事を蓄積すれば、中長期的に集客を安定させられる点も強みです。
ホワイトペーパー
準潜在層には「役立つ資料を提供する代わりに情報をもらう」施策が有効です。業界レポートや事例集をホワイトペーパーとして配布すれば、メールアドレスなどの顧客データを獲得できます。
また、既に顧客データを獲得しているユーザーに対してメルマガなどでホワイトペーパーを配布することで、顧客育成にも繋がります。
潜在的な関心を持つユーザーが自発的に情報を受け取るため、その後のメールマーケティングやセミナー誘導、営業と言った施策にスムーズにつなげられるでしょう。
さらに無料コンテンツ配布は、見込み顧客の情報を効率よく獲得する手法として有効です。
例えば、メールアドレスの登録を条件に「業界動向レポート」や「課題診断チェックリスト」を提供することで、潜在的な顧客との接点を作り、同時にリードを収集できます。
この際、提供するコンテンツは自社の専門性が伝わる内容を心がけましょう。
業界トレンドの解説や、自社サービスを使うとどのように課題が解決できるかを分かりやすくまとめることで、登録者に「有益な情報を提供してくれる会社」と認識してもらいやすくなります。
SNSでの専門的な情報発信
SNSを活用した情報発信は、潜在層より一歩踏み込んだ内容を届けることができる点が魅力です。
単なるニュースや軽い情報ではなく、業界特有の課題や解決策、事例紹介など、ユーザーが「この課題を解決するには専門知識が必要だ」と感じるような投稿を意識しましょう。
さらに、SNSの特性を活かし、コメントやDMなどで直接やり取りをすれば、見込み顧客との距離を縮められます。
顕在層向けのWeb戦術
顕在層は、課題を認識していて「解決方法を探している段階」のユーザーです。この層では、具体的な解決策の提示や比較情報の提供が有効になります。
問い合わせや購入に近いキーワードでのSEO対策やリスティング広告
顕在層は「自分の課題を解決できるサービスを探している」段階です。この層には検索経由の流入を狙うSEO対策が欠かせません。
「商品名+比較」「サービス名+口コミ」などのキーワードで上位表示を狙えば、購買に直結するユーザーを効率的に集客できます。
単なる記事ではなく、導入事例やFAQを含めると、信頼感を高めやすくなります。
また、SEOと同様に、顕在層に対して効果的なのが「リスティング広告(検索連動型広告)」です。
ユーザーが検索エンジンに入力したキーワードに応じて広告が表示されるため、購買意欲の高い層へダイレクトにアプローチできます。
例えば「〇〇サービス 比較」「〇〇商品 料金」など、検討段階にあるキーワードを設定すれば、まさに今購入や問い合わせを検討しているユーザーを効率よく獲得できます。
さらに、広告の出稿内容や表示順位を柔軟に調整できるため、SEOと比べて短期間で成果につなげやすいのも特徴です。
ウェビナー
顕在層には、直接的に商品やサービスの強みを伝えられるウェビナーも有効です。リアルタイムで質問に答えられるため、不安や疑問を解消しやすく、検討から契約への移行をスムーズにできます。
特にBtoB領域では、専門知識を提供するセミナー形式が効果的で、「この企業なら信頼できる」と感じてもらう大きなきっかけになります。
リターゲティング広告
リターゲティング広告は、一度自社サイトを訪れたユーザーに対して再度広告を表示する施策で、訪問者の購買意欲を引き上げる効果が期待できます。
初回訪問時には情報収集のみで離脱したユーザーに対し、興味関心のある商品やサービスを思い出させることで、再訪問やコンバージョンを促せます。
広告はディスプレイ広告やSNS広告、検索連動型広告など多様な媒体で配信でき、ユーザーの行動履歴や閲覧ページに応じてパーソナライズすることも可能です。
明確層向けのWeb戦術
明確層は、購入直前の「最後のひと押し」が必要な段階です。安心感を与え、意思決定を後押しする戦略が求められます。
導入事例・お客様の声
既存顧客の成功事例や実際の導入事例を紹介することで、潜在顧客に対して「自身や自社でも同様の成果が期待できる」と具体的にイメージしてもらうことが可能です。
成功事例には、売上の改善や業務効率化の数値、導入後の変化などを盛り込むことで信頼性が増します。
また、導入前後の課題や解決のプロセスを詳しく示すと、読者が自身や自社の状況に置き換えて理解しやすくなるためおすすめです。
製品やサービスに関する資料
製品やサービスに関する資料は、自社が提供する製品やサービスの詳細や料金体系、導入手順などを具体的に伝える手段として有効です。
特に、潜在顧客がサービス内容を深く理解する段階で重要な役割を果たします。
資料内では、メリットや活用方法を図やグラフで可視化することで、理解度を高められます。
また、競合との比較や、事例データを交えることで自社の強みを明確に伝えられるでしょう。
チャットボット・FAQ
チャットボットやFAQは、ユーザーが抱える疑問をリアルタイムで解決できる仕組みとして有効です。
「導入費用はいくらか」「操作は簡単か」などの購入直前の不安を即座に払拭できるため、離脱防止やコンバージョン率向上に直結します。
さらに、ユーザーの質問データを蓄積することで、どの情報が求められているかを分析でき、コンテンツ改善やFAQの拡充にも活かせます。
AIを活用した自動応答型チャットボットであれば、24時間対応が可能で、営業時間外の問い合わせにも対応できるのも大きなメリットです。
無料トライアル・限定キャンペーン
無料トライアルや期間限定キャンペーンは、潜在顧客にサービスを実際に体験してもらい、購入のハードルを下げる施策として効果的です。
無料で使えることで「試してみよう」と気軽に行動してもらえ、実際の操作感や効果を体験することで購買意欲が高まります。
さらに、期間限定の特典や割引を組み合わせると、決断を後押しする心理的効果も期待できます。
キャンペーンの内容や期限を明確に提示することで、緊急性を演出できるため、行動を促す施策としても有効です。
【コンサルタントからのワンポイントアドバイス】
結論、狩猟型のマーケティングをやめましょう。狩猟型とは、短期的な売上アップを目的にしたマーケティング活動です。
今日明日のご飯が欲しいから、獲物を取りにいかないといけない、という状況だと自転車操業になってしまう。狩猟型と並行して農耕型のマーケティングをやってほしいなと思っています。
農耕型のマーケティングでは、すぐに問い合わせを取るのではなく、準潜在層や潜在層のお客様の状況に合わせて情報発信を行います。
そして、いざという時に「以前見た、あれが良いな」と再検討が始まるように、お客様とのコミュニケーションを通じて自然と取れる「安定した状態」を作っていきます。
中長期でやる前提が必要ですが、マーケティング活動が安定し中長期的に売上が伸ばしやすくなります。
Web戦略を立てる際のポイント

Web戦略を立てる際には、単なる施策の羅列ではなく、体系的かつ実行可能な計画を策定することが重要です。しかし、 Web戦略を成功させるためには、いくつか注意すべきポイントがあります。
効果を急がない
Web戦略の成果は、短期間で現れるものばかりではありません。特にSEO対策やオウンドメディアの構築などは、時間をかけて効果が現れる施策です。
焦らずに、長期的な視点で取り組むことが成功への鍵となります。短期的な効果を求めすぎると、施策が中途半端になり、逆に効果が薄れてしまう可能性があります。
短期的に成果を出したい場合は、施策に優先度を付けて取り組んでいく必要があります。
ターゲットの解像度を上げて選定する
ターゲットを明確にすることは、戦略の成功に直結します。顧客インタビューや過去の受注データ・失注データの分析を通して、ターゲットのニーズや行動パターン、自社の商品やサービスが刺さるポイントを深く理解することが重要です。
ターゲットの解像度を上げることで、より効果的なメッセージや施策を展開することが可能になります。
ただ単に性別や年齢を決めるのではなく、上記の手順でご紹介したように具体的なペルソナを決めることがポイントです。
フレームワークはあくまでツールとして考える
SWOT分析や3C分析などのフレームワークは、戦略立案のための有用なツールです。しかし、フレームワークに頼りすぎることなく、実際のデータや現場の声を重視することが大切です。
フレームワークはあくまで視点を提供するものであり、最終的な判断は実際の状況に基づいて決めるようにしましょう。
検証と改善を繰り返す
戦略を立案し施策を実行した後は、定期的な検証と改善が必要不可欠です。KPIをもとに成果を測定し、問題点を洗い出して改善策を取ることで、戦略の精度が高まります。
PDCAサイクルを回すことで、戦略は進化し続け、より効果的なものとなるでしょう。
顧客視点で戦略や戦術を立案する
自社の視点だけでなく、顧客の視点に立って戦略を考えることが重要です。顧客が抱える課題やニーズを深く理解し、それに応える形での戦術を展開することで、より高い効果が期待できます。
顧客の声を直接聞いたり、顧客の行動データを分析したりすることが有効です。
複数の戦術を組み合わせて相乗効果を狙う
Web戦略を成功させたい場合、単一の施策だけでは限界があります。SEO対策、SNS運用、コンテンツマーケティングなど、複数の戦術を組み合わせることで、相乗効果を生み出すことを意識的に狙っていきましょう。
例えば、ブログ記事をSNSでシェアすれば、より多くの人にリーチすることができます。ただし、複数の戦術をがむしゃらに組み合わせれば良いわけではありません。
それぞれ期待できる効果が異なるため、自社の目的に合わせて相乗効果を狙える戦術を組み合わせることが重要です。
現在の課題やフェーズに合わせて考える
Web戦略は、企業の成長段階や現状の課題によって最適なアプローチが大きく異なります。例えば、新規事業やスタートアップ企業であれば、予算があまりないことが多いため、まずは顕在層へのアプローチを優先したほうが良いでしょう。
その後は、認知拡大や潜在顧客へのアプローチができるマーケティング施策へと拡げていきます。
一方で、既存事業が成熟している企業では、リード獲得や顧客維持、LTV(顧客生涯価値)の最大化を意識した戦略が求められるでしょう。
そのため、現状の課題や組織のフェーズを正確に把握し、戦略を柔軟に調整することが成功への鍵です。
また、段階的に目標を設定し、達成状況を確認しながら戦術を微調整していくことも重要です。
上記の方法を試してもWeb戦略で考えた施策で効果を得られない場合、やり方や考え方が間違っている可能性があります。
以下の動画では、中小企業が間違えやすい施策の注意点を解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
Web戦略の知識を身につける
Web戦略を効果的に設計・運用するには、基本知識の理解だけでなく、最新のトレンドやツールの情報を継続的にアップデートすることが欠かせません。
具体的には、デジタルマーケティング関連のセミナーやオンライン講座への参加、業界専門書の読書、最新の事例研究などが有効です。
また、SEOアルゴリズムやSNS運用ルールの変化、広告配信の新機能など、日々変化するWeb環境を把握しておくことで、施策の精度が格段に向上します。
社内で情報共有の仕組みを作り、複数の担当者が最新知識を活用できる体制を整えることも、戦略を成功に導く重要なポイントです。
施策の実行を重視しリソースを確保する
いくら優れた戦略を立てても、施策を実行できなければ成果は得られません。戦略を実現するためには、人材、時間、予算などのリソースを事前に確保し、計画的に施策を進める必要があります。
例えば、コンテンツ制作に必要な人員や、広告運用に割く時間、SNS運用の外注費用など、施策ごとのリソースを明確に割り当てることが重要です。
また、実行の進捗を定期的にチェックし、計画通りに進んでいない場合は改善策を検討するPDCAサイクルの運用も欠かせません。リソースを適切に配分することで、戦略が現実的かつ効果的に成果を出せるようになるでしょう。
【コンサルタントからのワンポイントアドバイス】
Web戦略は立案してからがスタートです。
中小企業のWeb戦略はスローガンのようになっていることが多いです。Web戦略を立案した後は、しっかりと実行していく必要があります。
戦略を基に時間とコストをかけ、全社プロジェクトとして貫徹できるようにしなければいけません
まとめ
本記事では、中小企業が取り組むべきWeb戦略の基本から立案方法、施策ごとの具体例、フレームワーク活用のポイントまで幅広く解説しました。
Web戦略は単に「施策を行うこと」ではなく、目標設定、ターゲットの明確化、施策の優先順位付け、KPIの設定、検証と改善という一連の流れを体系的に行うことが重要です。
また、社内リソースの確保や社員のスキルアップ、外部コンサルタントの活用なども戦略成功の鍵となります。
今回紹介した潜在層から明確層までの施策やフレームワークは、企業の現状や目的に応じて組み合わせ、段階的に実行してみるといいでしょう。
焦らず、PDCAを回しながら改善を重ねることで、Web戦略は成果につながっていきます。
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