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現状維持バイアスとは?概要やマーケティングへの活用方法を紹介

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現状維持バイアスは、特にビジネスの分野ではマイナスのバイアスとして捉えられる場合があり、乗り越え方なども多く紹介されています。例えば、キャリアアップのために職場を変えられない、変化を恐れて会社のルールを変えられないなどです。

マーケティングの分野でも同様に、顧客は新しい情報や視点に対して心を閉ざしてしまい、マイナスに働く要因として扱われる場合もあります。しかし、現状維持バイアスの心理を理解し、逆手にとった施策を展開していけば顧客の購買意欲を刺激できます。

そこで本記事では、現状維持バイアスの概要やマーケティングでの活用法なども紹介するので、参考にしてください。

目次 ー この記事で分かること ー

現状維持バイアスとは?

はじめに、現状維持バイアスとはどのような心の動きなのか概要や発生するメカニズム、弊害などを紹介します。ここで、人間にはどのような心理が働き行動に移すのか確認しましょう。

現状維持バイアスの概要

現状維持バイアスとは、行動を起こせば現在より状況が好転するとわかっていても、変化を恐れて現状を維持しようとする心理状態を指します。バイアスとは「先入観」や「偏見」などの意味をもち、確証バイアスや同調性バイアスといった認知バイアスの一種に分類されます。

現状維持バイアスには「毎日同じ電車の同じ車両に乗る」といったものから、「地震が起こっても避難せずに家に残る」といった種類が豊富です。また、現状維持バイアスは、個人だけでなく組織や社会にも影響を及ぼします。

会社のルーティン化されている作業や昔からの慣行が根付き、変化を受け入れられずに市場の変化に遅れたり、革新的な変化の欠如につながったり、バイアスの程度によっては、私生活やビジネスとともに支障を来す場合もあるでしょう。

現状維持バイアスが起こるメカニズム

現状維持バイアスが発生するメカニズムは以下の通りです。

  • 現状はいろいろと不満があるが耐えられないほどではない
  • 現状を変えるチャンスがやってくる
  • 現状を変えるために必要な労力やリスク・過去の失敗経験などを考えてやる気がなくなる
  • 不満を我慢して現状を維持する

現状を変えるためには、多少のリスクが伴います。また、必ずしも成功するとは限りません。現状を変えた結果、「前の方がよかった」と思う場合もあるでしょう。特に、以前「頑張って現状を変えようとしたが失敗した」経験がある場合、「多少の不満があるが、我慢した方がまし」と思ってしまいがちです。

現状維持バイアスは年代や性別を問わずに起こりますが、子どもや青年期より人生経験を積んだ壮年期以降に起こりやすい傾向があります。

現状維持バイアスの弊害

現状維持バイアスがかかってしまうと、以下のような弊害が起こる可能性があります。

  • 時代の変化について行けない
  • 不満が改善されない
  • 現状が維持できなくなる
  • 問題が大きくなって解決できなくなる

例えば会社の経営者が現状維持バイアスに囚われていると、従業員からの改善要求やアイデアを受けつけられなくなります。その結果、従業員のモチベーションが続かなくなり離職者が続出したり、同業他社に比べて売上が著しく落ち込んだりして、会社の存続が危なくなるケースもあるでしょう。

個人の場合は、よい条件で現状を変えるチャンスがあったとしても、迷っているうちに逃してしまうかもしれません。特に、転職など失敗するとリスクが高いものは現状維持バイアスが強くかかりがちです。

現状維持バイアスが商品やサービスの購入に与える影響

現状維持バイアスは、商品やサービスの購入にも影響を与えます。ここではプラスの影響、マイナスの影響をそれぞれ紹介します。

プラスの影響

現状維持バイアスがプラスに働くと、一度顧客になった方が離れにくくなります。定期購入やサブスクリプションの場合、「あまり使わないし、余ることもあるけど解約するのも面倒なので続けている」といったケースも多いです。これは、現状維持バイアスによって解約する手間よりもお金を払い続ける方を選んだ結果です。

特に、お手頃価格であったり定期的にキャンペーンなどのサービスがあったりすると、「やめてもいいけど、キャンペーンなどは嬉しい」といった心理が働きます。また、「やめるとなんだか損をしたような気がする」といった心理も働いて、より顧客が離れにくくなるでしょう。

そのため、定期的に新しいサービスを紹介したり長く続けている方向けのキャンペーンをしたりする会社も多いです。

マイナスの影響

現状維持バイアスがマイナスに働くと、新規顧客の獲得が難しくなります。また、サービスの移行や変更が顧客離れにつながる場合もあるでしょう。

例えば、今まで行ってきたサービスの維持が難しくなり、利便性の高いほかのサービスに以降してもらう必要が出てきた場合です。「移行の手続きが面倒くさいので、そのまま退会する」といった方が一定数出てくるかもしれません。

退会を防ぐためには、手続きをできるだけ簡略化したり新規サービスに移行したら多くのメリットがあるような仕組みにしたりする必要があります。この傾向は年齢が高くなるにつれて強まりやすいため、高齢者向けのサービスなどの移行や変更には工夫が必要です。

現状維持バイアスを外す効果があるマーケティング

新しいサービスを利用したり商品を購入したりしてもらうには、現状維持バイアスを外す効果がある施策や戦略が必要です。ここでは、効果的なマーケティングを6つ紹介します。

無料お試し期間・返金期間を作る

現状維持バイアスを外すには、現状を変える手間よりも現状を変えたいと思う気持ちを大きく働かせる必要があります。そのために有効なのは、無料お試し期間や返金期間です。

1ヵ月1,000円ならば躊躇する方も多いでしょう。しかし、「最初の3ヵ月は無料、4ヵ月目から月額2,000円」といったシステムなら「最初は無料ならばやってみようか」と思う方もいます。

一度サービスを利用してもらったら、今度は現状維持バイアスを強くして「あると便利かもしれない…」「頻度は高くないけど、たまに使っているし…」と思って貰えれば大成功です。

返金期間も同様です。「使いにくかったら返金できる」安心感が行動を促してくれます。

コピーライティングを工夫する

コピーライティングや広告を工夫しても現状維持バイアスを外す効果があります。例えば、商品やサービスをすでに手に入れ、快適な生活を送っているイメージを顧客に想像させましょう。すると、顧客は想像力が働き、すでに手に入れた感覚を覚えることで、手放したくない気持ちが強くなります。

商品を手放したくない気持ち=商品を手に入れたい気持ちが強まり、購買意欲を掻き立てることが可能です。

クーポンやオマケを用意する

サービスの移行を促す場合、「長らく愛用していただいた方限定」としてクーポンやオマケなどをつける方法が効果的です。特別感を得られると共に、新しいサービスに移行するメリットを明確にして行動意欲を高めます。

新規顧客を獲得したい場合は、一定の制限を設けてクーポンやオマケを用意する方法もあります。例えば「何月何日までに契約してくれた方に10%オフ」などすれば、「今契約しなければ、損をする」といった不安が行動意欲を高めてくれるでしょう。複数の方法を用意して、ユーザーが選べるようにするのも効果があります。

カリギュラ効果を利用する

カリギュラ効果とは、「禁止されるとやりたくなる心理状態」を表す用語です。「××の方はみないでください」「××の方は必要ありません」といった一見すると逆効果のようなキャッチコピーは、実はカリギュラ効果を期待したものです。

例えば、転職サイトへの登録を促す場合、「今の給与で満足している方は、必要ありません」「給与が××円以上の方には不要のサービスです」といったキャッチコピーをつけてみましょう。現状維持バイアスを外して行動を促すきっかけになる可能性があります。

ただし、あまり強い制限や禁止事項を設けてしまうと逆効果です。どのような言葉を選ぶのか、広告を打つタイミングはいつかといった入念な下準備も必要です。

メーカーの知名度を高めブランドを形成する

信頼感や期待度も現状維持バイアスを外す効果が期待できます。例えば、一流メーカーが普段は行わないキャンペーンを実施したりサービスを開始したりすると、メーカーのユーザー以外の方も「利用したい」と思いやすいでしょう。

特に、普段はなかなか利用できないブランドの製品を購入したり利用できたりするチャンスは、新規顧客獲得の絶好の機会になります。

時間はかかりますが、会社の知名度を高めたり自社商品やサービスのブランディングを確立したりすることも効果的です。ほかの現状維持バイアスを外すマーケティング施策と並行して行えば、より効果が期待できるでしょう。

新しいサービスは付け足していく

既存のサービスや商品を変更する場合は、少しずつ変更していくと顧客離れを防げます。今までAとBとCで利用できていたサービスを、Aだけが利用できるように変更したい場合を例にとって説明しましょう。

まずCのサービスを終了して半年後にBのサービスを終了するようにします。そうすると、「一気に変わった」印象がなくなり「まあ、多少変わるがそのまま利用しよう」と現状維持バイアスが働いてくれるでしょう。

商品をリニューアルする場合も、パッケージ、容量と少しずつ変化させていけば顧客離れを防げます。また、サービスを移行する際にオマケやクーポンをつけるなど、移行したらメリットがあると思わせるのも効果的です。

現状維持バイアスを利用したサービスや商品とは?

最後に、現状維持バイアスを利用したサービスや商品の代表例を紹介します。できるだけ長く顧客に利用して欲しいサービスの形態などを探している方は参考にしてください。

サブスク

現状維持バイアスを利用したサービスの代表格は、サブスクリプション(サブスク)です。中でも、定額料金で映像作品を見放題なサービスはレンタルビデオに取って代わるサービスとして定着しました。近年は、マンガや本を読み放題、脱毛通い放題といったサービスも登場しています。

サブスクは、月々数百円〜数千円で利用できるサービスが主流です。2~3つ入っても高額ではなく、それほどお財布が痛まない方も多いでしょう。そのため、「2~3ヵ月あまり利用していないが、来月は使うかもしれない」と現状維持バイアスがかかりがちです。

特に、定期的に新規作品が追加されるサービスは「今月はあまり使わなかったが、来月は面白い作品が登場するかも」といった期待もあって長期間続けてもらいやすいでしょう。

定期購入

定期購入も現状維持バイアスがかかりやすいサービスです。毎日飲むサプリメントや化粧品などに定期購入を利用している方もいるでしょう。

定期購入のメリットは買い忘れがない、必要なときにその都度購入するよりお得、といった点が挙げられます。販売しているお店が遠かったり、通販でしか販売していなかったりする製品は、より定期購入してもらいやすくなるでしょう。

定期購入の申し込みハードルを下げるためには、「初回のみ無料」「送料ずっと無料」など、その都度購入よりお得であることをアピールするのが効果的です。

メルマガ

メールマガジン(メルマガ)は無料・有料などさまざまな形があるメール形式の読み物です。通販サイトで商品を購入すると自動的にメルマガの配信がついてくるケースもあります。無料のメルマガは直接的な利益を出すのは難しいですが、定期購入やサブスクを利用してもらうきっかけになります。

例えば、メルマガで「××したい方は見ないでください」といった広告を配信すれば、カリギュラ効果で申し込む方を増やせる可能性もあるでしょう。また、有料のメルマガも1ヵ月数百円で配信すれば「たまに見ているし、解約する程の料金ではない」となりがちです。

1つ1つの利益は薄くても、利用者が多ければ会社にとって重要な売上になります。そのためには、魅力的な記事を書くことも重要です。

現状維持バイアスを利用したサービスや商品を提供する際の注意点

現状維持バイアスをうまく利用したサブスクや定期購入などのサービスを提供する場合、表示方法に注意が必要です。2022年より「改正特定商取引法」が施行され、販売業者は取引における基本的な事項を最終確認画面等で明確に表示することが義務づけられました。

例えば、「今だけ1,990円(定期購入した場合だけ・2回目からは3,990円)」といった製品を通販するとします。購入画面に「2回目からは3,990円であること」「定期購入であること」などをわかりやすく記載しなければ違法です。

同様に、サブスクの場合は解約方法もわかりやすい表記にしなければなりません。近年は、「サブスクの解約がわかりにくい」「その都度購入だと思ったら定期購入で、解約もできない」といった悪い評判はすぐにSNSなどで拡散されます。

一度落ちた評判を払拭するのはとても大変です。顧客に気持ちよくサービスを利用してもらうことを第一に考えましょう。

まとめ

本記事では、現状維持バイアスの概要や生活に与える影響などを紹介しました。ビジネスの世界では現状維持バイアスはマイナス要因として捉えられ、一刻も早く克服するように求められるケースも多くあります。

しかし、マーケティングの世界では、心理を逆手にとったサブスクや定期購入など現状維持バイアスを利用した販売方法もあります。また、現状維持バイアスを外してサービスや商品を購入するアイデアも多いです。

ウェビットでは主に中小企業がWebマーケティング、Web集客を行う上でのお悩みを解決するような情報を発信しております。気になられた方はぜひ、ほかの記事もご覧ください。

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この記事を書いた人

大澤 要輔のアバター 大澤 要輔 『Webhit(ウェビット)』編集長

【プロフィール】
マーケティングメディア『Webhit(ウェビット)』の編集長。運営元の株式会社FlyEde 代表取締役を務める。中小企業経営者へのコンサルティングは累計3,000回以上。Webマーケティング × 組織構築 × 人材育成の3つの領域を中心に、年商5,000万円~数億円前後の領域で売上を伸ばす仕組みを構築。

【保有資格】
上級ウェブ解析士
Googleアナリティクス個人認定資格(GAIQ)
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Yahoo!広告 各種資格

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