Webhit 編集部今回は、「中小企業が「AIで勝てる組織」を作るには?」というテーマでお話しいただきたいと思います。よろしくお願いします。



お願いします。



では、早速ですが、現在非常に多くの生成AIが出てきていますが、
中小企業でも組織全体でAIを使っていくことは重要でしょうか?



結論として、中小企業でも組織全体でAIを使っていくことは非常に重要だと思います。その理由として、中小企業を取り巻く採用市場が非常に
厳しくなっていることが挙げられます。



以前であれば、マイナビやリクナビといった求人媒体に掲載するだけで、ある程度の応募数を確保できた時代もありました。
しかし近年では、そうした求人媒体に掲載するだけでは十分とは言え
なくなっています。
競合企業がSNSを活用した採用を始めたり、大手企業が新たな採用施策を打ち出したりするなど、環境は大きく変化しています。



さらに、労働人口が減少していくなかで、自社の労働生産性を高めなければ、これまで当たり前にできていた業務すら継続できなくなる可能性があります。
しかしその一方で、時代の流れに合わせて新たに対応すべき業務や仕事は、今後ますます増えていくと考えられるでしょう。



中小企業の経営者や現場の方々とお話ししていると、給与や役職が変わっていないにもかかわらず、新しい業務だけが次々と増え、現場が疲弊
しているケースが非常に多く見受けられます。



こうした状況の背景には、生成AIが登場する以前のやり方を今なお続けているからであることが考えられます。
さまざまな言い訳を重ねて、従来のやり方をそのまま続けているため、労働生産性が落ちていくのです。



なるほど。給与や役職は変わらずに業務だけ増えてしまうという状況は、本当に深刻ですね。



はい。生成AIを積極的に活用し、労働生産性を高めようとしている企業との差は、確実に広がっています。なぜなら、単位時間あたりに生み出せるアウトプットの量が大きく異なってくるからです。



そのため、中小企業であっても、むしろ中小企業だからこそ、組織全体でAIを活用することは極めて重要だと考えています。



ありがとうございます。
では、生成AIは必須という前提で、中小企業がAIで勝てる組織を作る
ためには、まず何から取り組めばいいでしょうか?
導入前に考えておくべきことや、整えておくべきことはありますか?



最初に考えるべきなのは、AIを活用して業務を遂行できる人材と、
そうでない人材を明確に切り分けることです。
これが、AI活用を進める上での第一歩になります。



なるほど、まずは人材の見極めが第一歩なんですね。



そうです。例えばBtoBの法人営業を考えた場合、業務を一気にすべて
AIへ切り替えることは難しいと思います。顧客との信頼関係の構築や
交渉といった要素は、必ずしも合理性やロジックだけで判断できるものではなく、人と人との関係性が大きく影響する領域だからです。
そのため、こうした業務を全面的にAIに置き換えるのは難しいと言え
ます。



一方で、営業活動の中でも、提案資料のたたき台を作成するといった
業務であれば、AIを活用して十分に対応することが可能です。



このように、まずはAIで対応できる業務と、現時点ではAIに任せるべきではない業務を切り分けることが重要です。
そのうえで、AI導入前の意思決定として、AIで対応できない業務を無理にAI化、すなわち自動化や効率化しようとしないという判断も必要になります。こうした無理なAI導入は、かえって導入ハードルを高めてしまう
からです。



なるほど、AIに任せられる業務と任せられない業務を切り分けることが
大切なのですね。



はい。AIで対応可能な業務についてまず取り組むべきなのは、アウト
プットの品質に関する要件を明確に定義することです。



例えば「過去3年以内の事例を踏まえて、このような企業向けの提案資料のたたき台を作成してほしい」といった曖昧な指示だけでは、AIはインターネット上の一般的な情報をもとに、表面的で無難な内容を生成する傾向があります。その結果、「何となくそれらしくはあるが、実務では使えない資料」ができあがり、「やはりAIは使えない」と感じるケースは少なくありません。



たしかに、曖昧な指示だとAIが表面的な資料を作ってしまうのは
問題ですね。



そうです。「提案資料のたたき」を作成すると一言で言っても、まずは「どこまでできていれば、たたきと呼べるのか」を明確にする必要が
あります。たとえば、
・資料全体の見出し構成ができていれば十分なのか
・そのなかに盛り込むべき要素まで含めるのか
といった点です。



盛り込みたい要素としては、
・先方企業が抱えている課題
・自社サービスで提示できる解決策
・自社の強みや提供価値
などが考えられます。
仮に、こうした内容を含めた、たたきを作りたいのであれば、
そのアウトプットの要件や品質に見合ったインプットを事前に準備する
ことが不可欠です。



具体的には、
・過去に作成した提案資料
・自社サービスの詳細資料
・社内で高く評価されている提案資料の見出し構成
などが挙げられます。
これらをインプットとしてAIに与え、「これらを前提に提案資料のたたきを作成する」と指示することで、単に「この業界のこの会社向けに提案資料を作ってほしい」と依頼する場合と比べ、アウトプットの品質は
大きく向上します。



このように、まずアウトプットの品質に関する要件を定義し、その要件に合わせたインプットを事前に与えることが非常に重要です。



つまり、まずアウトプットの基準を定め、その基準に合わせて事前の
インプットを整えることが、AI活用の成功のポイントということですね。



そのとおりです。
この点について説明すると、「では、何をどこまで与えればよいのか」と疑問に思う方も多いと思います。その際に分かりやすい考え方として、
新卒社員に仕事を任せる場面を想像してみてください。



新卒社員に対して、自分が求める品質で、かつスムーズに仕事を進めてもらおうとする場合、どのような情報や資料を渡すでしょうか?
その際に提供する内容の全てが、AIに与えるべきインプットだと考えると理解しやすくなります。



例えば、「提案資料のたたきを作ってほしい」と依頼する場合でも、
・スライド形式で作成してほしい
・Googleドキュメント形式がよい
といったアウトプットの形式は明確に伝える必要があります。
また、必ず守ってほしい見出し構成があるのであれば、それも事前に
共有すべきです。



このように、新卒社員に適切に仕事を任せるためには、どのような前提情報や条件を与えれば成果が出るかを考えることで、AIに対してどのようなインプットを用意すべきかが明確になります。



ありがとうございます。
そうした準備をしたうえでも、社内でAIがなかなか浸透しないといった課題に直面している企業も多いと思います。
その場合、どうすればいいのでしょうか?



簡単に言うと、社内でAIがなかなか浸透しない場合は
業務オペレーションをAIに合わせて変えるといいでしょう。



なるほど。



例えば、提案資料の作成にこれまで1週間かけていたとします。
その業務に対して、「AIを活用して2日で提出する」というオーダーに
変更した場合、業務の進め方そのものを見直さなければなりません。



従来であれば、顧客との打ち合わせの録音を自分で聞き返し、手作業で文字起こしを行い、その内容をもとに資料を一から入力して作成すると
いったプロセスで、1週間を要していたとしましょう。
しかし、同じオペレーションのままでは、2日という期限には100%間に合わないでしょう。



そうですね。



そのため、生成AIを「使うかどうか」を個人の判断に委ねるのでは
なく、業務オペレーションの側から「使わざるを得ない環境」を先に
作ってしまうことが、最も早いアプローチだと考えています。



一定の制約やルールを設けることで、その枠組みの中で工夫が生まれやすくなります。
例えば、指示の出し方を変えることでアウトプットのスピードが大きく
向上したり、逆に指示が曖昧だとアウトプットの品質が落ちたりすると
いった違いが、実感として分かるようになります。
こうした試行錯誤を通じて、AIの適切な使い方が蓄積されていきます。



その意味でも、生成AIを使わざるを得ない業務オペレーションを設計することが、AI活用を定着させるための最も手っ取り早い方法だと思います。



ありがとうございます。個人の判断に任せるのではなく、業務オペレー
ション側から「使わざるを得ない環境」を作ることが重要なんですね。



はい。ただし、この取り組みを進めると多くの場合、現場から強い反発が起こります。



そうですよね。



なぜ現場から強い反発が起こるのかというと、大きく分けて2つの
パターンがあります。



1つ目は、これまでのオペレーションの中で、何らかの形でメリットを
享受してきた人たちや、従来のやり方によって自分にとって都合のよい
状況が保たれていた人たちが嫌がるからです。



もう1つは、いわゆる前例主義の人たちです。
「今まではこうやってきた」という言葉を繰り返し、変化そのものを
避けようとするタイプの人たちがいるからです。



ただし、こうした意見をそのまま受け入れ続けている限り、組織は変わりません。
特定の人の承認や意見を会社側が過度に尊重してしまうと、「全社的にAIを活用していこう」というスローガンを掲げたとしても、結局は「この
業務については従来どおりでよい」という例外が次々と認められることになります。



それが許されるのであれば、理屈の上ではすべての業務について
「今まで通りでよい」と言えてしまい、結果として何も変わらない
状態に陥ってしまいます。



なるほど、現場から反発が起こるのは、メリットを享受している人や
前例主義の人が変化を嫌うからなんですね。



そうです。なぜこうした反発が起きるのかというと、人は本質的に
「楽なほう」、そして自分にとってメリットのあるほうへ流れやすい
からです。
そのため、従来のやり方が楽で、なおかつ自分にとって得があった
場合、変化を避けようとするのは自然な行動と言えます。



もちろん、現場の一意見としては聞くという前提はあります。
しかし、会社全体の意思決定として「生成 AI を浸透させたい」という
会社の全体計画があるのであれば、その人たちにも協力してもらい
ながら、少しずつでもいいので、実際にAIを使ってもらう環境を整えることが重要です。
さらに言えば、AIを使わなければアウトプットが出ない、あるいは業務が進まない状態を意図的に作ることも1つの方法です。



そうした環境下で進捗会議などを行い、「なぜAIを使っていないのか」と問いかけた際、経営としての全体戦略が明確であれば、使っていない理由を合理的に説明することは難しくなります。結果として、組織全体の方針に沿った行動を取らざるを得なくなるでしょう。



業務の進め方を変える以上、一定の反発が生じるのは避けられません。これまで楽だったやり方や、個人にとってメリットのあった方法に固執する人が出てくることも、組織としては織り込み済みであるべきです。



その前提に立ったうえで、生成AIの社内浸透に取り組むことが、結果的には最短距離になると考えています。



ありがとうございます。
では、会社単位でAIを活用していく場合、最新情報のキャッチアップは
どの程度まで行ったほうがよいのでしょうか?



どこまでを対象とするかについては、一概に線引きするのは難しい部分もあります。
ただ、一定の目安として、ChatGPT、Gemini、Claudeといった主要な生成AIは、まず押さえておくべき存在だと考えています。



他にも、特定用途に特化した生成AIサービスは数多く存在しますし、新しく立ち上がったばかりのサービスも次々と出てきています。
しかし、これまでの流れを見ていると、そうした小規模・特化型の機能の多くが、最終的にはChatGPTやGemini、Claudeといった主要な生成AIで対応可能になっていくケースが非常に多いのが実情です。



そうなのですね。



はい。とはいえ、それも当然の流れだと言えます。ChatGPT、Gemini、Claudeといった生成AIを提供している企業は、市場で競争力を維持し
続ける必要があります。
そのため、小規模なアプリや特定機能に特化したサービスで有用な機能が登場すれば、「その機能は自社の生成AIにも取り込もう」という判断が自然に行われます。



たしかに、競争力を維持するために、新機能が次々に統合されていく
のは当然ですね。



はい。仮にそうした機能を取り込めなければ、その領域については、
別の生成AIに置き換えられてしまいます。
そのため、主要な生成AIプラットフォームは、常に機能拡張を続けざるを得ない立場にあります。



例えば、以前はAIで写真を生成する、あるいはAIでイラストを作成する
といった用途においても、細かく見ると多くの専用サービスが存在していました。
しかし現在、どのツールが強いかと言えば、Geminiの「Nano Banana Pro」でしょう。



このように、生成AIの世界では、より性能の高い「上位互換」が常に
登場し、機能やツールは淘汰と統合を繰り返しています。
こうした状況を踏まえると、細かな生成AIサービスをすべて把握して
おく必要は、必ずしもないと考えています。



なるほど、生成AIの世界では上位互換や機能統合が常に起こっている
ため、すべてのサービスを追いかける必要はないということですね。



そのとおりです。そのため、自分自身の中で「押さえるべき生成AI」をあらかじめ決めておくことが重要です。
例えば、私自身が主に活用しているのは、ChatGPT、Gemini、Claudeに加えて、Jensparkの4つです。実務上は、この4つを使いこなせていれば、ほとんどの業務は十分に対応できます。



仮に新しい生成AIサービスが登場したとしても、これら主要なツールが
上位互換となる機能や追加機能を次々と実装していくため、結果的に
この4つを継続的に触っていれば十分だと考えています。



主要な生成AIをあらかじめ絞っておくことが重要なのですね。



はい。生成AIは、ツールごとに最適なプロンプトの書き方や使い方の
癖が異なります。
そのため、多くの生成AIを同時に試しすぎると、それぞれに合わせた
使い分けが必要になり、結果として「どれも触ってはいるが、十分に
使いこなせていない」という状態に陥りがちになります。



特に、生成AIの活用にまだ自信がない企業であれば、例えばGeminiだけに限定するなど、まずは1つのツールを徹底的に使い込んでみることが
おすすめです。



ありがとうございます。
中小企業がAIを活用する際の注意点はありますでしょうか?



そうですね。注意点は「生成AIを使っただけで、仕事ができたつもりにならないこと」です。



少し前の話になりますが、実際に私のもとへ営業に来たフリーランスの方がいました。
その方は生成AIを使って作成したことが明らかに分かる提案書を提出
してきたのですが、ほぼプロンプトを入れただけの、いわゆる“生成AI
そのまま”の内容でした。



しかも、その提案書を受け取る1週間前には、約2時間にわたってヒアリングの時間を設けていました。つまり、こちらは2時間の時間を使って、背景や考えを丁寧に伝えているわけです。
それにもかかわらず、その内容が十分に反映されておらず、明らかにChatGPTやGeminiなどで生成したと分かる文章や構成が、そのまま
残っている提案書だったのです。



このような提案を受けたとき、「生成AIを使ったこと自体」が問題なの
ではありません。人から人に向けて、
「御社にはこうした課題があります」
「もしご一緒するのであれば、当社はこのような形で価値提供ができ
ます」
と伝えるために、生成AIを活用すること自体は、むしろ合理的だと思います。



生成AIはあくまでツールであって、使い方次第で成果の質が大きく
変わるということですね。できあがったものがヒアリングの内容が
十分に反映されていない提案書だとしたら、ヒアリングの時間は無駄になりますもんね。



本当にそのとおりです。
問題なのはヒアリングや文脈の理解や、人としての解釈や整理といった
本来人が担うべき部分を省略し、生成AIのアウトプットをそのまま成果物として提出してしまうことです。



やはり、相手の担当者の熱量が感じられないと、「これは生成AIで作ったものだな」と伝わってしまいます。
そうなると、「それならもっと熱量を持って向き合ってくれる会社と仕事をしたい」と思われるのは当たり前だと思います。



特に、営業のような仕事では、人と人との感情や信頼関係が前提としてあります。
実際、世の中には同じようなサービスや商品が数多く存在しており、
顧客は複数社から相見積もりを取ったり、提案内容を比較したり
します。その中で、「AIをそのまま使って出してきた」と分かる提案書と、そうでない提案書が並んだ場合、後者を選びたくなるのは、人情
としてあると思います。



これは中小企業に限った話ではありません。実は大手企業でも同じです。提案書を見たときに、
「これは自分たちでも作れそうだ」
「こちらの事業を本気で理解しようとしていない」
と感じられた瞬間、表立った指摘はされなくても、静かに距離を取られていきます。いわゆる“サイレントに離れていく”状態になります。



生成AIを使えば、それなりに整った見た目や、それっぽい内容の資料を作ることは可能です。
しかし、それは仕事ではありません。「とりあえず形にしました」という作業に過ぎず、それ以上の価値は生まれていません。
この点を履き違えないようにしていただきたいと思います。



この考え方は、提案書に限った話ではありません。社内マニュアルの
作成をはじめ、あらゆる業務に共通します。「生成AIで出したからこれでいいだろう」という姿勢は、いわばやっつけ仕事であり、仕事と呼べるものではないため、やめた方がいいと思います。



ありがとうございます。では最後に、この記事を見てくださっている方に一言、お願いいたします。



そうですね。結論として、正直なところ、中小企業は生成AIを取り入れなければ、今後は厳しくなっていくと考えています。



人材は無限に存在するわけではありませんし、仮に採用できたとしても、転職が当たり前の時代になっています。
かつては「一つの会社に長く勤め上げる」という価値観が一般的だった時代もありましたが、現在ではその意識は大きく変わっています。
これはZ世代に限らず、30代を中心とした層でも同様で、転職はごく自然な選択肢になっています。



そのような状況下で「採用できたから安心」という考え方はあまりにも楽観的だと思います。



採用後に人材が離れる可能性も前提に置いたうえで、業務効率を最大限に高め、仮に人員が減ったとしても会社の業務は回る体制を構築しておく必要があります。



そのためには、生成AIを組織全体にしっかりと浸透させていかないと、中長期的に勝てない組織になってしまいます。
そのため、今回お話した内容に気を付けて、ぜひ生成AIを取り入れて
もらえたらと思います。



ありがとうございます。











