Webhit 編集部今回は「そのユーザーインタビュー、無駄にしていませんか?」という
テーマについてお話しいただきたいと思います。
よろしくお願いします。



お願いします。



ユーザーインタビューは多くの企業が実施している施策だと思いますが、実際には成果につながるケースと、つながらないケースがあると思い
ます。ユーザーインタビューを行っても成果につながらないのは、どの
ような場合に起こるのでしょうか……?



ユーザーインタビューを行っても成果につながらない原因は、細かく
挙げればさまざまですが、多くの場合、「なんとなくインタビューして
いる」からであることがほとんどです。



「なんとなく」というのはどういうことでしょうか……?



はい。ユーザーインタビューというのは、
「実際のお客様が何を考えているのか」
「どんな判断基準を持っているのか」
「どのような価値観や考え方をしているのか」
を知るために行うものです。



言い換えると、ユーザーインタビューは仮説を検証するための手段と
言えます。



なるほど。



他にもパターンを挙げるとすれば、
「自分たちがまだ気づいていないことに気づきたいとき」
「新しい視点・切り口を得たいとき」
などが考えられます。



ありがとうございます。
そうした状況を踏まえたうえで、実際にユーザーインタビューを行う
場合、そのインタビュー内容を無駄にせず、営業やマーケティングに
しっかり活かしていくためには、どのような点を意識すればよいの
でしょうか……?



そうですね。まず大前提として、何のためにユーザーインタビューを
するのか「目的を明確にする」ことが、最初にやるべきことです。



目的を明確にするということが、前提となるポイントなのですね。



はい。目的が定まっていないまま、「インタビューすれば何かしらお客さんが話してくれるだろう」と思ってインタビューに臨んでも、ほとんどの場合、期待するような話は出てきません。
常に自社のことばかり考えてくれているお客さんというのは、ほとんど
いないため、当然の話です。



たとえ、
「ここはもう少しこうしてほしいな」
「実はここ、ちょっと不満なんだよな」
と思っていたとしても、それをお客さん自身がきれいに言語化できているケースは、実はあまり多くないと言えます。



だからこそ、インタビューをする側は、以下のように「何のために聞くのか」を考えることが必要です。
・営業の成約率を高めたい
・ホームページを改善したい
・YouTubeの企画や内容を改善したい
このような目的により、インタビュー当日に聞くべきことはまったく
変わります。



この「目的」が決まっていないと、「とりあえず話を聞く」「なんとなくインタビューする」という状態になります。



「なんとなくインタビューする」状態が無駄ということになります
もんね。



はい。そうすると、以下のようなことが起きがちになります。
・本当は聞くべきだったことを聞けていない
・聞きたいことがぼやけたまま終わる
・結果として、改善につながる情報が何も残らない
そのため、まずインタビューの目的を決めることが一番先にやるべき
ことと言えます。



ありがとうございます。少し話の前後はするかもしれませんが、
「なんとなく」ユーザーインタビューをしてしまうケースは、実は
結構多いのではないかと思います。
ただ、どういう状況のときにそうなりやすいのかが、いまひとつ
イメージしづらい部分もあります。



そこでお聞きしたいのですが、ユーザーインタビューが成果につながらず、「なんとなくやって終わってしまう」状態になりやすいのは、どんなタイミングや背景があるときなのでしょうか……?
また、そうした失敗が起きてしまう根本的な理由は、どこにあると
思われますか?



そうですね。ユーザーインタビューが成果につながらない原因は、
多くの場合大きく2パターンに分けられます。
まず1つ目が、「ユーザーインタビューそのものを軽視しているケース」
です。



「ユーザーインタビューそのものを軽視しているケース」ですか……?



そうです。上司などから「お客様に一度インタビューしてきてほしい」
とオーダーされた担当者が対応するケースでは比較的陥りやすい傾向があります。



つまり、やらされ仕事になってしまっている状態です。
そのため、インタビューの重要性を十分に理解できておらず、
「まずは一回お客様に時間をもらって話を聞いてくること」自体が
目的になってしまいます。



たしかに、やらされ仕事だとそれが目的になりがちですよね。



はい。その結果として、
「とりあえず時間をもらい、お客様がどう思っているのかを聞けばいい」「自社に対する印象を聞けばいい」
という認識のまま、深く考えずに進めてしまうケースが生まれます。
これは、いわゆるユーザーインタビューを軽視している状態です。



2つ目のパターンとして挙げられるのが、一定のコミュニケーション能力に自信を持っている人がインタビューを担当するケースです。



このタイプの人は、お客様や社内メンバーとの対話を通じて円滑な関係を築き、プロジェクトをスムーズに進めたり、トラブルを適切に解決したりする経験を多く持っています。
そのため、周囲からの評価も高く、自身でも「コミュニケーションには長けている」という認識を持っていることが少なくありません。



一見すると、ユーザーインタビューに非常に適した人材のように思えます。しかし実際には、コミュニケーション能力が高いがゆえに、その場の流れで臨機応変に対応しすぎてしまうという落とし穴があります。



一定のコミュニケーション能力に自信を持っている人だとよさそうな
感じがしましたが、そんな落とし穴があったのですね。



そうなんです。
その場の雰囲気を盛り上げながら、お客様からさまざまな話を引き出すこと自体は可能です。
「特定の一人や一社から、できる限り深く話を聞く」という目的で
あれば、その進め方でも問題はないでしょう。



しかし、複数の個人や企業にインタビューを行い、自社のターゲットがどのような価値観や考え方を持っているのかを把握したい場合は話が
変わってきます。
一定数の企業や担当者、個人に話を聞き、その中から共通項や傾向を
見出すことが目的となるからです。



さらに、その結果をホームページの改善やマーケティング施策に活かすといった、ビジネスでの活用を前提としたユーザーインタビューにおいては、質問内容がインタビューごとに大きく異なってしまうことは大きな問題になります。



それはたしかに、問題ですね。



ある人には聞いている質問が、別の人には聞けていない、といった状態が生まれてしまうと、分析に支障が出ます。
また、あるインタビュー対象者については考え方や価値観を深く理解できているのに、別の対象者についてはそれが十分に把握できていない、という状況も非常に問題です。



こうしたケースでは、インタビュアー本人のコミュニケーション能力が低いわけではありません。むしろ、その能力自体は高く、評価される
べきものです。



重要なのは、「どのようなことを聞くのか」を事前に明確に定めているかどうかです。
どのような回答をしてもらうのかを、あらかじめすべて設計しておかなければいけません。
それを行わない場合、このタイプの人材が持つ高いコミュニケーション能力は最大限に発揮されないどころか、状況によってはかえってマイナスに作用してしまうことがあります。



ありがとうございます。 よく分かりました。
では、そういった点に気をつけることを前提としたうえでお伺いしたいんですが、そもそもインタビューの相手はどうやって見つけるのがいい
のでしょうか……?



インタビュー相手を選定する際の考え方や基準があれば、ぜひ教えていただきたいです。



そうですね、ユーザーインタビューの対象は、多くの場合「既存の
お客様」もしくは「見込み顧客」のいずれかになります。



3つ目のパターンを挙げるとすれば、まだ見込み顧客にもなっていない
ものの、マーケットトレンドを把握する目的で、「自社のことをまったく知らない層」にあえて話を聞くケースも存在します。



まず最も取り組みやすいのが、既存のお客様へのインタビューです。
既存顧客の場合、連絡先はすでに把握しているため、基本的にはこちらから連絡を取るだけで成立します。



ただし、ここでも先ほど触れた「インタビューの目的設定」が重要になります。
既存のお客様であっても、契約に至った経路はそれぞれ異なります。
たとえば、ホームページの改善を目的としたユーザーインタビューであれば、ホームページを経由して問い合わせをした、あるいは閲覧している
顧客に絞る必要があります。



ホームページを見ていない顧客に対して質問をしても、有効な示唆は
得られにくいためです。
そのため、「ホームページ経由で問い合わせをした人」「ホームページを見たうえで検討した人」といった条件で対象を選定するなど、目的に
応じてインタビュー対象を適切に絞り込むことが重要です。



既存のお客様へのインタビューにおいては、目的に応じてインタビュー対象を適切に絞り込むことが大切なのですね。



はい。次に、見込み顧客の場合です。見込み顧客の定義にはさまざまな
考え方がありますが、ここでは一度でも自社と何らかの接点を持った人と仮定します。
具体的には、打ち合わせや問い合わせをしたことがある、ホワイト
ペーパーや資料をダウンロードしたことがある、公式LINEに登録して
いる、といったケースで定義しましょう。



はい、分かりました。



こうした見込み顧客に対してユーザーインタビューを依頼する場合、手段としてはメールマガジンや公式LINEでの配信が一般的です。
また、体制が整っているのであれば、インサイドセールスなどの電話対応チームから直接依頼する方法も考えられます。
ただし、基本的にはメルマガや公式LINEといった既存の接点を活用する方が、現実的かつ取り組みやすいでしょう。



さらに、SNSでつながっている相手がいる場合には、ダイレクトメッセージ(DM)機能を活用するという選択肢もあります。
ここでも重要になるのが、インタビューの目的です。
「どの目的のために」
「どのような人に」
ユーザーインタビューを行うのかを、あらかじめ明確にしておく必要が
あります。



見込み顧客の場合、既存顧客と比べて自社が把握している情報は限られています。ただし、少なくとも一度は何らかのアクションを起こし、自社と接点を持っているという点は共通しています。



たとえば、ホワイトペーパーやお役立ち資料をダウンロードした人で
あれば、その資料やコンテンツ自体の改善を目的としたインタビューには適しています。
一方で、自社のYouTubeコンテンツを改善したいという目的の場合、
資料ダウンロード者が必ずしも適切な対象になるとは限りません。



なるほど、資料ダウンロード者は資料改善には向いているけれど、YouTube改善の対象としては必ずしも最適とは限らない、というのは
まさにそうだなと思いました。



はい。そのため、見込み顧客にインタビューを行う場合は、できるだけ個別具体的な目的を設定したうえで実施することが重要です。
そして、その目的に対応した接点を実際に持っている見込み顧客に依頼
することで、より具体的で実践的な示唆を得ることができます。



このようにして得られた情報は、一時的な意見にとどまらず、今後の施策に活かせる有効な資産となります。



インタビュー自体が単発の施策ではなく、ちゃんと次のマーケティングや営業につながる“資産”になるかどうかは、設計段階でほぼ決まって
いる、ということがよく分かりました。



ありがとうございます。最後に3つ目のパターンとして挙げられるのが、マーケットトレンドを把握することを目的に、自社と一切接点のない
ものの、ターゲットに該当する人たちへインタビューを行うケースです。この方法は、3つの中でも特に対象者を見つける難易度が最も高いと
言えるでしょう。



ただし、例えばモニター調査やグループインタビューといった手法を活用する方法もあります。
調査案件を取りまとめているポータルサイトに案件として募集を出し、
そこに応募してきた人たちを対象にインタビューを行うことで、自社と
接点のないターゲット層にインタビューを行うことも可能です。



他にも方法はいくつかありますが、マーケットトレンドを把握する目的で、これまで自社と接点のなかった人に話を聞く場合、この3つ目の
パターンが用いられることが多いでしょう。
特にこの手法は、BtoC商材で活用されるケースが多いと言えます。



なぜかと言うと、ユーザーインタビュー自体は、一般的にはBtoBマーケティングの文脈で語られることが多い施策です。
しかし、BtoCの場合、既存顧客や見込み顧客から体系的に情報を収集
することが難しいケースも少なくありません。
既存顧客をどのように呼び出すのか、そもそも接点をどう作るのかと
いった点が課題になりやすいためです。



たしかに、難しいですよね。



はい。飲食店のような業態では、いわゆる「契約」という関係性が存在しません。
例えばパーソナルジムのように、会員契約を結ぶビジネスであれば顧客
情報を把握しやすく、インタビューの依頼も比較的容易です。
しかし、飲食店の場合はそれが難しくなります。そのため、この3つ目のパターンを選択するケースが多くなります。



こうした場合、ターゲット属性としては、いわゆる覆面調査員やモニター調査のような形で参加する人たちを対象にすることが一般的です。



覆面調査やモニターのような形で、意図的にインタビュー対象を設計
する必要が出てくる、という理解で合っていますか……?



そうですね。つまり、ミステリーショッパーのような人材を自社で雇用したり、アルバイトとして採用したり、あるいは単発の業務として依頼
したりする方法があります。
手段はいくつも考えられますが、そうした人たちに実際にターゲットと
なる行動をしてもらい、どのように感じたのかを詳細なレポートとして
提出してもらう、という形です。



この方法では、先ほど述べた既存顧客や見込み顧客へのインタビューのように、必ずしも一対一の対話形式になるとは限りません。
モニターとしてサービスを体験してもらい、その感想を集める、あるいはグループインタビューを実施するなど、覆面調査員という手法を含めて、形を変えながらマーケットトレンドを把握しにいくというのもあると
思います。



また、直接的なインタビューが難しいという前提であれば、いわゆる
マーケティングリサーチを活用する方法もあります。
アンケートモニターを利用し、属性を絞ったうえで印象やイメージを
尋ねる調査を実施し、数百人、数千人規模で回答を集めることで、
統計的なデータを得るという選択肢も有効です。



そのため、この3つ目のパターンについては、実施方法の選択肢が比較的多いと言えます。
一対一の打ち合わせ形式に必ずしもこだわる必要はなく、目的に応じて柔軟に手法を選ぶことが可能です。状況に合わせて適切な方法を採用していく、ということになるでしょう。



ありがとうございます。そう考えると、「直接話せないからインタビューはできない」と諦めるのではなく、どういう形ならマーケットの声を
拾えるかを設計すること自体が、マーケティングの仕事だ、という話に
もつながってきそうです。



では、インタビューを実施する際のコツは何かありますか……?



そうですね。インタビューを実施する際のコツはいくつかありますが、
細かなテクニックを挙げ始めるときりがありません。
一言でまとめると、「相手の回答に安易に満足しないこと」がコツです。



どういうことかというと、例えば非常にシンプルな質問として
「今朝は何を食べましたか」と聞かれた場合、何て答えますか?



「パンを食べました」などでしょうか?



そうですね。この質問は、普通に聞けば質問者としては十分に満足して
しまうものです。
相手に「何を食べたのか」という What を尋ね、その答えが返ってきた時点で、目的は達成されたように感じてしまうからです。
実際、多くの人はそこで満足してしまいます。



しかし、そこで満足してはいけない、というのがインタビューにおける重要なポイントです。
例えば、相手が「パンを食べました」と答えたとします。
その場合、次に聞くべきなのは「どんなパンですか?」という質問です。



焼きそばパンなのか、サンドイッチなのか、あるいは米粉パンなのか。ひと口に「パン」と言ってもいろんなパターンがあると思います。



たしかにそうですね。



はい。仮に「焼きそばパンです」と答えが返ってきたとします。
しかし、ここでも満足してはいけません。
確かに最初の質問である「何を食べたのか」という点については、
これで明確になりました。朝食が焼きそばパンだった、という事実は
把握できています。



ただし、ここで一歩踏み込む必要があります。
それが「なぜ焼きそばパンを選んだのか」という問いです。
「なぜ焼きそばパンだったのですか?」という質問は、単なる事実確認ではありません。
相手の価値基準や考え方、性格、さらには日常の習慣までを知ることができる重要な質問です。



例えば、この問いに対して「朝からハイカロリーなものを食べたほうが
やる気が出るからです」という回答が返ってきたとします。
この時点で、その人は「朝は高カロリーな食事を取ることでパフォーマンスが上がる」と考えているタイプだ、ということが読み取れます。



たしかに。そういったことまで読み取れますね。



はい。場合によっては、「では、朝から焼き肉を食べに行くことも
ありますか」といった具合に、さらに質問を展開することも可能です。



このように質問を重ねていくことで、「今日の朝は何を食べましたか」「パンを食べました」という最初のやり取りだけでは得られなかった
情報が見えてきます。明らかに、後者のように深掘りしていったほうが、その人がどのような人物なのか、いわゆる“人となり”が浮かび上がってくるはずです。



これはBtoBでもBtoCでも同様です。
ビジネスを行うのも、商品やサービスを消費するのも、結局は人間です。そのため、その人がどのような性格で、どのような価値基準を持って
いるのかを理解することが重要になります。



例えば、「朝はハイカロリーなものを食べる」と聞けたとしても、そこで終わりではありません。
「なぜ朝からハイカロリーなものを選ぶのですか」とさらに問いかけることで、背景が見えてきます。
その結果、「実は朝5時から起きていて、その後ジムに行くのでエネルギーが必要なんです」といったような、生活習慣や行動特性まで把握できるケースもあるでしょう。



インタビューで本当に重要なのは、質問項目そのものよりも、その場でどう深掘りできるか、つまり聞き手の姿勢や思考力だと感じました。



そのとおりです。
このような話であれば、筋トレが趣味であることはもちろん理解でき
ますが、それに加えて、生活のルーティンをきちんと組み立て、比較的
規則正しい生活を送るタイプの人だということも見えてきます。
そうであれば、仕事の進め方も同様に、計画的で規則性を重んじる
可能性が高い、といった推測も成り立ちます。



このように、1つひとつ相手の考え方や価値観を丁寧に紐解いていかなければ、ユーザーインタビューの本質的な成果は得られません。
つまり、「なぜこの人は自社を選んでくれたのか」「なぜ一度でも自社の
コンテンツをダウンロードしたり、問い合わせをしようと思ったのか」という問いに対する答えにたどり着けないのです。



「なんとなく良さそうだと思ったから」という表面的な回答でこちらが満足してしまうのであれば、そもそもユーザーインタビューを実施する
意味はありません。



表面的な答えで満足してしまうと、本来の目的である「なぜその行動を
取ったのか」という理解にはたどり着けないということがよく分かり
ました。



はい。ユーザーインタビューの目的は、もともと顕在化した課題を持っていない状態から、
「何か問題がありそうだ」
「このままでは良くないかもしれない」
と違和感を覚え、課題を認知し、解決策を探し始め、最終的に成約に
至るまでの一連のプロセスを、すべて明らかにしていくことにあります。



そのためには、表面的なやり取りにとどまらず、相手の思考や行動の
変化に深く入り込んでいく姿勢が不可欠です。
冒頭で述べたとおり、質問者が相手の最初の回答に安易に満足してしまっては、本質的な理解にはたどり着けません。



相手の回答を起点に、さらに踏み込み、背景や理由を掘り下げていく。その姿勢こそが、ユーザーインタビューを実施するうえで最も重要な
ポイントだと考えています。



ありがとうございます。では、インタビューを実施する際に注意している
ことは何かありますか……?



そうですね、これは非常に明確で、重要なポイントです。
誘導的な質問をしないことです。
ユーザーインタビューは、相手にとって基本的に負担の大きい行為です。 就業時間中に時間を取られることも多く、ユーザーインタビューは相手にとって負担になりがちになります。



そのため、「面倒だ」と感じた瞬間に、できるだけ頭を使わずに済む簡単な回答へと逃げてしまう傾向があります。
人間の思考は決して万能ではないため、手間がかかる状況に直面すると、自然と楽な選択肢を選ぼうとするのはごく普通の心理です。



例えば、先ほどの例で「焼きそばパンを選びました」という回答があった場合、本来であれば「なぜそれを選んだのですか?」と理由を掘り
下げるべきです。
しかし、ここで「焼きそばパンを選んだということは、味の濃いパンが好きなんですよね」といった聞き方をしてしまうのです。



なるほど。イメージできました。



はい。そうすると相手は、「そうです。味の濃いものが好きです」と
答えることになりますよね。
一見すると会話は成立していますが、ここには大きな問題があります。



まず何が問題かというと、この段階では「なぜ焼きそばパンを選んだのか」という本質的な部分がまったく分からない点です。
焼きそばパンを選んだ背景にある価値観や考え方、習慣、性格といったものが見えてきません。



本来知るべきなのは、その人がどのような選定基準を持ち、どういう
思考をする人なのか、あるいは企業であればどのような判断軸を持って
いるのか、という点です。
それにもかかわらず、それが分からないまま話が進んでしまうことが
1つ目の問題です。



もう1つの問題は、質問が誘導的であるがゆえに、回答が「YES」で
返ってきやすいことです。
「焼きそばパンを選んだということは、味の濃いものが好きなんですよね」と聞けば、「そうなんです。味の濃いものが好きなんです」と返ってくる可能性は高いでしょう。
そしてこの「YES」が返ってきた瞬間、質問者は満足してしまうのです。



たしかに、満足してしまいそうな気がします……。



仮にこの質問に対する回答が「NO」だった場合も問題は残ります。
例えば、「別に味が濃いものが好きというわけではないですね。
なんとなく焼きそばパンを選んだだけです」といった返答です。



この場合、本来掘り下げるべきだった「なぜ焼きそばパンを選んだのか」という行動の背景ではなく、「味の濃さ」という論点そのものが議論の
主軸になってしまいます。



なるほど。



そうなると、「味が濃いほうがいい・薄いほうがいいというわけでは
なく、薄くても食べます。例えば卵サンドでも別にいい」といった具合に、話題がどんどん別の方向へ飛んでしまいます。



こうなると、議論は横に広がることはあっても、下に深まることがありません。
結果として、質問者がどこかで納得してしまって終わるか、平行線のまま深掘りされない状態で話題だけが横移動していくか、のどちらかになるため注意が必要です。



ありがとうございます。それは注意しないといけないポイントですね。
では、ユーザーインタビューは、どのように分析するとよいのでしょうか……?



まず分かりやすいポイントとして、これは1人だけでなく、3人、5人、
10人、あるいは3社、5社、10社といったように、一定の数を対象に
実施することが前提になります。



例えば「ホームページを改善したい」という目的があるとします。
その際の質問の一つとして、「当社のホームページをご覧になって、疑問に感じた点や、分かりにくいと感じた箇所、もう少し知りたいと思った点があれば教えてください」といった問いを投げかけるとします。



仮に5社、10社すべてに対して、同じ前提条件で適切にこの質問ができていた場合、その回答を見ていくと、いくつかの共通項が浮かび上がってくることがあります。



その共通項というのは、例えば既存顧客へのインタビューを行っている場合、契約前にホームページを閲覧した際に、
「多くの人が気になっていた点」
「知りたいと思ったものの分からなかった点」
として表出してくるものです。



こうした項目については、明確に改善対象として位置づけ、具体的な
改善アクションにつなげていくことが望ましいと言えます。
その意味で、まず分析の第一歩として行うべきなのが、この「共通項を
見つける」という作業です。



また、もう1つ重要なのが、自分たち自身がまだ認知できていない
「良さ」や「悪さ」が、その中に含まれていないかを確認すること
です。
これは、社内の視点だけでは気づきにくいポイントでもあります。



社内の視点だけでは気づきにくいポイントが知れるのは大きな成果
ですね。



はい。例えば分かりやすい例として、業種をパーソナルジムだと仮定して考えてみましょう。
自分たちの売りや強みとして、以下のようなことを挙げているケースが多いと思います。
・最新のトレーニング機材を導入している
・国際資格を保有したトレーナーを配置している
・24時間365日予約が取りやすい予約システムを採用している
・駅から近い立地である



こうしたなかで、実際に、
「現在通ってくださっているお客様は、何を評価して利用を続けているのか」
「なぜ契約を継続・更新してくれているのか」
といった点を、改めてユーザーインタビューで聞いてみることにします。



はい。



そうすると、もちろん
「機材が新しい」
「駅から近い」
といった点を評価してくれる方もいますが、その一方で、例えば
「トレーナーの笑顔がとても明るく、来るだけで気分が前向きになる」「パーソナルジムはガチガチで怖いイメージがあったが、運動が苦手な自分にも優しく教えてくれるので、前向きに取り組めるようになった」
といった意見が出てくることもあります。



こうした声は、決して見逃してはいけません。
「1人の意見だから」と流してしまうのではなく、自分たちがこれまで
認知していなかった価値であれば、認知していなかった事実として特筆
事項として整理しておくべきです。



なぜなら、そのように感じているお客様が一定数存在するのであれば、その訴求ポイントは、他の潜在顧客にも響く可能性があるからです。



「1人の意見」も非常に大切な意見であるということが分かりました。



はい。例えば、すでに広告を出稿しているのであれば、広告バナーのコピーやキャッチコピーに、そうした要素を取り入れてみるという活用方法が考えられます。
このように、いわば「外れ値」とも言える意見や、自分たちがこれまで認識していなかった事実、新しい角度からの示唆を抽出できる点は、
ユーザーインタビューの大きな価値です。



分析手法そのものは、より専門的で細かなものも数多く存在しますが、まず重要なのは、
「多くの人が不足していると感じている点」
「もっと改善してほしいと感じている点」
を正確に把握し、実際の改善につなげることです。
あわせて、自分たちが強みだと認識しているポイント以外にも、「良い」と評価されている要素が存在しないかを丁寧に探る必要があります。



そうした発見を、自社の営業活動やマーケティング施策、さらには
その他の施策にも反映・活用していくことで、より効果的な改善に
つながるのではないかと思います。



ありがとうございます。では、最後に、この記事を読んでくださっている読者の方に一言お願いします。



ユーザーインタビューは、実施にあたって多くの工数がかかり、設計
にも時間を要するため、非常に手間のかかる施策です。
しかし、その分得られる価値は大きく、実際のお客様がどのような価値基準や考え方、性格、趣味嗜好を持っているのか、そしてなぜ自社を
選んでいるのかを具体的に把握することができます。



また、自社のどの点に疑問や不安、懸念を感じているのか、逆にどの点を評価しているのかといった「事実ベースの情報」を取得できる点も
大きな特徴です。
これは、営業の現場で得られる感覚的な印象や、商談中の表面的な発言、あるいはWebマーケティングにおける広告管理画面上の数値(クリック率やCVRなど)だけでは把握しきれなかった領域でもあります。



ユーザーインタビューを通じて、
「実際にはどう感じているのか」
「どのように考えているのか」
を直接聞くことができる点は、非常に貴重な機会だと言えます。
実施には労力がかかりますが、今回お伝えしたコツや注意点、進め方を踏まえて取り組めば、有意義なユーザーインタビューを実施できるはず
です。



ぜひ、一度取り組んでみていただければと思います。



ありがとうございます。












